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  • グローバルコンプライアンスへの備え~5.企業における外国公務員贈賄防止体制(指針③)~
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グローバルコンプライアンスへの備え~5.企業における外国公務員贈賄防止体制(指針③)~

1. はじめに

 前回のメールマガジンでは経済産業省が策定している外国公務員贈賄防止指針(以下「本指針」という)の内容を踏まえて外国公務員贈賄防止体制として望ましい要素のうち、基本方針の策定・公表、社内規程の策定、組織体制の整備について概説した。本稿では外国公務員贈賄防止体制として望ましい残りの要素である社内における教育活動の実施、監査、経営者などによる見直しの項目の留意点などについて説明する。

2. 企業が目標とすべき外国公務員贈賄防止体制の在り方

(1)社内における教育活動の実施

留意点を具体的な事例に沿って説明、社員に「誓約書」提出を要請

 本指針は外国公務員贈賄防止体制として、社内における教育活動の実施の要素を挙げている。企業が従業員の贈賄防止に向けた倫理意識の向上を促し、内部統制の運用の実効性を高めるためには、社内において適切な教育活動を実施することが重要である。
 具体的には次のような取り組みが参考となると考える。
 
国際商取引に関連する役員および従業員に対して、基本方針および防止体制の趣旨および、その内容を周知徹底すること
国際商取引に関連する従業員などに対して、採用時や転属時に教育を行うこと
教育・訓練活動に当たっては、外国公務員との接触が生じる可能性、研修の方法(講義形式、文書や電子メールなどを活用する形式など)を検討し、有効な教育活動を行うよう努めること
各種法令の内容のみならず、過去の贈答および接待の事例などを整理したうえで、現地の事情に応じて賄賂を要求された場合における対処方法など具体的に従業員が留意すべき点について教育を行うこと
教育・訓練活動を受けた国際商取引に関連する従業員に対し、外国公務員贈賄行為を行わないよう誓約書を提出させること

(2)監査

PDCAサイクルを意識、結果検証を経て次の行動や再計画プロセスへ

 グローバルコンプライアンスへの対応全般に共通するが、監査の実施と監査結果の検証、見直しは非常に重要なアクションである。

 企業が行う一連の活動に関して、次のように4つの段階に分かれるPDCAサイクルというフレームワークがある。
 
  • P(Plan、計画)の段階では、目標を設定し、それを具体的な行動計画に落とし込み、

  • D(Do、行動)の段階では、行動計画について具体的に実行を行い、

  • C(Check、点検)の段階では、途中で成果を測定・検証し、評価を行い、

  • A(Action、改善)の段階では、Cの結果を踏まえて必要に応じて修正を加える―――




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というもので、一連のサイクルが終了した後も、再計画へのプロセスへ入り、次の新たなPDCAサイクルを進めることになる。グローバルコンプライアンス対応における内部監査はPDCAサイクルの点検(check)に対応する。

 本指針は、定期的または不定期の監査により、社内規程の遵守状況を含め防止体制が実際に機能しているか否かを確認するとともに、必要に応じて、監査結果などが後記(3)の見直しに反映させることを掲げている。

 監査担当者(コンプライアンス責任者や法務・経理担当者、監査役などの監査に携わる役職員など)は防止体制が有効に機能しているか否かについて定期的に監査し、実施状況を評価、監査結果などについては経営者、コンプライアンス責任者、法務・経理・監査部門の責任者、関連する従業員に広く情報が共有されるよう努めることが肝要である。
 

(3)経営者などによる見直し

「改善」は経営者の責任、防止体制の有効性評価や修正も目標に

 内部監査などを踏まえて、経営陣が改善を行うことも外国公務員贈賄防止体制の要素として非常に重要である。グローバルコンプライアンス対応についてPDCAサイクルに即して整理すると、経営者などによる見直しは改善(act)に対応する。

 本指針は継続的かつ有効な対策や運用を可能とするよう、定期的監査を踏まえ、必要に応じて、経営者やコンプライアンス責任者などの関与を得て、防止体制の有効性を評価し、見直しを行うことも企業が目標とすべきとする。

 次回は、本指針を踏まえた「子会社の防止体制に対する親会社の支援の在り方」などの留意点などについて説明する。
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鈴木 正人 Masato Suzuki
潮見坂綜合法律事務所 弁護士

2000年東京大学法学部卒業。2002年弁護士登録。2010年ニューヨーク州弁護士登録。2010年4月から2011年12月まで金融庁・証券取引等監視委員会事務局証券検査課に在籍。『FATCA対応の実務』(共著、中央経済社、2012年)、「The Anti-Bribery and Anti-Corruption Review Fourth Edition」(共著、Law Review、2016年)、『Q&A営業店のマネー・ローンダリング対策実践講座』(共著、きんざい、2020年)等著作多数。

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