NIKKEI Media Marketing

情報活用塾

情報活用Tips Column

最終回 海外ビジネス情報の収集(3)

英語化されているのは公開されている情報の一部に過ぎない

前回ご紹介したところまでで、世界各国の経済・社会情勢や各種の統計データは、かなり手にすることができるはずである。しかし、実際に現地への進出を考える際などには、より詳細な産業情報や特定の企業に関する情報が必要となってくる。最終的には現地に行って生の情報にふれるべきではあろうが、その前に、まだまだやらなければならないこと、やれることがある。

英語でのインターネット検索も一つの手だ。日本でも英語版のWebサイトを持つ企業や組織が多いように、非英語圏においても、かなりの情報が英語でも開設されている。Web Technology Surveys社の調査結果によれば、全世界で公開されているWebサイトを言語別に見ると、英語が55.5%と半数以上を占めてダントツだそうである。ちなみに、日本語のWebサイトの割合は5%に過ぎない。

ブラジルの情報を得るのにはポルトガル語のサイトを見なければならない、ヒンドゥ語が読めなくてはインドの情報は得られない、という訳ではない。英語で検索すれば、ブラジルやインドの企業や産業に関する情報は相当手にすることができる。本コラムの第1回で、日本語の新聞や雑誌、調査資料などからも多くの海外情報を得られる、という話をしたが、同様に、いや、それ以上に、アメリカやイギリスなどの英語圏や、それ以外の国においても英語で発信されている各国企業・産業に関するニュースやレポートは多いのである。

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とはいっても、現地の情報が100%英語化されているという訳でもない。日本語版と英語版がある日本のWebサイトの内容を比べてみると、企業のサイトの場合はほぼ同じであることが多いが、例えば政府機関のサイトなどでは、英語のサイトの情報量は圧倒的に少ない。国によっても違いはあろうが、やはり非英語圏の情報の場合、英語化されているのは公開されている情報の一部に過ぎないと考えた方がよい。

私も、海外から「こんな情報をGoogle検索で見つけたのだけれど、他に何かない?」と日本に関する情報を聞かれることがある。よくこんな情報を見つけてきたな(=よくこんな情報が英語になっていたな)と思うときもあるが、どこから持ってきたんだろう?どこが出している情報なんだろう?いつの情報なんだろう?と首をかしげることのほうが多く、結局は、相手が提示してきた情報は使わずに、ゼロベースで日本の情報を調べて英語でまとめることとなる。

それを考えると、私たちが英語や現地語でインターネット検索をして何らかの情報が得られたとしても、それは、たまたま得られた一部分の情報であると考えた方がよい。その国のその産業の一端を垣間見ることはできるが、それがどういう意味を持つ情報なのか、他に出てきた情報とどのような関連性があるのか、信頼のおけるものなのかどうか、などという判断をするのは、現地のビジネス環境を理解し、情報事情に通じていなければ、至難の技である。

各種のデータベースサービス・情報サービスを利用する

そこで利用を考えるべきなのが、各種のデータベースサービス・情報サービスである。日本でも企業の財務状況や最近の動きを知りたいと思ったら、その企業のWebサイトなどを見ていくのと同時に、専門機関から信用情報や財務データを入手したり、新聞や雑誌に掲載されている記事を拾っていくだろう。ある業界に関する最近の動向を見たいと思ったら、新聞や雑誌などで関連する業界の記事を集めたり、関連する記事市場調査レポートを探して購入を検討したり、ということになるはずだ。

海外の企業だからといって、海外市場だからといって、調査の仕方が日本の場合と異なるわけではない。情報源のパターンも同じであり、ただ、利用するデータベースやサービスを提供しているのが海外企業であるというだけである。

海外のサービスを利用するとなると、情報内容はもちろん、検索も英語で行うことになる場合がほとんどとなるが、一部日本語でもアクセス・入手が可能なサービスがあるのでご紹介しておこう。

グローバルインフォメーション社は、世界300以上の調査会社と代理店契約を結んで各種の調査レポートを販売している。各レポートの概要と目次は日本語に翻訳されており、Webサイトで検索が可能だ。市場調査レポートは、日本においてさえどのようなレポートが、どこからいつ発行されているかを把握するのは簡単なことではない。それが、世界各国で発行されているレポートを、横断的に、日本語で、しかも無料で検索することができるのである。レポート購入にあたっても外貨送金などのわずらわしさがなく、入手後の内容に関する問い合わせ窓口にもなるとのこと。海外市場の調査レポートを考える際には、まずアクセスしてみるべきサイトのひとつといえよう。

