AKKODiSコンサルティング株式会社(旧株式会社Modis)
事業戦略統括 コンサルティング事業本部
キーアカウント推進部 部長
桑山 和彦 氏
「きっかけは(2008年の)リーマンショックでした。当時はクライアントも事業縮小を余儀なくされ、開発部門などの人員も整理されました。しかし、そのなかでも派遣契約が続くエンジニアがいたのです。彼らの特徴を分析した結果、クライアントの問題を積極的に解決していることが分かり、そうした人材の育成・サービスの提供を全社として目指すべく、中期経営計画の新たなビジョンに揚げました」。
AKKODiSコンサルティング株式会社 事業戦略統括 コンサルティング事業本部 キーアカウント推進部 部長の桑山和彦氏はこう振り返る。
AKKODiSコンサルティング(旧Modis)は全国に8つの拠点を持ち、9,000人を超える正社員のエンジニアを擁する。現在は慢性的な人手不足が続いているとはいえ、単に技術力の高いエンジニアを求めるのであれば、どの人材サービス会社に依頼しても大差はない。こうしたなか、バリューチェーン・イノベーター(VI)をビジョンとして掲げたのはエンジニアとして、コミュニケーション力はもちろん、課題発見力やソリューション提供力、現場力、共創力、改革推進力を持ち、現場から業務改善はもちろん経営戦略をも革新するスペシャリストの育成が競争力の強化には不可欠と判断したからだ。
桑山氏は「一般的なコンサルティング・サービスとの大きな違いは現場目線での問題解決ができる点です」という。しかし、そのアプローチ手法は大手コンサルティング会社のそれと非常に近い。まず、クライアントのこと、業界のこと、クライアントを取り巻く経営環境について、徹底的に調査し分析することから始まっている。
かつてはまずクライアントのIR情報や、帝国データバンク、東京商工リサーチなどの企業情報のデータベースからさまざまな財務の数字を抽出し、売上高、営業利益率、事業のセグメントごとの売上割合などをグラフ化していた。業界のことなど調べなければならない情報はたくさんあり、「わずか3人の担当者で手分けして、数日かけて整理していました」。
こうした作業は分析の準備段階に過ぎないが、「レポートは作る人によってクオリティにばらつきがあり、分析資料として使えないものもありました。もっと効率よく正確な情報を収集できないかと思っていたところに、日経バリューサーチを紹介されました」という。
日経バリューサーチは企業の財務データはすでにグラフ化され、必要な情報がすべて揃うだけでなく、市場動向や競合企業・業界プレーヤー、業界の特性(商慣習や専門用語)など、日本経済新聞社の記者による分析レポートも掲載、情報は定期的に更新されている。桑山氏は「レポート作成機能について知ったときはとても驚きました。これなら作業が大幅に短縮できると、導入を決めました」と話す。
AKKODiSコンサルティングは通常、VIサービス提供の要請があった場合や新たに提案を行う際、まず事前にクライアントにインタビューを行う。「このクライアントとのファーストコンタクトともいえるインタビューでのコミュニケーションが今後の信頼関係を構築していくうえで、とても大事です」と桑山氏。
インタビューの際、財務指標について日経バリューサーチのレポート機能で作成したレポートなどをクライアントに提出する。現状を的確に把握しており、正しく理解しているというアピールだ。加えて、日経バリューサーチの業界レポートを活用し、業界の状況、今後伸びるセクター、衰退するセクターなどについて伝える。第三者の視点で業界を俯瞰すると、業界内部の人には分からない気づきがあるからだ。
仮説立てもする。たとえば、業界レポートにある売上高研究開発費比率を使って、コストの推移を把握する。多くのクライアントは売上高研究開発比率が高まっているが、それは必ずしも良い傾向とはいえない。なぜなら、プロジェクトに課題があって納期遅延が起きたり、製品の不良品や不具合への対応で想定外の人件費がかかってしまったりする場合にも比率の上昇は起きる現象だからだ。日経バリューサーチのさまざまなデータをもとに立てた仮説を、インタビュー時に効果的に活用しているという。
