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グローバルコンプライアンスへの備え~11. 海外贈賄防止ガイダンス(手引)の概要(海外贈賄防止ガイダンス④)

1. はじめに

 前回のコラムでは、日本弁護士連合会が策定した海外贈賄防止ガイダンス(手引)(以下「本ガイダンス」という。)のうち、第1章の第2条「リスクベース・アプローチ」から第4条「組織体制」の内容について解説した。今回のコラムでは本ガイダンスのうち第5条「第三者の管理」以下の内容を説明する。
 
※海外贈賄防止ガイダンス(手引)はこちら(日本弁護士連合会のウェブサイトに移動します。)

2. 第三者の管理(第1章 第5条)

求められる第三者を通じた贈賄防止管理体制 リスク評価して取引承認

 企業はエージェントなどの第三者を通じて行われる贈賄を防止する管理体制を構築することが求められる。この体制構築のためにはリスクアセスメントの結果を踏まえ、管理すべき第三者の範囲および管理の方法をその活動国・地域の贈賄リスクの程度、取引金額、および第三者の類型(コンサルタント、エージェント、ディストリビューター、合弁パートナー、下請企業、税関ブローカー、会計士、弁護士など)に応じて決定することが考えられる。
 第三者の管理方法としては前項の枠組みに応じて、その贈賄リスクの程度を勘案して第三者との契約締結前、更新前または定期的に、次の方法のうち、適切なものを採用し、贈賄リスクに応じて設定された承認権者が合理的な評価項目に従い、贈賄リスクを評価して第三者との取引承認の決定を行うべきである。
第三者との間の契約書に贈賄防止文言を明記
第三者から質問票および贈賄行為を行わない旨の誓約書を取得
 なお、誓約書には会社の基本情報(商号、本店所在地、連絡先、事業内容、設立年月日)、役員および主要株主ならびに、これらの者と外国公務員などまたはその親族との関係、過去に汚職を行いまたはその嫌疑を受けた事実の有無、以上の情報の照会先(business reference)を記載したうえで、当該第三者において、以上の情報が正しいことを宣誓させて、署名を受ける
第三者に関する調査を実施
 贈賄リスクに応じて、簡易かつ低コストの方法として Googleなどの検索エンジンで過去の汚職などの犯罪歴を確認すること、第三者の実在性を確認するため商業登記簿謄本などの取得、コンプライアンス体制を充実させるならば、外国公務員などに関する有料のデータベース(注)を用いることなどを検討する
取引担当者に申請書提出を義務づける
 なお、担当者の申請では上記①から③に関する文書の添付を要求するとともに、委託する業務内容、成果物、当該第三者を選定する具体的理由、支払う金額が合理的な金額(Fair Market Value)であるかどうかなどの情報提供を求める
(注)有料データベースとしてはたとえば、日経テレコンやAcuris Risk Intelligenceの「KYC6」などが考えられる。

3. 教育(第1章 第6条)

内部統制に不可欠な教育 まず、経営トップから 賄賂要求、具体的な拒絶方法示す

 海外贈賄防止にあたっては教育も重要である。海外贈賄防止の教育は海外贈賄防止の内部統制に不可欠な要素の一つとして、第一に、経営トップを中心に実施し、第二に、国際取引に関与する役職員に対して実施することが考えられる。
 教育の内容としては海外贈賄防止関連規制(不正競争防止法、米国FCPA、英国UKBAなどの域外適用法および現地法)、基本方針、および社内規程の理解を基本としつつ、ビジネス形態に応じて生じうる贈賄リスクなどの具体例を交えて、汚職が横行する現地国における賄賂要求を拒絶する具体的な方法を示すことが望ましいだろう。

基本方針や社内規程の遵守を継続的に徹底 誓約書の署名、教育効果高める

 教育の頻度、対象者、形式(クラス形式、ウェブ形式のトレーニング、電子メールによる啓発など)は前回のコラムで説明したリスクアセスメントの結果に応じて決定するが、基本方針および社内規程の導入時のみならず継続的に、国際的な取引に関与する役職員(特に海外事業部門の管理職)に対して重点的に実施していく必要がある。
 なお、教育の実施後、参加者から基本方針および社内規程を遵守する旨の誓約書への署名を求めることで、教育効果を高めることが望ましい。
 教育についてはシステム投資などに比べてそれほどコストを要することもない施策であり、海外贈賄防止を推進にあたって導入しやすい対策である。
 次回のコラムでは第1章「海外贈収賄防止体制の整備」の第7条「モニタリングと継続的改善」以下の内容に触れていく。
(日経MM情報活用塾メールマガジン2月号 2020年2月27日 更新)
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鈴木 正人 Masato Suzuki
潮見坂綜合法律事務所 弁護士

2000年東京大学法学部卒業。2002年弁護士登録。2010年ニューヨーク州弁護士登録。2010年4月から2011年12月まで金融庁・証券取引等監視委員会事務局証券検査課に在籍。『FATCA対応の実務』(共著、中央経済社、2012年)、「The Anti-Bribery and Anti-Corruption Review Fourth Edition」(共著、Law Review、2016年)、『Q&A営業店のマネー・ローンダリング対策実践講座』(共著、きんざい、2020年)等著作多数。

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