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トップインタビュー

 「トップインタビュー」は企業や大学、団体のリーダーにお会いし、グローバル化や第4次産業革命、DX(デジタルトランスフォーメーション)、ESG(環境・ソーシャル・ガバナンス)、働き方改革など、ビジネスパーソンや学生のみなさまが関心のあるテーマについて、うかがってまとめる特別コンテンツです。さまざまな現場で活躍するトップから、いまを読み解き、未来に向けて行動する視点やヒントを探って、お届けします。

顧客ニーズ解決する新モデルに挑戦 持株会社体制とアライアンスで迅速経営
静岡銀行 頭取(全国地方銀行協会 会長) 柴田 久様Adobe PDF file icon

柴田 久(しばた・ひさし)氏
柴田 久(しばた・ひさし)氏
 トップインタビュー第46回は、健全性と先進性を兼ね備えた経営で定評のある静岡銀行代表取締役頭取で、全国地方銀行協会会長を務める柴田久様です。コロナ禍で影響を受けた地元経済を支えながら、統合・再編が進む地方銀行界にあって、持株会社体制への移行や山梨中央銀行との包括業務提携(アライアンス)などを通じて地銀の新しいビジネスモデル構築に挑戦するリーダーです。今後の地域金融機関の在り方や将来像について語っていただきました。
※2021年10月29日インタビュー当時の内容をもとに構成しています。
プロフィル
柴田 久(しばた・ひさし)氏 慶應義塾大学商学部卒業後、1986年に静岡銀行入行。理事経営企画部長、執行役員呉服町支店長、常務執行役員首都圏営業本部担当営業副本部長・首都圏カンパニー長兼東京支店長などを経て、2017年に代表取締役頭取に就任。2021年6月から全国地方銀行協会会長を務める。1963年生まれ、静岡県出身

--- 新型コロナウイルス感染症の影響が続くなか、中期経営計画が最終年度(2022年度)を迎えます。コロナ禍を踏まえ、地方銀行の役割や在り方についてお考えをお聞かせください。

 地域経済や地域社会の今をしっかりと支えるとともに、地域の未来にコミットしながら、地域の発展を最優先で考え、取引先の課題解決を支援する。この考え方を基本に、現在の中期経営計画(2020~2022年度)を策定しました。長期的には「地域の成長をプロデュースする企業グループ」を目指すこと、そのために足元の3年間では「課題解決型企業グループ」に変革することをビジョンに掲げました。
 ちょうど、その計画のスタート時期と重なって、新型コロナウイルス感染症が広がり始めました。地方銀行として地域を支えなければならない、取引先のニーズを踏まえてしっかりと支援しなければならないとの強い思いを持って、地域・お取引先の課題解決支援に取り組みましたが、それは中計で目指す姿の実践そのものであったと感じています。さまざまな業種で活動の制限や自粛が広がり、取引先が資金繰りを含めて大変厳しい状況に置かれるなか、官民が一体となって、ゼロゼロ融資を含めた資金繰り支援に力を注ぎました。これにより比較的、倒産件数は抑えられています。
 これは静岡銀行に限った話ではありませんが、コロナ禍では地域の課題解決と金融サービスの安定的な提供の両面で、地方銀行の存在価値、存在意義が、見直されたと感じています。

資金繰り支援・事業承継・人材マッチングで支援

--- 具体的にどのような支援が、地域の課題解決に役立つと感じられましたか。

 1つ目はやはり資金繰り支援です。コロナ禍では自粛の影響を強く受けた、旅館・ホテル、小売業、サービス業、飲食業などの業種を中心に支援に注力しましたが、これらの対面営業に制約を受けている業種にはまだコロナの影響が残っています。
 こうしたなか気を付けなければならないのは、むしろ景気が良くなってからの方が倒産が増える傾向にあることです。景気が悪い時は、仕入れや投資などを極力抑えることで資金繰りを何とかしようと考え、事業を回すことができます。しかし、景気が上向いてくると仕入れを増やさなければならないため、そこで資金がスムーズに供給されなければ、結局は資金繰り破綻に陥ってしまいます。景気が回復軌道に入ってくるこれからの時期こそ、地域金融機関として、経営改善の支援もしながら資金繰りをしっかりと支えていかなければならないと考えています。
 2つ目は事業承継支援です。昨年1年間、倒産件数が少なかった一方で、中小企業などの休廃業・解散は大きく増加しました。全国の倒産が8,000件弱であるのに対し、休廃業・解散は4万9,000件に上りました。なお、休廃業先の約6割が黒字経営、約6割の経営者が70歳以上という現実があります。事業承継は各地域で共通する中小企業の大きな課題です。地域金融機関として、地域経済の活力を維持する観点からも、M&A(合併・買収)などの手法を選択肢に入れながら事業承継を支援していかなければなりません。
 3つ目は人材マッチングです。人手が足りないという話を聞くことが非常に増えました。「コロナが収まったら人材不足になる」という話は以前からあったのですが、いま、取引先を回ると人手不足、中でも経営層から技術職にいたるまでの「即戦力人材」が足りないという話が増えています。
 静岡銀行では昨年、有料職業紹介事業の許認可を取得し、銀行本体で人材紹介ができるようになりました。地域のなかで活躍できるスキル人材を有する企業と不足している企業とをマッチングさせ、地域企業が円滑に事業運営し、新規事業や構造改革に挑戦することができるよう、人材マッチング事業に力を入れています。すでにスター精密やヤマハ発動機といった静岡県内の大手企業と連携協定を結び、それぞれの企業で技術やノウハウを持っている方々のセカンドキャリアを活かす取り組みを始めています。
柴田 久(しばた・ひさし)氏

