NIKKEI Media Marketing

導入事例

導入事例 Case Study
経営管理本部 情報管理チーム 主任 吉川 浩隆氏

市場データに独自分析を加えて提供
オンライン商談で高まる情報の重要性

株式会社真誠

経営管理本部 情報管理チーム 主任 吉川 裕隆氏

導入しているサービス
  • 日経POS情報 POS EYES

 家庭用ゴマ製品で売り上げ全国一の真誠はデジタル化に力を入れ、生産から販売に関わる基幹システムを構築し、データに基づく、ち密な市場調査とマーケティングに取り組んでいます。自社データに加えて、日本経済新聞社が提供する『日経POS情報』を採用、年2回は必ず新製品を投入するという国内乾物メーカーでは際立つ積極的な商品戦略をとっています。3人体制でシステムの保守・開発・運用と分析、社内外への情報発信を担当する経営管理本部 情報管理チームの主任である吉川裕隆氏に、新型コロナウイルス感染症拡大で変わる食品市場の動向と最新のデータ分析・活用法をうかがいました。

スーパーの棚割に向けて情報提供、説明しやすく加工

―――日経POS情報のなかで全2000分類のカテゴリーデータが閲覧可能な「日経POS情報・POS EYES(以下、POS EYES)」を利用されています。どのようなシーンで活用していますか。

 営業部門からPOS EYESのデータ出力・加工の依頼が最も多いのはスーパーの棚割の時期です。春夏と秋冬の年2回、陳列棚の商品構成の入れ替えが行われており、春夏の棚割については12月~2月、秋冬では6月~8月に商談することが多く、それに向けて資料を用意しなければなりません。そこでPOS EYESで出力したデータに「情報管理チームの見解」も加えて、営業担当者がバイヤーに説明しやすい状態にして提供しています。
 10年ほど前と比べ、データを提示しながら行う営業が重視されているように感じています。あくまで私の仮説ですが、人口減少によって小売店における顧客の奪い合いが起こっていることが原因ではないでしょうか。従来は営業担当者とバイヤーとの良好な人間関係の構築で棚に配荷されていた部分もありますが、それだけでなく、消費者のニーズを把握したうえで、適正価格で提案することが求められるようになっています。
 さらに、新型コロナウイルス禍におけるオンライン商談により、データ重視の傾向がますます強まっています。直接、お会いできれば営業担当者の「熱」や「空気感」も伝わりますが、オンラインでは伝わりづらい部分です。限られた時間のなかで「なぜこの商品なのか」を説明しなければなりません。そのため、提案の根拠となるデータの必要性が高まっていることを感じています。
 グラフをご覧ください。これは「練りゴマ」の販売動向(2019年2月~2021年1月)を全国で比較したものです。POS EYESで簡単に出力して加工ができます。真誠の「純 おいしいねりごま 白」がトップブランドであることは一目瞭然かと思います。
 
練りゴマグラフ
 昨年春の緊急事態宣言の時には各メーカーの練りゴマの売り上げが伸長していることがわかります。自宅で料理する時間が増えた事が要因です。真誠ではグーグルトレンドやクックパッドからも情報を得て、棒棒鶏(バンバンジー)や担々麵(タンタンメン)などを自宅で作るニーズがあると仮説を立てました。こうしたデータと仮説を用意していけば、より効果的な営業を行うことができます。

「顧客満足度」として社内共有、売れる理由を多角的に調査

―――営業部門への情報提供の際、加えている「情報管理チームの見解」とはどのようなものですか。

 POS EYESのデータをもとに作成する市場調査報告書で、「顧客満足度調査」と呼んでいます。「市場シェア=顧客満足度」と仮定し、ゴマ市場を分析しつつ、今後の見通しも提示するもので、社内のグループウエアで共有しています。
 POS EYESではたとえば、「すりゴマ」カテゴリーの四半期別来店客購入金額を千人当たり金額で前年と比較することができます。少し前の例ですが、2019年10~12月には前年同期と比べて111.7%も伸びていることがわかりました。こういうときは当然、バイヤーからの問い合わせも増えますので、営業担当者はその理由を語れるようにしておかなければなりません。このケースでは、2019年11月中旬から野菜の価格が安くなっていたことや、全国放送のテレビで「ゴマは血管の老化防止に効果的」と取り上げられたことが要因であると分析し、顧客満足度調査に記載しました。
 また、POS EYESを使い、いりゴマ、すりゴマ、練りゴマなど「加工別」ではなく、黒ゴマ、白ゴマ、金ゴマなど「種類別」でデータをみると、2019年には金ゴマの千人当たり金額が前年に比べて伸びていることがわかりました。その時には、金ゴマの芳醇な香りがこの時期、消費者の嗜好に合っていたことや、東京オリンピックに向けて“金関連”の商品として露出が増えていたことなどを理由として報告しています。

販売店の課題解決を意識 提案営業資料に反映

―――自社の営業戦略だけでなく、販売店の課題解決を意識して情報を提供していると聞きました。

 一例を挙げると、ある小売店チェーンのふりかけコーナーには10年以上、真誠の製品が入っていませんでした。
 そこでふりかけコーナーの品揃えアイテムの傾向をPOSEYESの全国データで確認しました。その小売店チェーンは、ふりかけコーナーの平均価格が100円以下のアイテムが主流でしたが、その中でもゴマや雑穀、減塩等の健康軸で訴求しているタイプのふりかけは出現店千人当たり金額が高くなっている事が分かりました。また、真誠のふりかけは無添加や減塩等、健康を謳ったアイテムが主流であり、POS EYESでは100円より高い平均価格で売られている事も分かりました。そこで、これらのデータを提案資料に反映させ、よりお客様のニーズに沿ったSKUを営業マンが熱意を持って提案したところ、真誠製品を採用いただけることになりました。

データが示す「価格では売れない」現実と展望 外からの知見もいかす

―――POS EYESのデータを活用したことで、新たな発見などはありましたか?

 一般的に「販売価格を安くすれば売れる」と思われがちですが、POS EYESのデータは別の要因を示すこともあります。
 真誠のふりかけが「なぜ、市場に定着していないのか」という分析をしてみました。価格と販売個数の散布図をみると、ゴマ塩やすりゴマ、きな粉では価格と販売個数にやや相関関係がみられますが、ふりかけは相関関係がみられませんでした。価格とは異なる要素で勝負が決まっているのです。

 USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)の再建で有名な森岡毅さんは、売り上げを構成する3要素として、プレファレンス(好意度)と認知、配荷を挙げています。真誠のふりかけのケースでいうと、「価格を下げても売れないのであれば、認知度を上げたり、買いやすさを工夫したりするほか、長期的にブランドを育てる視点が必要なのかもしれない」という発想が浮かんできます。このように自社製品の売れ行きをPOS EYESを使って分析しながら、外から得た知見もいかし、社長へ提案することは少なくありません。
Webサイト

(2021年2月4日、取材日の情報をもとに構成しています)

企業プロフィール

企業名 株式会社真誠
事業内容 ゴマ製品及び即席食品の製造販売
代表者 代表取締役 冨田 博之
本社所在地 愛知県北名古屋市片場新町29
資本金 100百万円
従業員数 280名(グループ計、令和2年12月31日現在)
Webサイト https://www.shinsei-ip.ne.jp/

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