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導入事例

導入事例 Case Study
日清紡ホールディングス

経営層向け講演会からはじまる
多用な人財が活躍する組織づくり

日清紡ホールディングス株式会社

執行役員 経営戦略センター
      ダイバーシティ推進室長 杉山 誠 氏(中)
経営戦略センター ダイバーシティ推進室
            担当部長 長内 政志 氏(左)
経営戦略センター ダイバーシティ推進室
            担当課長 織部 みゆき氏(右)

 日清紡ホールディングスの発祥である日清紡績が設立されたのは1907(明治40)年。歴史は優に100年を越える。時代の流れに高感度で、需要と経営環境の変化を的確に捉え、迅速に適応してきた。内外で手掛けた大型M&A(合併・買収)の実績も豊富である。国際化は止まらない。今では、祖業である繊維部門の売上高構成比(連結決算ベース)は10%を下回り、エレクトロニクス部門が約40%(同)を占める。「環境・エネルギーカンパニー」グループを標榜し、テキスタイル(繊維)分野はもとより、エレクトロニクス、自動車用ブレーキ、精密機器、化学品、紙製品など幅広い事業を展開する。2015年10月には、全国の証券取引所に上場する株式の業種分類が「繊維製品」から、「電気機器」に変わった。長期経営戦略の数値目標として2025年に売上高1兆円、ROE(株主資本利益率)12%超を掲げる。

2015年7月 ダイバーシティ推進室を新設

 「日清紡グループの従業員約2万4000人のうち、日本人は約半分。事業の海外展開が進んだ何よりの表れ。繊維が中心だった大昔は女性社員の比率が約90%という時代もあった」。執行役員の杉山誠氏の発言から、同社がダイバーシティの推進にとりわけ力を入れる理由、背景がよく伺える。2015年7月にはダイバーシティ推進室を新設し、重点課題として、「女性の活躍推進」、「海外人財の活躍推進」、「シニア層の活躍」の3つを明確に打ち出した。

 日清紡グループでは、ダイバーシティの"一丁目一番地"、最もすみやかに取り組まなければならないと考えているのが「女性の活躍推進」。2014年12月に2020年度までの具体的な目標として、(1)女性取締役の登用 (2)女性管理職数を現在の3倍へ (3)女性新卒総合職の採用比率を事務系4割、技術系2割へ――を公表している。既に(1)の目標は女性社外取締役の登用で実現した。
 さらに新卒総合職の採用チームの中心メンバーとなっているのは外部から迎えた女性管理職、外国人女性社員らである。「経営は同質の人間が集まっているだけでは成り立たない」(杉山氏)領域に入った。

 ダイバーシティの推進は日清紡グループの行動指針にも明記されている。「人権」の項目を立て、「一人ひとりの多様性・人格・個性を尊重し、出生・国籍・信条・宗教・性別・人種・民族・年齢・障害の有無・病歴・学歴・社会的地位等による差別を行いません」と宣言する。多様な人財がいきいきと働き、その能力を最大限に発揮することにより企業の継続的な成長・発展が実現される。同社は、ダイバーシティ推進室設立を機に、時代の流れ、経営環境の変化への適応力をさらに高めようとしている。

経営層向け講演会は、ダイバーシティ推進の火付け役

講演風景

 2015年12月に麓幸子・日経BPヒット総合研究所長を講師に招いて、「ダイバーシティ 経営層向け講演会」を開催した。テーマは「女性活躍推進の企業メリットと推進のポイント」。
 講演会は、日清紡ホールディングスの経営戦略会議の時間を割いて開催した。参加者は、経営戦略会議メンバーおよび全国各地から集ったグループ企業のトップ、主要幹部75人。
 この講演会では、「両立支援制度は就業継続に効果的であっても、女性の活躍・登用にはつながりにくい」「女性活躍企業とは男女ともに活躍する会社である」との認識に立ったうえで、「女性のキャリア開発施策」や「男性管理職の取り組み」について具体的な事例が紹介された。

 「今回の講演会は、ダイバーシティ推進の火をつけてもらうのが目的だ。そのタネ火を消さないように、われわれダイバーシティ推進室がコントロールする。今後はダイバーシティ推進の研修を階層別に広げ、対象者を増やしていきたい。実際に、講師の話はインパクトもあり日清紡グループのダイバーシティ推進の格好のキックオフとなった。講演会を実施して良かったと思っている」(杉山氏)。

 「聴講者からは、男性のバイアス(男女の役割についての固定的な観念)を取り除くことの大切さを改めて知った。『女性を甘やかすな』との講師の発言も刺激的だった、という感想があった」(ダイバーシティ推進室 担当部長 長内政志氏)。

 各社のトップ、役員が熱心に講師の話に耳を傾け、講演が終わった後に質問も多く出た。「ダイバーシティの失敗実例なども話に盛り込んでもらえたら、実践的にもっと役に立つ」との要望も聞かれた。

 この経営層向け講演会は河田正也・日清紡ホールディングス社長の旗振り、肝煎りで実現した。麓氏の講演に先立ち、グループ会社の経営層に対し、河田社長から講演会の目的、経営陣に期待することなど、その思いが語られた。トップ自らのダイバーシティ推進に向けた熱意があればこそ、自社のみならず、グループ各社の管理職層、一般社員にまで浸透するのにそう長い時間はかからないだろう。

(日経MM情報活用塾メールマガジン2月号 2016年2月8日 更新)

企業プロフィール

企業名 日清紡ホールディングス株式会社
事業内容 エレクトロニクス、ブレーキ、精密機器、化学品、繊維、紙製品、不動産
代表者 河田 正也
本社所在地 東京都中央区日本橋人形町二丁目31番11号
資本金 27,587百万円
Webサイト https://www.nisshinbo.co.jp