NIKKEI Media Marketing

トップインタビュー

NMM 35th anniversary top interview

  • 第17回 日本労働組合総連合会 会長 神津里季生様
 日経メディアマーケティングは2018年3月1日、おかげさまをもちまして会社創立35周年を迎えました。その記念プロジェクトとして、4月、お取引先様などとの絆(きずな)を深めさせていただくことを目的に、ウェブサイトを大幅にリニューアルしました。
 その目玉企画として、企業や各界のトップにインタビューをお願いし、みなさまにお届けする連載を始めました。グローバル化やデジタルトランスフォーメーションが加速するなか、ビジネスの革新や働き方改革に向け、今を読み解いて、未来に向けて行動するための視点やヒントを探っていきます。

春闘の枠組み、いま、変えるとき 情報発信力を高め、輪を広げる
日本労働組合総連合会 会長 神津里季生様

聞き手 日経メディアマーケティング社長  大村泰
神津里季生(こうづ・りきお)氏
神津里季生(こうづ・りきお)氏
 トップインタビュー第17回は日本の労働組合のナショナル・センター(全国中央組織)、日本労働組合総連合会(連合)の神津里季生会長です。バブル経済崩壊後の厳しい経済状況のなか、早くから労働界のリーダーとして活躍。ここ数年は政府主導の「賃上げ圧力」もあり明るさが見えているとはいえ、少子高齢化や人手不足、グローバル化、AI(人工知能)・ロボットなどテクノロジーの台頭、ダイバーシティ、「安倍一強政治」、野党の分裂などさまざまな要素が複雑にからみあい、その舵取りの難しさが緩む気配はありません。労働界として「働き方改革」をどう進めていくか。連合結成30年の節目にあたる2019年の春季労使交渉(春闘)に新しい息吹を吹き込もうと大胆な見直しを図る戦略をやわらかな語り口で熱く語っていただきました。
プロフィル
神津里季生(こうづ・りきお)氏 1979年東京大学教養学部卒、新日本製鉄(現・新日鉄住金)入社。98年新日本製鉄労働組合連合会書記長、2002年同会長。06年日本基幹産業労働組合連合会(基幹労連)事務局長、10年同中央執行委員長。13年連合事務局長、15年現職に。1956年生まれ、東京都出身

デフレ脱却の労使交渉が必要、浸透しない賃上げに強い危機感

--- 2019年の春季労使交渉(春闘)に注目が集まっています。すでに基本構想が公表されていますが、賃上げの要求方法が大幅に見直されていると聞いています。その背景と狙いを教えてください。

 日本は20年間、デフレーションの状況が続いています。春季生活闘争の枠組みは昭和30年代にできましたが、高度成長期のなか、インフレーション基調を前提としてできあがった仕組みです。労使交渉で重要視されるのは過去1年間の物価上昇率でした。物価が上がると、生活が苦しくなるので、少なくとも物価上昇はカバーするかたちで賃上げ交渉をする、その場が用意されていたのです。
 しかし、デフレ経済の状況下ではそれでは通用しません。
 それでも、ここ数年は大企業など労働組合があり、しっかりとした賃金制度がある企業はベースアップ(ベア)はなくても定期昇給(定昇)や賃金カーブを維持することで、組合員の賃金は上がっていました。一方、労働組合がないところ、労働組合があっても賃金制度が確立していないような労働環境では「物価が上がっていないので賃金は上げられません」ということで、定昇や賃金カーブの維持ができていません。
 連合の分析では30歳の賃金をみると、1997年には大企業も100人未満の企業もほとんど格差はありませんでした。それが20年経って、2万1,900円の差がついています。35歳では3万6,800円、40歳になると5万7,700円に格差は広がります。企業規模や雇用形態などによって、賃金の差が大きく広がっているのです。同じグループ企業のなかでも、親会社と子会社で差があったり、子会社あるいは下請会社で労働組合がないところは賃金が上がっていなかったりする状況が続いたのです。