「独自の分析を交えた情報をクライアントに提供しながらコミュニケーションを深めていくことで、私たちのサービスがエンジニアによる改善レベルではなく、コンサルティングの手法を使った本格的な価値創造のメソッドだということを感じていただけるのです」(桑山氏)。事前にクライアントの情報を頭に入れ、自分の頭の中に仮説を持っていると、クライアントが発した重要キーワードに対しての受け答えの早さが違い、より根本的な課題発見につながる質問=いわゆる「深掘り」ができる。こうやって、わずか1時間のインタビューの間に深い信頼関係を築いていくのだ。
日経バリューサーチのスクリーニング機能を使い、新規開拓や重点的に派遣するプロジェクトの検討など経営判断にも役立てている。今後、伸びる業界はどこなのか、具体的には業界の営業利益率やROE(自己資本利益率)、研究開発費比率などをチェックする。営業戦略を立案する際、もしくはそれぞれのエンジニアのキャリア形成方針を検討する際もマクロ情報を正しく理解することが必要だという。伸びる業界かそうでないかによって、エンジニアのキャリアに影響する。たとえば、医療、航空宇宙など伸びる可能性の高い業界について理解を深めることがエンジニアにとってはキャリアを考えるうえで重要という認識だ。
また、現場はものづくり(製造業)の企業が多いため、為替相場の影響は大きい。円高になると開発を縮小しコストダウンを図るため、契約も終了になってしまうことがある。受注の判断に必要なこういったさまざまな情報も日経バリューサーチなどで入手し活用しているという。
VIには独自の資格認定制度があり、4段階で構成している。トップがエキスパートで、現在は桑山氏を含め10人、次がシニアプロフェッショナルで2人、プロフェッショナルで164人、アソシエイト3,654人が続く。主に資格保有者が各プロジェクトのリーダーとなり、現場のプロジェクトを進行させつつ、コスト削減のための業務改善提案、売上向上のための提案をするほか、部門や部門間が関わる業務プロセスレベルでの提案や、企業間の商流レベルでの提案も行う。すでに1,800件以上の提案がなされ、実施されているという。
現在、日経バリューサーチにアクセスできるのは80人。SFA(営業支援システム)との連携も、もっと多くのエンジニアがすばやく情報を入手し活用できるようにするための検討課題となっているようだ。
VIは全社員の絶対的なビジョンであり、スキル取得をめざしたトレーニングを実施している。「経営分析やグローバルな経済環境分析はどちらかというと文系の分野で、理系出身のエンジニアには難しいのでは思うかもしれませんが、入社してくる社員はみなビジョンを理解し、共感しています」と桑山氏。
AKKODiSコンサルティングは(ある調査で)新卒向け人気企業ランキング人材サービス部門で1位にランクインした。「社員一人ひとりが、"社会に必要とされる人財"へと成長していくためにも、日経バリューサーチなどを通じて、日常的にさまざまな情報に触れることはとても大切です。こうした日々の情報収集・分析がクライアントの、そして自分たち自身のイノベーションにつながっていくのだと思います」(桑山氏)。
(日経MM情報活用塾メールマガジン2017年9月号 2022年5月11日 更新)
企業名 | AKKODiSコンサルティング株式会社 |
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事業内容 | IT・情報システム、メカトロニクス・エレクトロニクス、バイオ・ケミストリー分野におけるエンジニア派遣事業、開発請負、および有料職業紹介事業 |
代表者 | 代表取締役社長 川崎 健一郎 |
本社所在地 | 東京都港区芝浦3丁目4番1号 グランパークタワー3F |
資本金 | 1,063百万円 |
従業員数 | 9,000人 |
企業Webサイト | https://www.akkodis.co.jp/ |