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2つのPOS使い分け、「塩」市場の変化に対応
巣ごもり需要、とらえたい

伯方塩業株式会社

プロモーショングループ 井上 純平 氏
プロモーショングループ 渡部 和子 氏

導入しているサービス
  • 日経POS情報・POS VISION
  • 日経POS情報・SCAN TREND

 食用塩市場はここ数年、ライフスタイルの変化による家庭での調理機会の減少や健康志向の高まりに伴う減塩ブームの影響を受け、下降トレンドが続いています。「伯方の塩」で強いブランド力を持つ伯方塩業(本社:愛媛県松山市)は新商品の開発や新しい売り方の提案などにいかそうと、日本経済新聞社が提供する『日経POS情報・POS VISION(以下POS VISION)』と『日経POS情報・SCAN TREND(以下SCAN TREND)』を利用しています。新型コロナウイルス感染症拡大(コロナ禍)による「巣ごもり需要」でマーケットに持ち直しの機運があるなかで、同社プロモーショングループの井上純平氏と渡部和子氏にデータを武器に活路を見出そうとする戦略を聞きました。

食用塩、コロナ禍でも大きな影響はなく 消費の山は年2回

――コロナ禍での市場の変化や業績への影響はいかがでしたか?

 井上氏:巣ごもり需要の影響もあって調味料全体のニーズは高まっていますが、塩をはじめとする基礎調味料は年間を通しても消費量自体がそれほど多いものではなく、いまのところ、特に、大きな影響はありません。一部、高級な塩が話題になることもありますが、こちらも消費量としては多くありません。
 塩のニーズは年間を通してみると、2回の大きな山があります。春先の梅と秋の白菜などの葉もの野菜の漬物のシーズンです。梅や白菜などの出荷量のほうがコロナより影響が大きいと言えるでしょう。梅が不作になれば、塩のニーズも伸び悩んだりします。
 

完全自由化受け、「SCAN TREND」導入 「POS VISION」は初心者にやさしく

――SCAN TREND、POS VISIONの導入の経緯を教えてください。

 渡部氏:塩はもともと、たばこと同じように専売品だったのですが、1997年に塩専売制度が廃止され、5年の経過措置期間をおいて2002年に完全自由化されました。さまざまなメーカーが塩業界に参入し、海外からも多くの塩が輸入されるようになり、商品数も激増しました。伯方塩業でもマーケティングが必要となり、まず、SCAN TRENDを導入しました。競争が激しくなるなか、まず、自社の位置付けを知るために、どうしても必要なデータだったからです。
 ただ、SCAN TREND導入当初はメーカー別のランキング、商品別のランキング、市場でのシェアをみる程度で、あまり活用していなかったのが実情です。
 私自身は2013年からPOSデータを活用する担当になりましたが、どちらかというとプロのマーケッター向けのSCAN TRENDはなかなか使いこなせませんでした。まだ、私のマーケティングへの知識が追いついていかなかったため、POSデータをとること自体が目的になってしまい、営業へのインプット情報も内容的に不足していました。
商品ラインアップ
 そこで、POS VISIONを導入することにしたのです。POS VISIONなら、さまざまな目線で分析したデータがあらかじめ用意され、グラフ化されています。どのような視点でデータを見ればよいかが分かり、マーケティング初心者の私にとっては最適なツールでした。POS VISIONの導入により、POSデータの見方を学び、マーケティングの知識も少しずつ身につけることができました。営業へのインプット情報も市場動向を深掘りした内容の濃いものになっていったと思います。

スパンや地域、店舗別など組み合わせ 「棚割り提案」資料を作成

――具体的には、どのようにPOSデータを活用していますか?

 渡部氏:POS VISIONでは週次、月次、年次、3年間のデータを追っています。塩が買われるのは年に1~2回、回転率の低い商品ですから、長いスパンの時系列データを追う必要があります。ここ数年、塩の消費量は減少していますので、その中で、他社と自社のシェアがどう動いているかをチェックする必要もあります。また、商品別にみると、たとえば、減塩タイプの商品数は増えていますが、市場そのものの動きは、1~2年くらいのデータでは見極められません。営業からは10年間のトレンドをみたいという要望もあるほどです。
 棚割りが行われるのも年1~2回ですから、棚割り提案なども長期のスパンで考える必要があります。たとえば、塩にもいろいろな種類がありますので、一つの商品だけではなく、棚全体の売り上げを伸ばすためにはどうすればいいか。その提案用資料の作成やプレゼンのために、POSデータを活用しています。店舗別のデータなど詳細なデータが必要なときはSCAN TRENDも併用します。
 また、塩には地域性があります。北海道、東北、北陸は塩の消費量が多く、安くて大容量の商品が売れる傾向にあります。一方、少容量の商品が売れるのは関東、関西の大都市圏です。単身者が多いことも影響しているでしょう。当然、商品のランキングも地域ごとに違ってくるのです。そのほか、新商品開発や加工メーカーへの営業提案など、使用目的によってその都度、POS VISIONとSCAN TRENDのデータを使い分けています。

商材合わせる「関連陳列」の企画力を強化、他のカテゴリーのデータも分析

――今後の展望について、お聞かせください。

 渡部氏:働く女性が増えたことで、家庭で料理が行われる機会は昔に比べて減っています。調理したとしても、時短や簡便化が求められるいまは入れるだけで味付けができる簡便調味料などですませる傾向が高まっています。そのため、店舗における塩の棚自体も年々減少傾向にあり、実際、砂糖や漬物商材が同じ棚に並ぶこともあります。
 このような環境のなかで、いかに自社の商品を消費者の目に触れさせ、アピールしていくかを考えていかなければなりません。今後は、他の食品と合わせた「関連陳列」を考えていく必要があるでしょう。いまは梅などの漬物の時期に、青果売り場に塩をおいていただくような提案はしていますが、もっとさまざまな商材と合わせた関連陳列を企画提案していきたいですね。
 そのためにも、塩だけではなく、さまざまな商材のPOSデータが必要になります。私自身、もっとマーケティングの勉強をしてSCAN TRENDも活用し、他のカテゴリーのPOSデータを合わせた販促企画を提案していきたいと思います。
 井上氏:最近はドラッグストアの売り上げが伸びており、営業担当者からもドラッグストアのPOSデータがほしいとよく言われます。このように流通環境も変わってきますので、SCAN TRENDで得られる店舗ごとのデータなど、POSデータも詳細に分析する必要があるでしょう。
 「日経POSセレクション」では、「伯方の塩」が2020年売上NO.1でした。この受賞は大いに販促に活用させていただこうと思っていますが、一方で近年、増加傾向にある少容量タイプの商品ニーズについても見逃せません。常にPOSデータを確認しながら、大容量、少容量の商品ニーズをきめ細かく分析し、商品展開をしていく必要があると考えています。
伯方の塩
(2021年3月2日、取材日の情報をもとに構成しています。)

企業プロフィール

企業名 伯方塩業株式会社
事業内容 塩の製造及び販売
代表者 代表取締役社長  石丸 一三
本社所在地 愛媛県松山市大手町2丁目3-4
資本金 94,480千円
従業員数 162人(2020年4月現在)
Webサイト https://www.hakatanoshio.co.jp/

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