「賃金水準」の議論を起こし、さまざまな格差是正を訴えたい

--- デフレ経済のなかでじわじわ格差が広がっているということですね。

 この3年間、「底上げ春闘」でがんばってきたこともあり、中小企業のベア率が大企業を上回ったり、あるいはパート労働者などの時給上昇率がいわゆる正規社員の方のアップ率を上回ったりしました。これは、60年を超える春季生活闘争の歴史上、初めてのことで、きわめて大きな成果です。ただし、あくまで連合のなかでの話であって、世の中全般にまでは浸透していません。それについて私は強い危機意識を持っています。
 残念ながら、労働組合の組織率は大企業に偏重しています。大企業の2社に1社は労働組合がありますが、100人未満の規模の企業になるとわずか0.9%です。
 2019年の春季生活闘争では、ベースアップと定昇を合わせて「4%程度」の賃上げ要求を行っていきますが、足元の最大の課題である中小企業の労働組合やパート労働者などの賃金を「働きの価値に見合った水準」としていくために、賃金の「上げ幅」のみならず「賃金水準」の引き上げを要求していく必要があると思っています。大企業よりも低い賃金水準の実態を強調した要求とすることで、賃金格差の改善を経営側に訴えやすくしたいと思っています。

生産性の理解に誤り、労働対価引き上げに「取引慣行」是正を

神津里季生(こうづ・りきお)氏

--- 企業の生産性が上がっていないなか、給料は上げられないという声もあります。

 往々にして、生産性の向上がないと賃金は上げられないといいますが、生産性については誤解されている面があります。企業は生産性の向上のために人を減らして、コストを削減するべきだという発想になっているのです。本来は経営者と労働者が力を合わせて、世の中により付加価値の高い商品やサービスなどを送り出し、それに見合う対価を得る---これが生産性向上の基本中の基本であるはずです。
 しかし、大企業でもこの基本が忘れられているうえ、特に中小企業や下請企業となると、立場が弱いということでしょうか、世の中に素晴らしいサービスを送り出しているのにもかかわらず、それに見合う対価を得ることができず、生産性が上がらないというケースが多く見受けられます。
 連合では、かねて取引慣行の是正を強調していますが、2019年の春季生活闘争では中小企業の賃上げ原資確保のためにも「取引の適正化推進」を強くアピールし、「サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配」が必要であることを職場労使、経営者団体とともに社会全体に訴えていく考えです。
 日本の企業社会では「大手と中小の格差は当たり前」あるいは「発注元の要請は無理してでも受ける」という「悪しき常識」がまかり通り、中小企業は賃上げできないといわれてきました。格差是正に向けて、まず、その「悪しき常識」を根本的に見直し、賃上げの原資を確保する必要があります。そして、サプライチェーン全体、関連会社や下請会社を含め、そこで働く人たち全員の賃金が上がるように配分を求めます。中小企業の労働組合が自ら格差是正をめざす要求を行い、大手追従・大手準拠の構造を転換していくことが重要だと思います。

日本人の働き方は「特異」 根底にある危うさへの意識を持つことが大事

--- 日本は働き過ぎるとよくいわれています。

 日本人の働き方は、世界の中でも少し特異だと思います。それは良い面も悪い面もあります。仕事に打ち込んだり、仕事を通じて自己実現をめざしたりして、働くことに喜びを持っています。これは良いことだと思います。一方、つい働きすぎてしまい、ともすると我慢をしてしまう、という危うさを持っています。こうした日本人の働き方の根底にある危うさについて、どれだけ意識を強く持つかということが大事だと思います。
 いま、過労死や過労自殺が認定されているベースだけで毎年200件前後もあります。日本のどこかで2日に1人以上、過労が原因でなくなっているという計算になります。欧米先進国ではありえない話です。欧米の勤労観は、一般的には労働は苦痛を伴うものであって、日々の生活を支えるお金を得るためには仕方がないものと認識されています。だから、時間が終われば、さっさと帰ります。
 バブル崩壊の少し前から、過労死が取り上げられるようになりました。私は過労死・過労自殺が出てしまった企業は企業名を公表すべきだと思います。関係する政府の会議でも主張をしているのですが、本人のプライバシーの問題もあり、厚生労働省はそこまで踏み込んでいません。一部の勇気あるご遺族の方々の主張によって明るみに出ることはありますが、こうして公になったことで、働き方改革が進んできたのだと思います。
 戦後、労働基準法が制定される過程では長時間労働をなくすために罰則付き上限時間を設けるという話があったそうです。ところが、戦後復興で懸命に働かなければならないし、賃金水準そのものも低く、残業をあてにしないと国民の大半は生活できず、結局、その話は成就しませんでした。その機会を逃して以来70年。経済の基調は高度成長からバブル、そしてバブル崩壊、デフレと、大きく変わってきましたが、その間も労働者の我慢がずっと続いて、最終的には多くの命を失う事態にまでつながってしまった。やはり条件付きで罰則を設けなければ、問題解決にはならないと思います。これは連合がずっと主張してきたことです。
 今回、働き方改革のなかで、時間外労働について罰則付きの上限規制ができました。まず、第一歩を踏み出すことができたと思っています。

