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グローバルコンプライアンスへの備え~12 海外贈賄防止ガイダンス(手引)の概要(海外贈賄防止ガイダンス⑤)

1. はじめに

 前回のコラムでは日本弁護士連合会が策定した海外贈賄防止ガイダンス(手引)(以下「本ガイダンス」という。)のうち、第1章の第5条「第三者の管理」と第6条「教育」の内容について解説した。今回のコラムでは本ガイダンスのうち、第1章の第7条「モニタリングと継続的改善」以下の内容を説明する。
 
※海外贈賄防止ガイダンス(手引)はこちら(日本弁護士連合会のウェブサイトに移動します。)

2. モニタリングと継続的改善(第1章 第7条)

定期的なモニタリングと継続的な改善が重要 社内規程や組織整備など内部統制を強化

 企業は基本方針や社内規程を一度策定してそれで終わりにするのではなく、基本方針および社内規程の遵守状況を定期的にモニタリングし、継続的に改善することが求められる。
 モニタリングの方法は「グローバルコンプライアンスへの備え~10. 海外贈賄防止ガイダンス(手引)の概要(海外贈賄防止ガイダンス③)」(以下「海外贈賄防止ガイダンス③」という。)で説明したリスクアセスメントの結果に応じて、コンプライアンス委員会などにおける検討を通じて、以下のうち、適切な方法により、実施することとなる。
法務コンプライアンス部門又は内部監査部門による高リスク地域の現地拠点訪問・ヒアリングによる監査(注)
社内規程の手続に応じて申請された届出内容の確認
違反事例の検討
相談・内部通報窓口の利用・啓発状況の確認
贈賄を防止するのに十分な内部統制が存在するかを実地で確認するウォーク・スルー・テストなど
(注)監査内容としては、使途不明金や不明朗な販売管理費の支出、小口現金などの現金の管理状況、取引先一覧、エージェントなどの第三者の起用状況、接待・贈答の申請の際に提出された領収書などの確認などが考えられる。
 また、継続的な改善はモニタリングの結果を踏まえて、本ガイダンス(手引)に示す海外贈賄防止のための内部統制の強化を、社内規程の改定や組織体制の整備、エージェントなどの第三者の管理方法、経営トップの誓約などについて、継続的に実施することが求められる。

3. ファシリテーション・ペイメント(第1章 第8条)

ファシリテーション・ペイメント、求められる禁止の明示解消に向けて取り組みを

 企業は通常の行政サービスの円滑化のための少額の支払い(以下「ファシリテーション・ペイメント」という。)に関しても、その支払いが禁止されることを明示することが求められる。
 この点、不正競争防止法18条は「何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。」と規定する。
 ファシリテーション・ペイメントであったとしても「不正の利益」を得る目的があると判断され、外国公務員贈賄罪に該当する可能性があるため注意を要する。

記録の作成、防止のためのトレーニングを 現地政府へ改善要求も 拠点と緊密に連携

 こうしたなかで、ファシリテーション・ペイメントの解消に向けた取り組みが重要となる。

 海外の現地拠点がファシリテーション・ペイメントの支払いを行う実態があることが判明した場合には、本社のコンプライアンス組織(海外贈賄防止ガイダンス③参照)を中心として、当該現地拠点に関して、以下の対応を行うことが望ましい。
ファシリテーション・ペイメントの支払実態を調査する
ファシリテーション・ペイメントの支払いに関する記録を作成するよう指導する
役職員に対して、ファシリテーション・ペイメントを断る方法を含む実務的な贈賄防止のためのトレーニングを実施する
ファシリテーション・ペイメントの支払いの実態を定期的にモニタリングし、当該現地拠点とともに現地弁護士を含め対応策を検討し、現地の日本大使館・領事館、商工会議所、外務省、JICA、ジェトロ、同業者組合などを通じて現地政府に対して改善を要求するなど、当該現地拠点とともにファシリテーション・ペイメントを解消する方法を検討する
 次回のコラムでは第1章「海外贈収賄防止体制の整備」の第9条「記録化」以下の内容に触れていく。
(日経MM情報活用塾メールマガジン5月号 2020年5月27日 更新)
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鈴木 正人 Masato Suzuki
潮見坂綜合法律事務所 弁護士

2000年東京大学法学部卒業。2002年弁護士登録。2010年ニューヨーク州弁護士登録。2010年4月から2011年12月まで金融庁・証券取引等監視委員会事務局証券検査課に在籍。『FATCA対応の実務』(共著、中央経済社、2012年)、「The Anti-Bribery and Anti-Corruption Review Fourth Edition」(共著、Law Review、2016年)、『Q&A営業店のマネー・ローンダリング対策実践講座』(共著、きんざい、2020年)等著作多数。

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グローバルコンプライアンスへの備え~12 海外贈賄防止ガイダンス(手引)の概要(海外贈賄防止ガイダンス⑤)

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