ビジネスモデルが金融機関の将来像を決定 顧客ニーズにグループの力を結集

--- 超低金利下で、地方銀行をはじめとする地域金融機関の統合・再編が進んでいます。政府・日銀もそれを後押ししていますが、地域金融機関の将来像について、どうお考えですか。

 地域・お客さまが直面する課題やニーズは、それぞれの地域金融機関が根差す地域や置かれた環境によって異なります。このため、各地域金融機関に求められる役割はそれぞれ異なり、どのようなビジネスモデルを志向していくのかも自ずと違ってきます。新しいビジネスモデルを創っていくうえで、自前の経営資源で対応できるのであれば、何も経営統合する必要はありません。人材やノウハウなどの面で経営資源が不足している場合に、他の金融機関、あるいは異業種企業と統合または提携する選択肢もあるということです。
 統合や提携は将来のビジネスモデルをどう創っていくか、そのための手段であって、目的ではありません。
 地域金融機関同士が統合することもあれば、アライアンス(提携)を組むこともあるでしょう。自らのビジネスモデルをどう創っていくのか、地域やお客さまのニーズにどう応えていくのか、その考え方によって対応は異なるのだと思います。

--- 静岡銀行は明確に、自らの経営資源で対応する持株会社化の方向を打ち出しました。

 静岡銀行では2005年にスタートした第9次中期経営計画から「グループ会社の連携と自立」をキーワードに、グループ経営の強化を図ってきました。当時、グループ会社の経常利益は合計で29億円と30億円に満たない水準でしたが、グループ各社が自ら工夫しながら成長を目指す経営戦略を進めた結果、足元の2020年度には100億円を超える規模まで成長しました。しかしながら、将来にわたって持続可能なグループ経営を見据えると、もっと大きな収益をあげられる企業グループになる必要があります。現在、連結ベースで13社のグループ会社がありますが、地域から求められる静岡銀行グループの役割を考えると、銀行を含む今のグループ会社のメニューだけでは足りないと感じています。
 2021年11月から改正銀行法が施行され、規制緩和で銀行に認められる業務範囲が広がりました。いままでの規制緩和は銀行本体の業務を広げていくという考え方でしたが、今回は銀行の兄弟会社、銀行との間で一定のリスク遮断がされているグループ会社や子会社にも幅広い業務が認められました。こうしたなか、静岡銀行グループは持株会社体制へ移行し、グループ経営の一層の強化を図るとともに、銀行と並列に並ぶ兄弟会社として新たな機能を持つ会社をつくりながら、地域の課題に応えていこうという流れになったのです。
 なお、私たちが考える持株会社体制は、金融機関同士が経営統合して持株会社を作る経営戦略とは異なり、現時点において持株会社の傘下に他の金融機関を入れることは想定していません。

--- 確かに持株会社体制の方が、地域のニーズに即応できるように感じます。どのような業務の新会社をお考えですか。

 地域商社や銀行が持つシステムを外に売るシステム販売会社、投資専門会社、サービサーなど、候補はいくつもあります。先ほどの人材紹介業務も一つの会社を立ち上げて推進する手法が考えられます。他行では、まちづくり会社を設立したところもあります。
 静岡銀行グループは来年10月1日に持株会社体制へ移行し、その後、新たな事業を具体化していく考えです。いま、全国の地方銀行が、規制緩和を活かし、さまざまな工夫を凝らしながら、それぞれの地域における活性化施策を進めていると感じます。私たちも地域の課題を解決するためのメニューをさらに増やす必要があります。