36(サブロク)協定

 労働基準法第36条に基づく時間外労働や休日労働などに関する労使協定で、会社が法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた時間外労働を命じる場合、必要となる。労働組合などと書面による協定を結び、労働基準監督署に届け出る。届け出をしないで時間外労働をさせると、労働基準法違反(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)となる。2018年6月末に成立した働き方改革関連法で、日本の労働法制で初めて残業時間の上限規制の導入が決まった。36協定で認める残業の上限は原則「月45時間・年360時間」に設定。特別条項付きの協定を結んでも、年720時間以内、2~6カ月平均で80時間以内、単月で100時間未満に抑えなければならない。
 ただ、法整備がなされても現場で活かさなければ意味がありません。労働組合の有無にかかわらず、すべての職場において、より良い働き方の実現をめざし、時間外労働に関する労使協定である「36(サブロク)協定」の適切な締結をはじめとする職場での取り組みを徹底していくことが重要です。
 連合では「Action!36」と銘打って、この取り組みを展開していきます。3月6日を日本全体が認知する「36(サブロク)の日」とし、長時間労働の是正、過労死・過労自殺ゼロへ向けて大きなうねりとしたいと思っています。

コミュニケーションが労働組合の原点 全国行脚、ネットメディアも活用

--- 連合は2020年に組織人員を1,000万人まで増やすことを目標としています。ここ数年、じわじわ増えていますが、一方で脱退も目につきます。組合員のメリットを高めるにはどのような試みが必要でしょうか。

 いま、組織人員は700万人います。1989年に連合が立ち上がった時は800万人でした。その後、産業構造の転換が進み、組合員の多かった製造業の比率が減少したり、いわゆる非正規といわれる形態の労働者が増えたりしたことで、650万人ぐらいまで減りました。その後、じわじわと盛り返して増やしてきています。
 5年前から、地方連合会、産業別組合、そして連合本部が三位一体となって、てこ入れをしてきた成果です。2007年に「非正規労働センター」を設置して以来、この約10年で、いわゆる非正規労働の組合員も100万人を超えました。割合でいうと15%強です。世の中の非正規雇用の割合は4割近いですから、まだまだ途上にありますが。
 ご指摘のように、結果として、連合を出てしまう組織もあります。最近では全国化学労働組合総連合と全国信用金庫信用組合労働組合連絡会議の2つが脱退しました。私に言わせれば、原因はコミュニケーション不足です。それぞれの事情があって、なかなかうまくコミュニケーションが取れていなかったことがおかしな結果を生んでしまいました。
 コミュニケーションは労働組合の原点です。原点に戻るという意味で、2017年10月から、会長や会長代行、事務局長が手分けして48の産業別組合、47の都道府県の地方連合会すべてを訪問し、コミュニケーションを図る活動を進めています。これまでに地方連合会は8割、産業別組合は6割まで到達しました。
  また、労働組合がないところには、労働組合があって初めて集団的労使関係ができるという基本的なことを知ってもらう必要があります。働き方改革の推進には集団的労使関係の構築が不可欠であることを組織の内外に伝えなければなりません。組織拡大に向け、「いわゆる非正規労働者などの組織拡大」、「子会社・関連会社、取引先企業の組織化」さらには「未組織企業の組織化」という3つを重点的な取り組みとして行っていきます。
 常に、情報発信をしていくことも必要です。私自身、インタビューをはじめ、メディアに取り上げてもらう機会を増やしてきました。インターネットメディアやSNS(交流サイト)を含めて、発信力をさらに強化していきたいと思います。
 労働組合のメリットを一人一人に感じてもらうのは難しいかもしれません。しかし、たとえば、何かあった時の駆け込み寺になる機能があります。フリーダイヤル0120-154-052、「行こうよ、連合に」という語呂合わせでダイヤルすると、一番近い地方連合会につながるようになっています。こうした機能も合わせ、コミュニケーションの輪を広めていく必要があるでしょう。
連合登録員数の推移

