導入事例|日本ロレアル|未来予測レポートシリーズ

 日本ロレアルは世界最大の化粧品会社、ロレアルグループ(本社フランス)の日本法人である。グループの売上高は2013年の実績で円換算3兆2000億円余だった。日本の化粧品市場は世界第3位、スキンケア市場では世界第2位の規模である。日本はロレアルグループにとって、需要が急増するアジア市場への展開もにらんだ重要な拠点と位置付けられている。

 ロレアルグループが日本でビジネスを始めたのは1963年(昭和38年)、東海道新幹線が開通する1年前だった。歴史は50年を超える。「ランコム」 「ヘレナ ルビンスタイン」「シュウ ウエムラ」「イヴ・サンローラン・ボーテ」「メイベリン」......。全国各地の百貨店やドラッグストアなどでこれらのブランドコーナーを目にし、商品を買い求めた人たちは多いだろう。日本ロレアルはこれら著名ブランド商品を幅広い流通ルートを通じ提供している。

 「ロレアルはビューティー・カンパニー(美を追求する会社=編集部注)」。橋本樹一郎氏はこう自認する。「ビューティー・フォー・オール(すべての人に貢献する美=同)の実現を目指し、そのアンバサダー(大使)役を果たしたい」とも語る。大使の仕事、機能は多岐にわたる。駐在国の情報を広範に収集し、分析する業務はその一つだ。駐在国の政治・経済動向などを把握し、将来を的確に予測するのも大切な仕事だ。橋本氏は化粧品市場の将来予測に役立てるために、「未来予測レポートシリーズ」の「メガトレンド2014-2023」「消費トレンド2014-2018」などを導入した。「日々の意思決定ではなく、5年先の会社の方向性を提示するのに役立てたい」と話す。

「聡明」「知性」は「ビューティー(美)」に通じる

 日本の民間企業に、「インテリジェンス(intelligence)」の名を付した部署があったとは...。日本ロレアルを訪問して初めて知った。日本では、米国のCIA(Central Intelligence Agency=中央情報局)のイメージが強いせいか、インテリジェンスと聞くと、「諜報」を連想しがちだ。しかし、インテリジェンスはたくさんの意味を持つ言葉だ。手許の英和辞典を引くと、情報、知識のほかに「知能」「聡明」「理解力」「知性」などの意味が載っていた。市場の将来予測には、情報、知識だけでは不十分。「聡明」はもとより、「知能」と「知性」の総動員が求められる。「聡明」「知性」は「ビューティー(美)」にも通じる。

 「『未来予測レポートシリーズ』には、こちらが求める直截的な情報、分析が満ちているわけではないが、将来予測に役立つ周辺情報がたくさん載っている。未来予測の方法論を知り、それを実際の業務に援用できたのも成果の一つだった」。橋本氏が語った「未来予測レポートシリーズ」の効用の一端である。「イシューツリー(潮流の変化を見逃さないための思考経路、アプローチ方法などを図解で表示=編集部注)を応用して自らの業界の将来像を描き、課題の抽出などに落とし込むことができた。問題解決のための一つのひな形として役立った。本当に欲しい情報に辿りつくための参考にもなった」。「未来予測レポートシリーズ」の活用体験、効用を具体的に話す。

 橋本氏は「未来予測レポートシリーズ」の筆者と語り合うセミナーにも参加した。「フェイス・ツー・フェイス(顔と顔を合わせる)で、生きた情報を得られたのは良かった。著者のエッセンスを掴み取れた」と振り返る。

 橋本氏は山岳地図に例えて、情報の活用術を語った。「山岳地図には登山ルートが実線と点線で示されている。定型の実線ルートは登山道が整備され、歩行に要する基準時間も載っている。安心・安全なルートだ。一方、点線ルートは途中で登山道が崩れていることもある」。「点線ルートには危険が潜むかもしれないが、自分で頂上に至るルートを新たに探し出す楽しみがある。誰も知らなかった眺望の優れた場所を発見できるチャンスもある。情報も同じではないだろうか」。一般に公開された情報と、独自に入手した情報の使い分けは"インテリジェンス分析官"の基本業務の一つである。

未来予測レポートシリーズ」は外の世界と触れ合う窓口

 橋本氏は「時代の大きな変化の兆しは内に閉じ籠っていては知ることができない。外の世界と触れ合わなければ変化の兆しに気付かない」という。化粧品業界の動向だけを見ていては1年先の業界の姿は思い浮かぶが、5年先の大きな姿は描けないそうだ。「未来予測レポートシリーズ」は外の世界と触れ合う窓口の役割も果たしているようだ。時代を先読みするためのツールの一つとして、「未来予測レポートシリーズ」を活用している。

 「美の大使」を目指す橋本氏は貪欲に役立つ情報を求める。「未来予測レポートシリーズ」にも厳しい注文を付けるのを忘れなかった。「産業界の上流・川上部門に当たる自動車などの製造業、エネルギー業界などには詳しいが、川下部門の情報がどうもねぇ。消費者により近い分野の情報が希薄。社会インフラの整備の予測情報なども欲しい」「数字は独り歩きしがちだが、予測であるならもっと大胆な予想数値を明示しても良いのではないか」などと要望する。

ブランドの信頼は築くのに長い時間、壊れるのは一日

 ロレアルグループは世界最大のブランドコンサルティング会社、米国のインターブランドが毎年発表する「グローバルブランド価値評価ランキング」ベスト100の常連だ。今年もグッチ、エルメスなどと肩を並べ40位台に顔を出した。「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」や「Citizen Day(環境保護ボランティア活動)」などがよく知られる。スマートフォンを改良した独自の肌画像分析器を導入したり、化粧品工場のCO2排出実質ゼロを実現したりもした。ブランド価値の向上に不断なく取り組んでいることが窺える。

 「ブランドの信頼を築くには長い時間がかかるが、壊れるのは一日」。橋本氏はこう述懐する。湖面を優雅に泳ぐ白鳥は水面下で脚を激しく掻いている。日本ロレアル「ビジネスインテリジェンス部」の情報収集と分析、「未来予測レポートシリーズ」の活用に拍車がかかりそうだ。


(日経MM情報活用塾メールマガジン11月号 2014年11月26日 更新)

企業プロフィール

企業名日本ロレアル株式会社
事業内容化粧品の輸入・製造・販売およびマーケティング
代表者クラウス・ファスベンダー
本社所在地東京都新宿区西新宿3-7-1 新宿パークタワー
資本金187億5,000万円
従業員数2,300人
Webサイトhttp://www.nihon-loreal.co.jp
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