デフレ脱却の労使交渉が必要、浸透しない賃上げに強い危機感
--- 2019年の春季労使交渉(春闘)に注目が集まっています。すでに基本構想が公表されていますが、賃上げの要求方法が大幅に見直されていると聞いています。その背景と狙いを教えてください。
日本は20年間、デフレーションの状況が続いています。春季生活闘争の枠組みは昭和30年代にできましたが、高度成長期のなか、インフレーション基調を前提としてできあがった仕組みです。労使交渉で重要視されるのは過去1年間の物価上昇率でした。物価が上がると、生活が苦しくなるので、少なくとも物価上昇はカバーするかたちで賃上げ交渉をする、その場が用意されていたのです。
しかし、デフレ経済の状況下ではそれでは通用しません。
それでも、ここ数年は大企業など労働組合があり、しっかりとした賃金制度がある企業はベースアップ(ベア)はなくても定期昇給(定昇)や賃金カーブを維持することで、組合員の賃金は上がっていました。一方、労働組合がないところ、労働組合があっても賃金制度が確立していないような労働環境では「物価が上がっていないので賃金は上げられません」ということで、定昇や賃金カーブの維持ができていません。
連合の分析では30歳の賃金をみると、1997年には大企業も100人未満の企業もほとんど格差はありませんでした。それが20年経って、2万1,900円の差がついています。35歳では3万6,800円、40歳になると5万7,700円に格差は広がります。企業規模や雇用形態などによって、賃金の差が大きく広がっているのです。同じグループ企業のなかでも、親会社と子会社で差があったり、子会社あるいは下請会社で労働組合がないところは賃金が上がっていなかったりする状況が続いたのです。