女性役員にクオータ制、先に結果を示し「逆バネ」働かせる

--- 女性活躍促進についても連合ができることは何か、現在、行っている具体的な取り組みがあったら、お聞かせください。

 男女平等参画社会の実現はかなり強い意識を持っています。歴史を振り返ると、育児休業なども連合発足以来の最初の大きなテーマとして、力を入れて、その実現を図ってきました。
 ただ、女性の役員登用となると、まだまだです。連合本部が率先して女性の執行委員の比率を高めていかないといけないと考えています。2013年から始めた「第4次男女平等参画推進計画」では3つの目標=(1)ディーセント・ワークの実現と女性の活躍促進(2)仕事と生活の調和(3)多様な仲間の結集と労働運動の活性化=を掲げました。そして、「女性役員を選出している組織100%」、「2020年までに連合の役員・機関会議の女性参画率30%」をめざしています。「30%」の数値を設定したのは実は政府より連合が先なのです。

連合の第4次男女平等参画推進計画概要(2013年10月~2020年9月)

<目標1> 働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)の実現と女性の活躍促進
(1)雇用における男女平等の実現 (2)女性の雇用を阻む構造的問題の解消
(3)働きやすく、働き続けられる職場づくり(4)性やライフスタイルに中立的な税・社会保障の確立
<目標2>仕事と生活の調和
(1)仕事と生活の両立支援制度などの拡充 (2)職場における両立支援制度の定着 
(3)働き方の見直しと多様な働き方の整備 (4)地域・家庭における役割・責任の分担
<目標3>多様な仲間の結集と労働運動の活性化
(1)組織拡大の取り組み強化(2)男女が参加・活躍できる活動づくり(3)女性が意思決定に参画できるしくみの整備
(4)男女平等推進委員会と女性委員会の設置・強化 (5)組合活動と仕事や生活の調和
 現実にはまだ15%弱ですが、連合本部に限っていえば、30%をクリアして34%に達しています。連合本部では主に北欧諸国で行われているクオータ制に近い制度を導入しています。クオータ制は議員・閣僚などの一定数を女性に割り当てる制度です。クオータ制にはいろいろな議論がありますが、それぞれの組織でもやっていただくよう、お願いしています。
 賃金を上げることで生産性を引き上げることと同じように、男女の割合についても、女性の比率を高めるからこそ、男女平等参画社会が実現するのです。目標に向かって行動を起こすだけでなく、先に結果を示すことで、制度そのものを実現させる。そういったある種の「逆バネ」を働かせていくことが大切です。

真実の究明ない政治良くない、野党にも大いに責任 まとまりを

--- 安倍首相一強政治が続いています。その弊害について会長は訴えていますが、その懸念と野党に対する期待について教えていただけますか。

 現在の与党の悪いところは、大事な法案であればあるほど、合意形成を図らないところです。そして森友学園、加計学園問題も世論調査すると7割方の国民は怪しいと思っています。真実が究明されない政治は良くないですし、それをあきらめてしまう国民も良くないと思います。
 背景には忖度(そんたく)があります。日本の官僚はきわめて優秀だと思いますが、あまりにも時の政権だけに仕えるという傾向が強いのではないでしょうか。同じ議会制民主主義の英国では官僚は野党も含めて国民に仕えることに徹底しています。たとえば、野党がマニフェスト(政権公約)を作る時にも官僚は力を貸します。そこが日本とまったく違うところです。
 安倍政権には数の力がありますので、議席数の力を笠に着て大事な法案を通してしまう。この構造は良くありません。本来、一強政治が続くような支持率の高さがあれば、20年先、30年先の財政の問題、社会保障の問題まで考えることができるはずです。しかし、国政選挙が頻繁に行われるため、政治家は選挙のことを考えて、勇気を持って改革に踏み込むことができていないのではないでしょうか。そのため、本来は将来のグランドデザインを作らなければならないのに、将来の世代にツケをまるごと放り投げる結果になっています。
 その責任が政権与党にあることは事実ですが、それを許してしまっている野党にも大いに責任があります。やはり野党はしっかりと力を合わせていかなければなりません。民主党政権における一番評価できる実績は「社会保障と税の一体改革」です。三党で合意形成をして実行につなげました。その理念も含めて、評価できる政策でしたが、このようにいくら良いことをやっていても、その核となる政党がバラバラになってしまっては国民も信用しません。
 民主党は政権時代の末期からすでに足並みが乱れていましたが、2017年には一種の政変が起こり、分離や結合を繰り返した結果、立憲民主党と国民民主党並立の構図ができあがっています。今後、この両党が力を合わせる姿を、一つ一つの選挙区で実現してもらいたい。与党と野党で切磋琢磨していくのが、二大政党的な理想の姿だと思います。
 二大政党が機能してきた欧米、特に欧州では、たとえば、消費税の導入や増税に関しても、負担の構造を明らかにし、理論的な説明がなされています。それがなぜか日本の政権ではできていません。連合の立場からすれば、組合員の生活が大事ですし、将来の子どもたち、孫たちの生活も大事です。労働組合は生活に関する意識が強いので、政治の世界でいい加減なことをやられると困ります。これは日本の将来にとっても、深刻な危機だと思います。

