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グローバルコンプライアンスへの備え~8.海外贈賄防止ガイダンス(手引)の概要(海外贈賄防止ガイダンス ①)~

1. はじめに

 第3回から前回のコラムまで経済産業省が策定している外国公務員贈賄防止指針(以下「本指針」という。)が示している外国公務員贈賄防止体制の留意点について解説した。今回は日本弁護士連合会(以下「日弁連」という。)が策定した海外贈賄防止ガイダンス(手引)(以下「本ガイダンス」という。)の概要について説明する。
 
※海外贈賄防止ガイダンス(手引)はこちら(日本弁護士連合会のウェブサイトに移動します)

2. 本ガイダンスの概要

写真

(1) はじめに

海外贈賄防止推進のベスト・プラクティス

 「グローバルコンプライアンスへの備え~1.総論~」でも紹介したが、日弁連は2016年7月に、本ガイダンスを策定、さらに2017年1月に一部を改訂している。
 本ガイダンスは、経済産業省が最近になって本指針を改訂したことや中小企業庁が2016年3月に公表した「中小企業のための海外リスクマネジメントガイドブック」において贈収賄が重要なリスクとして挙げられたうえ、弁護士に相談することが推奨されていることなどの状況を受け、経済産業省の指針を補完するかたちで、日本企業および日本企業に助言を行う弁護士を対象に、海外贈賄防止を推進するうえでの実務指針に関する現時点でのベスト・プラクティスを取りまとめたものである。 日本企業やその海外子会社・グループ会社が外国公務員贈賄防止を進めていくうえで本ガイダンスは参考になるため、コラムでその内容を説明することとする。

(2)本ガイダンスの目的

内部統制システム整備、贈賄防止体制の要素を列挙

 本ガイダンスは、①内部統制システム整備義務を果たすうえで必要な贈賄防止体制の要素を明確にする②処罰の減免にも一助となりうる内部統制システムの要素を明確にする③企業および弁護士における海外贈賄防止のための実務対応の在り方を明確にする―――という3つの目的を有するとされている(同ガイダンス2、3ページ参照)。
 この点、①については、日本企業の取締役は会社法上の善管注意義務の内容として、内部統制システムを整備(構築・運用)する義務を負うことが判例上認められているところ、本ガイダンスは、取締役が内部統制システム整備義務を果たしているとみなされるために一般的に要求される海外贈賄防止体制の要素を明確にするものであるとされている(内部統制システムとして求められる海外贈賄防止体制の要素を本指針よりもさらに明確にするものであるとされている)。
 次に、②については、諸外国では企業が贈賄に関与したことが発覚した場合であっても適切な内部統制システムを構築していれば処罰が減免されうる点を記述するガイドライン・指針などが存在する例があるが、本ガイダンスでは、米国・英国当局発行のガイドラインも参考としつつ、海外贈賄防止規制による処罰の減免にも一助となりうる内部統制システムの要素をもより明確にするとされている。
 さらに、③については、企業および弁護士が外国公務員贈賄防止を具体的に実践するためには本指針よりもさらに実務的な指針が必要であるとの問題意識のもと、本ガイダンスは、企業および弁護士における海外贈賄防止のための実務対応の在り方をより明確にしている。たとえば、現行の本指針では、ファシリテーション・ペイメント(通常の行政サービスの円滑化のための少額の支払)に関する記載がなされていないが、企業の実務や相談ではいまだその取り扱いが問題となることが多いことから、本ガイダンスは当該事項にも言及している。

(3)本ガイダンスの性格・活用方法

民間贈賄も含め広く海外における贈賄行為防止を目的に

 前述のとおり、本ガイダンスは策定時点の海外贈賄防止対策に関するベスト・プラクティスを取りまとめたものである。なお、同ガイダンスは、英国など外国公務員に対する贈賄の防止を主たる目的としているものの、商業賄賂を禁止する外国規制が存在することなどにも鑑み、民間贈賄も含め広く海外における贈賄行為を防止することを目的とした指針となっているため、同ガイダンスに規定する「外国公務員等」には、外国公務員のみならず、企業に適用される法令が民間贈賄も禁止する場合には民間人も含まれている。

(4) 本ガイダンスの実践表明の推奨

ガイダンスに沿った海外贈賄防止対策の実践を推奨

 本ガイダンスは、日本企業に対し、同ガイダンスに沿った海外贈賄防止対策を実践することを社内外において公表するよう推奨している。このようなガイダンス(手引)実践の表明は、ステークホルダーに対する透明性を高め、企業に対する社会的な信頼を向上することにもつながりうるとされている。

3. 各論

 本ガイダンスは6ページ目以降に各論を記載し、4章計18条から構成される記述において、海外贈賄防止対策に関するベスト・プラクティスが取りまとめられている。

 次回は、本ガイダンスの各論の内容について説明することとし、まずは「第1章 海外贈賄防止体制の整備」の内容に触れていく(第1章の構成は下図参照)。
内容
1   海外贈賄防止体制の整備
1 経営トップがとるべき姿勢と行動
2 リスクベース・アプローチ
3 基本方針及び社内規程の策定
4 組織体制
5 第三者の管理
6 教育
7 モニタリングと継続的改善
8 ファシリテーション・ペイメント
9 記録化
(日経MM情報活用塾メールマガジン12月号 2018年12月17日 更新)
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鈴木 正人 Masato Suzuki
稲葉総合法律事務所 パートナー弁護士

2000年東京大学法学部卒業。2002年弁護士登録。2010年ニューヨーク州弁護士登録。2010年4月から2011年12月まで金融庁・証券取引等監視委員会事務局証券検査課に在籍。『FATCA対応の実務』(共著、中央経済社、2012年)、「The Anti-Bribery and Anti-Corruption Review Fourth Edition」(共著、Law Review、2016年)、『Q&A営業店のマネー・ローンダリング対策実践講座』(共著、きんざい、2019年)等著作多数。