日経テレコンには、海外メディアのコンテンツを日本語で検索して読むことができるメニューがある。中国の『新華社ニュース』や『人民網』(共産党機関紙「人民日報」のウェブ版)、「Vietnam Economic News」の日本語版『B&Companyベトナムニュース』などのアジアメディアから、欧米のニュースをカバーする『AFPBB News/AFP通信』など。各種メディアの日本語版記事や翻訳ニュースなど60媒体をカバーしている。複数のメディアの一括検索も可能なので、あるテーマについて各国メディアの記事の比較なども可能である。

例えば、私の現在の関心テーマであるエストニアについて見てみると、AFPやダウ・ジョーンズなどの欧米系のメディアではNATOの対ロシア軍事力強化が進んでいることに関する記事が取り上げられている一方、ロシアメディアでは欧米諸国のロシアに対する制裁措置でエストニアが受ける経済的影響が取り上げられている。さらに、韓国メディアがエストニアの電子投票について解説している記事もある。各国メディアが、エストニアをどのように捉えているのか、エストニアのどのような部分に関心を持っているのかということを垣間見ることができ、非常に興味深いものとなっている。

日本語版や翻訳ニュースなので、現地でのニュースや記事の、内容もボリュームも同じという訳ではないが、現地情報への入り口として、これだけの内容が日本語で読めるというのは大変ありがたいものである。

海外のデータベースや情報サービスを利用すれば、より多くの情報を得られる。世界中の2億件以上の企業概要情報をカバーしているデータベースもあれば、中国やインドの企業の信用調査レポートを1-2週間で提供してくれるサービスもある。記事検索であれば、世界中の数万にも及ぶ新聞記事が検索できるものもあれば、必要な記事を横断的にフィルタリングして提供してくれるというサービスもある。

別表に、主な海外ビジネス情報提供サービスとその内容をまとめた。料金体系や契約形態の詳細については、それぞれお問い合わせいただきたいが、一般的には年間契約が必要で、しかるべき料金がかかってくるものが多い。しかしながら、企業の信用情報といっても、国によって調査の手法も違えばレポートの読み方にも注意が必要な場合も多いし、記事検索のやり方も、日本語の記事の場合と同じという訳にはいかない。このようなギャップを理解して、情報の内容を正しく把握しなくては、せっかくの情報も活用には至らない。そのためには、検索方法や情報の見方などについて、様々なサポートをしてくれるサービスの存在は欠かせないといえよう。

初めにも述べたように、海外ビジネス情報の収集にあたっては、"言葉"と各国における"情報環境の違い"というふたつの壁がある。今回ご紹介してきたように、言葉の壁を感じずに得ることのできる海外情報も決して少なくはないし、情報環境の違いを織り込み済みの情報サービスも数多く展開されている。これらを活用して有益な情報を得て、グローバルな企業活動がさらに展開されていくことを期待したい。

サービス名 内容
総合
D&B Hoovers 企業情報:世界250カ国1億社
人物情報:1億人
業界紙:16,000紙
産業レポート:200カ国197業種
企業情報
エクスペリアン企業調査レポート(日経テレコン) アジア・オセアニア地域をはじめとした世界各国の企業信用調査
Dow Jones U.S. Market ATLAS(日経テレコン) 約8,000社の企業情報データと企業関連ニュース(日本語翻訳)
COFACE海外企業信用調査レポートサービス 世界各国の企業信用調査:実施に1-2週間。日本語への翻訳オプションもあり
記事・ニュース
WiseSearch(日経テレコン) 中国・香港・台湾など中国語圏で発行されている新聞・雑誌を中心に900以上を収録
Factiva 世界200カ国3万以上の新聞、雑誌、Webメディアなど
NewsEdge 世界約1,700紙誌以上の情報源から、必要記事を横断的にフィルタリングして提供
市場調査レポート
Profound 世界約120社の発行する調査レポートを横断検索。レポートの必要な部分のみの購入も可能
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上野 佳恵 Yoshie Ueno

津田塾大学卒業後、株式会社日本能率協会総合研究所マーケティング・データ・バンクにて顧客向け情報提供サービスに携わる。のち、マッキンゼー・アンド・カンパニーにてリサーチ業務の傍ら情報センターの整備、トレーニングなどを手掛ける。 2004年にリサーチ関連サービス、コンサルティングを手掛ける有限会社インフォナビを設立。 著書に『情報調査力のプロフェッショナル』(ダイヤモンド社)。