若い人も「とにかく我慢しない」 もっと政治への関心高めて

--- 若い世代、学生も含めて、メッセージをいただけますか。トップとして後継者について一言お願いします。

 とにかく我慢をしないでいただきたい。連合の労働相談には年間1万5,000件ぐらいの相談がありますが、そのなかにはアルバイトの学生からの相談が多く含まれています。昔は一般的に不当解雇に関する相談が多かったのですが、最近はバイトのケースを中心にして逆に「辞めさせてくれない」という相談が多く寄せられています。使用者側からは、「ローテーションに入っているので、いま辞められると困る」といわれるそうなのです。「そろそろ学業に比重を置きたいと思っているのに辞めさせてくれない」という相談もあります。学生はまじめである一方、ワークルールを知らないというケースが多いのです。連合はこうした学生たちの相談にも乗ります。とにかく我慢しない、抱え込まないでほしいですね。
 われわれの世代から若い世代に対し、申し訳ないと思うことが2つあります。1つは借金を残してしまっていること。もう1つは政治意識の低さを定着させてしまったことです。
 いまや若い人の投票率は30%台。そういう社会の雰囲気を作り出してきたのは私たちの責任です。ドイツや英国、スウェーデンは若い人たちを含めて国民の政治意識が高い。欧州では、その時の選挙に出ている人たちを題材にした主権者教育が積極的に行われています。家庭においても子供の時から政治の話をするのが当たり前になっています。ところが日本の家庭で政治の話をしても、あの議員がスキャンダルを起こしたとか、ワイドショー的なことしか話題になりません。そこには議員に対するマイナスイメージしか生まないため、若い人も「投票に行ってもしかたない」という結論を下してしまうのです。これは若い人たちの責任ではなく、私たちの世代がそうしてしまったのです。いま、文部科学省で主権者教育推進会議が始まっていますが、主権者教育が必要だという認識を高めていかねばなりません。
 連合でも若い世代に労働組合や連合の役割を直接、伝えるために、2005年から「連合寄付講座」を全国の大学で展開しています。労働教育だけでなく、政治の話もしていきます。私はとにかく若い人たちにはがんばってほしいと思っていますので、こうした寄付講座を含めて、若い人たちと多く接点を持っていくよう心がけています。
 後継者問題についても、トップになったときから常に、その先のことを考えています。

レベル問わず野球観戦が大好き 3匹の犬の散歩を毎朝、妻と

--- 野球がかなりお好きと聞いています。

 野球は米メジャーリーグから日本のプロ野球、アマチュア野球まで見ることが大好きです。レベルの高い野球だけではなく、草野球でも散歩の途中などについ足を止めて、グラウンドに見入ってしまいます。「あのピッチャーはなかなか筋がいい」なんて、論評しています。
 私自身もプレーは下手だったのですが、どうしても野球に関わりたいと思って、大学ではマネージャーをやりました。卒業後、新日本製鉄に入ってからも、社会人野球のマネージャーがやりたくて、志願し、運よく、入社2年目から広畑製鉄所(兵庫県姫路市)で2年間やらせていただきました。社会人野球のレベルの高さには感激していましたが、2年目に都市対抗野球でベスト4まで進出したときはとても幸せでした。当時は阪急ブレーブスに入った弓岡敬二郎氏や広島カープの正田耕三氏、早稲田大学の監督になった応武篤良氏らがいました。
 あと、趣味といえば、犬の散歩です。犬が大好きで現在、3匹飼っています。ゴールデンレトリバーとシーズーとチワワ、大・中・小そろっています。散歩のリズムが合わないので、大変ですけれど、楽しいですね。一番多い時には大型犬を6匹飼っていました。妻が無類の犬好きで私も引き込まれたのです。多摩川沿いですから、犬の散歩にはきわめて良いロケーションです。早起きして、妻と一緒に散歩します。朝1時間弱、これは健康にもすごくいいです。
(左)神津里季生(こうづ・りきお)氏<br />
(右)大村泰
(左)神津里季生(こうづ・りきお)氏
(右)大村泰
(掲載日 2018年12月19日)

35周年記念「トップインタビュー」