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  • グローバルコンプライアンスへの備え~4.企業が目標とすべき外国公務員贈賄防止体制の在り方(指針②)~
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グローバルコンプライアンスへの備え~4.企業が目標とすべき外国公務員贈賄防止体制の在り方(指針②)~

1. はじめに

 前回のメールマガジンでは経済産業省が策定している外国公務員贈賄防止指針(以下「本指針」という。)を踏まえて企業における外国公務員贈賄防止体制について概説したが、本稿では本指針を踏まえた企業が目標とすべき外国公務員贈賄防止体制の在り方について説明する。

2. 企業が目標とすべき外国公務員贈賄防止体制の在り方

 本指針は国際商取引を行う各企業が目標とすべき防止体制の在り方を例示している。当該の例示は法令上の義務を示すものではないとされており、また、具体的な在り方は企業の規模・事業形態などによって具体的内容は大きく異なりうるものであるが、各企業の体制構築に当たり、参考となるため、紹介する。

(1)防止体制の基本的内容

 本指針は外国公務員贈賄防止体制として、一般的に次の6項目が防止体制として望ましい要素であると述べている。その概要は下図の通りである。

■外国公務員贈賄防止体制として望ましい要素
  外国公務員贈賄
防止体制の項目
盛り込む要素の概要、留意点
基本方針の策定・公表
  • 「目先の利益よりも法令遵守」という経営者の基本姿勢
  • 外国公務員などに対し、当該国の贈賄罪または不正競争防止法の外国公務員贈賄罪に該当するような贈賄行為を行わないこと
社内規程の策定
  • それぞれに応じた対策の在り方を整理するとともに、各社で一定の社内手続や判断基準などをマニュアル化しておくこと
  • 贈賄行為または社内規程違反行為を行った従業員に対しては、人事上の制裁が課される旨を明確にすること
組織体制の整備
  • 社内の役割分担、関係者の権限および責任の明確化
社内における教育活動の実施
  • 国際商取引に関連する役員および従業員に対して、基本方針および防止体制の趣旨および内容を周知徹底すること
監査
  • 定期的または不定期の監査により、社内規程の遵守状況を含め防止体制が実際に機能しているか否かを確認するとともに、必要に応じて、監査結果などが⑥の見直しに反映されること
経営者などによる見直し
  • 継続的かつ有効な対策や運用を可能とするよう、定期的監査を踏まえ、必要に応じて、経営者やコンプライアンス責任者などの関与を得て、防止体制の有効性を評価し、見直しを行うこと

以下、個別の項目の留意点を説明する。

(2)基本方針の策定・公表の留意点

社内の共有化、徹底が重要 必要に応じて翻訳も

 まず、「基本方針の策定・公表」については、外国公務員贈賄防止を支える企業倫理とともに社内で共有化され、徹底が図られることが重要である。周知方法については基本方針の内容を重ねて表明し浸透を図ることや国内外の外国人従業員への周知のみならず、外国政府や、外国投資家、商取引相手の理解を求めるなどの場面でも活用できるよう、必要に応じ翻訳しておくとの工夫も有用である。

(3)社内規程の策定

高リスク行為には承認要件や決裁手続きなどルールを制定

 次に、「社内規程の策定」については、特に、リスクベース・アプローチに基づき、高リスクの行為については、承認要件、決裁手続、記録方法などに関するルールを制定することが望ましい。高リスクの行為としては、外国公務員などとの会食や視察のための旅費負担といった外国公務員などに対する利益の供与と解される可能性がある行為や前回のメールマガジン2(2)③に記載した図表「贈賄リスクが高いもの」のうちの行為類型に列挙された行為が考えられる。ルール化の内容であるが、行為類型ごとに承認要件、承認手続、記録、事後検証手続を内容とする社内規程を策定することや契約前の確認手続・契約期間中などの手続を定めるとの対応が考えられる。また、人事上の制裁に関しては、就業規則や決裁規程、稟議規程など関連社内規程が存在する場合には、外国公務員などへの支払行為や外国公務員などとの取引についても適用されることが明らかとなるよう、贈賄行為を対象として明記することが考えられる。

(4)組織体制の整備

役割分担や権限・責任などを明確化、「風通し」確保にも留意

 さらに、「組織体制の整備」については、社内の役割分担、関係者の権限および責任が明確となるよう、企業規模などに応じた内部統制に関する組織体制を整備することが重要である。その際には、コンプライアンス担当役員または社内でコンプライアンス担当を統括するコンプライアンス統括責任者の指名、社内相談窓口および通報窓口の設置などの事項が重要である。さらに、防止体制の運用においては、現場における具体的な贈賄の兆候を早期の対応に結びつけることができるよう、現場担当者が上司やコンプライアンス責任者に気軽に相談できるような、組織内の「風通し」を確保することや子会社を含め、営業部門・営業担当者に対しては、実現困難な受注実績を求めるなど贈賄行為を行う動機を形成させないよう配慮することにも留意すべきである。

 次回は、本指針を踏まえた「企業が目標とすべき防止体制の在り方」のうち、「社内における教育活動の実施」、「監査」、「経営者などによる見直し」の項目の留意点などについて説明する。
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鈴木 正人 Masato Suzuki
稲葉総合法律事務所 パートナー弁護士

2000年東京大学法学部卒業。2002年弁護士登録。2010年ニューヨーク州弁護士登録。2010年4月から2011年12月まで金融庁・証券取引等監視委員会事務局証券検査課に在籍。『FATCA対応の実務』(共著、中央経済社、2012年)、「The Anti-Bribery and Anti-Corruption Review Fourth Edition」(共著、Law Review、2016年)、『Q&A営業店のマネー・ローンダリング対策実践講座』(共著、きんざい、2019年)等著作多数。