NIKKEI Media Marketing

導入事例

導入事例 Case Study
清水拓真氏

『食卓に満足と笑顔を届ける』ために
POSデータで実現する市場分析

株式会社浜乙女

商品開発部 マーケティング担当 係長 清水 拓真 氏

導入しているサービス
  • 日経POS情報・POS VISION
  • 日経POS情報 POS EYES

 「でえたらぼっち」のCMでおなじみの浜乙女は、1946年服部商店の名で小さな乾物屋から出発し、1990年株式会社浜乙女に社名変更。乾物を中心とし着実にラインナップを拡大、総合食品メーカーへと成長を遂げた。2007年衣料事業部、2009年ストアー事業部の新設など多角的な事業展開にも着手(ストアー事業部は、2013年に卸売事業部と統合して流通事業部新設)。2013年には海外事業部を新設し、中国を中心に事業を展開する。

消費者ニーズに対応すべく、マーケティングを強化

 浜乙女は、全社一丸となった食品づくりの社風が根付く。商品開発や品質改善には、開発部門だけでなく、全社員からアイデアを募る。創業当時から受け継がれる風通しの良い社内環境が、浜乙女ブランドの多様な商品群を支える。

 しかし、アイデアを商品化するには、裏付けが必要となる。時代とともに市場動向が大きく変わるなか、「良いものを作れば売れる」というだけでは、消費者ニーズに合った商品は提供できない。「ライフスタイルの変化と消費者ニーズの多様化に対応するため、マーケティングに力を入れ始めました」と商品開発部 清水拓真氏は語る。

 既存の研究室が味・材料・製法・品質といった食品製造のテクノロジーから開発を行うのに対し、商品開発部はコンセプトやデザインを含むマーケティングに取り組む。新たな商品開発の未来を切り拓くため始まった同部であったが、当初は出力したPOSデータの加工に膨大な時間を費やしていた。「本来であれば、POSデータの分析や仮説・検証に時間を割きたいところですが、その前工程である加工に時間がかかり、業務が滞っていました」(清水氏)。

 この問題を解決したのが、「日経テレコン・POS Vision」である。全国のスーパーやコンビニから集まる加工食品、家庭用品265万品目から、契約分類のデータをExcelファイルでダウンロード、クリック操作でレポートまで作成できる。「市場動向や売れ筋商品に関するデータの加工・整形が容易になり、時間が短縮されました。分析にかける時間が確保されただけでなく、出力したレポートをそのまま営業に渡すこともできます。PB(プライベート・ブランド)の販売動向がわかるところも魅力です」(清水氏)。

 その導入効果を受け、さらに市場を深堀りするため、2015年初頭、商品カテゴリー1650分類のすべてのデータを閲覧・ダウンロードできる「日経テレコン POSEYES(以下、POSEYES)」を導入する。多品目のカテゴリを閲覧することで、商品開発の幅が拡がる。以前利用していたPOSサービスは従量課金制のため、見たくても見られないデータがあったが、「POSEYES」は固定料金で、その心配も解消された。

タブレット端末を持ち歩き 市場調査のデータを生かす

 「POSEYESはタブレット端末にも対応しているので、売場で気になる商品を見つけたときに、すぐに調べることができます。『こんな商品がエンド(※)に出ているけど、盛り上がっているのかな?』『この分野が伸びているのは、この商品がけん引しているからだな』といった市場動向が、現場にいながらにしてわかります」(清水氏)。

 開発部門のメンバーは7名と、決して多くはない。社内に戻ればさまざまな業務に忙殺され、せっかく市場調査で得てきた情報を活用しきれていなかったという。タブレット端末の使用により、外出時間も有効活用できるようになり、貴重な市場情報が生きるようになった。

 「POSEYES」は、営業部門でも活用されている。ヒット商品や競合の動向以外に、政治や経済、技術動向などマクロな視点で関連情報を検索できるため、バイヤーに対する話題づくりや、新規先へのアプローチツールにもなる。「バイヤーは情報を持っていますが、なかなかそれを分析する時間が取れない。そこで当社から情報が提供できれば、適切な棚割りを提案できるだけでなく、自社商品に有利な棚展開に結び付くこともあります」(清水氏)。

 例えばPOSサービスのカテゴリをさらに細分化した分類(ユーザー商品分類)を作成し、どんな商品が伸びているかに着目する。「卓上タイプ」の海苔の売れ行きが伸びているという結果が出た場合、卓上タイプのラインナップが少ない小売店に対し、提案する。

          (※)定番棚よりも通路に面していて最も目に付きやすく、大量に商品を陳列できるスペース。

「おにぎらず」作りに最適な新商品「塩付のり全型 7枚」

 POSサービスの活用は、確実に成果を生み出している。あるカテゴリについて「ABCランキング」を使い、一番売れているガリバー商品を調べる。その商品を細分化し、さらに分析。その結果を踏まえ、製造部門や営業の意見を統合し商品化する、新たな商品開発のプロセスが出来上がった。しかし現実には、製造、営業、商品開発の3者で意見が一致しない場合もある。製造部門は当然、品質の高い新商品を提案するが、価格的に厳しければ営業部門は反対する。どのメーカーでもよくある光景だが、浜乙女では、商品開発部がPOSサービスで徹底分析する。確かに営業の言う価格帯がボリュームゾーンではあるが、高価格帯で売れている商品群も一定数あり、しかもその価格帯の商品群が伸長しているケースが見つかれば、このゾーンをターゲットとすることで、製造部門も満足し、営業部門も納得するという。

 さまざまな活用法があるPOSサービスが、具体的な商品として実現した例が、「塩付のり」である。各種メディアが取り上げる「おにぎらず」が、のり市場に新しい風を吹き込んだ。この流れを受け誕生した商品が「塩付のり」である。岩塩がついた全型のりなら、お米に塩を振る必要がないため、簡単な「おにぎらず」がさらに簡単に作れる。

 開発のきっかけは、POSサービスを利用した市場調査だった。「おにぎらず」の流行を察知した後すぐに、それによる全型のりのスコアアップをPOSサービスで確認。素早いマーケティングリサーチが需要に合わせた商品開発に結びついた。

 「塩付のり」は、東海地区を中心にシェアを獲得している。その理由を、浜乙女ブランドがこの地域に広く深く認知されているだけでなく、「のり質と塩にこだわっている点も評価された」「パッケージのはつらつとしたデザインが受けた」と商品開発部は分析する。結果を分析し、次の商品展開へつなげることが、マーケティングの醍醐味だ。清水氏をはじめ商品開発部のメンバーも、そんな仕事にやりがいを感じ、生きた情報をつかむため、多い時には週1回売り場に足を運ぶ。「実際に売り場を見ることで、POSデータだけではわからない生きた情報がわかります」と清水氏は語り、次のように締めくくった。

 「品質の高い商品をお客様にお届けすることは、食品会社としては当然の使命です。しかし同時に、お客様の利便性や生活サイクルに適応し、且つ、お客様の"気持ち"を考えた商品を提供し続けていかなければなりません」

 経営理念である『買う身になって商品を生産・販売し、食卓に満足と笑顔を届けよう』を実践するため、同社のマーケティング戦略はさらに深化していく。

(日経MM情報活用塾メールマガジン7月号 2015年7月27日 更新)

企業プロフィール

企業名 株式会社浜乙女
事業内容 味付のり、お茶づけ、ふりかけ、ごまの製造加工と販売
代表者 服部 義博
本社所在地 愛知県名古屋市中村区名駅四丁目16番26号
資本金 3億2,000万円
従業員数 453名
Webサイト https://www.hamaotome.co.jp/index.html