アライアンスで広域圏に対応 スピード感をもって成果積み上げ

--- 持株会社化の戦略とは別に、山梨中央銀行と包括業務提携(アライアンス)を結びました。

 山梨中央銀行とは、2018年に地方創生に関する連携協定を結び、「県境のない地図」を作りました。観光や防災、あるいは今般のコロナ感染症への対策など、県という行政単位ではなく、広域圏での対応が必要との考え方に基づく取り組みでした。これが両行の連携による最初の試みでした。
 その後も、山梨中央銀行の関光良頭取と地方銀行の将来などについて意見交換する機会を度々設けるなか、コロナ禍という環境変化がアライアンス締結に向けた契機となりました。コロナ禍では、ウェブ会議の活用が進み、これまでは月に1、2回の面談に限られていたものが、週に2、3回ミーティングできるようになりました。まさにコロナが両行の協議を後押しし、話が一気に進みました。
 アライアンスを本格的に検討し始めたのは、昨年の6月、7月頃でしたが、相当なスピード感で話がまとまり、提携を発表した10月28日には、10の事業分野での連携をスタートさせることができました。

--- 提携から1年たちました。成果は出ていますか。

 すばらしい成果が現われ始めています。当初は5年間の累計で100億円の提携効果を両行であげていく構想でしたが、今年の9月末までの11カ月間で約29億円の効果がすでに顕在化しています。進捗率でいえば30%近いです。
 静銀ティーエム証券山梨本店を新設し、証券口座数や証券取引が順調に増加しているほか、シンジケートローンの共同組成やアライアンスの記念私募債、生命保険の共同開発商品の販売などが着実に進んでいます。さらには、静岡銀行が東京で手掛けているストラクチャード・ファイナンス部門(仕組み金融)での成果も出ています。不動産ノンリコースローンの共同組成や、静岡銀行のストラクチャード・ファイナンスにおける貸出等の資産の山梨中央銀行への譲渡など、さまざまな取り組みの成果を合算したものです。ストラクチャード・ファイナンス部門には山梨中央銀行から人材を受け入れ、案件審査やリスク管理のスキル・ノウハウ共有にも努めています。
 また、今年8月には、中部横断自動車道が全線開通し、山梨と静岡の間が飛躍的に行き来しやすくなりました。時間短縮で人や物の動き、流れが大きく太くなり、実際に変化が起き始めています。トップダウンで決めた施策以外にも、さまざまな流れができ、各分野のメンバー同士で交流が進んでいます。10の事業分野のほかに、当初は想定していなかったグループ会社同士の連携などの番外編も現れはじめ、検討が進んでいます。まさに「自走し始めたアライアンス」と言えます。今年4月に開催した新入行員研修で両行の新入行員が一緒になって地方創生に関するプランを作ったり、来春採用者の内定式でも交流イベントを開催するなど、行員同士も階層ごとに良い関係が築けています。 山梨中央銀行からは本当に多くの気づきをもらっていると感じています。

--- 成果が出るのが速いですね。「時間をかけながらじっくり成果を出す」とおっしゃると思っていたのですが・・・。

 経営統合よりもアライアンスの方が効果の顕在化が速いです。私はこの静岡・山梨アライアンスを日本一のアライアンスに育てたいと思っています。まずは、しっかりと収益をあげて実を結ぶことが、その次の仲間づくりに広がっていくと考えています。現在進めている10の事業分野もそれぞれの事業分野の単位で見れば、山梨中央銀行だけでなく、ほかの金融機関と提携することも可能です。金融はアンバンドル化(細分化)が進むと言われますが、より小さな事業単位に細分化され、それぞれの分野ごとに多様なプレイヤーと一緒になって、顧客ニーズの解決を実現していく姿を将来像としてイメージしています。そのパートナーは金融機関であったり、異業種であったりする。そうしたアライアンスを通じて銀行グループとしての成果をあげていく。そのようなビジネスモデルを志向していくことになるのではと思っています。
柴田 久(しばた・ひさし)氏

--- ただ、アライアンスには相当な信頼関係が必要ですね。

 その通りです。だからこそ、目先の収益だけを追いかけたら、多分うまくいかないと思います。たとえば、ノウハウの提供や人材教育について、費用はいくらなど金銭の話になると、恐らくアライアンスは途中で止まってしまいます。まずはそれぞれが相手の成長や利益を考え、トータルで収益をあげることを最優先に考えることが、アライアンスの成功とお互いの信頼関係につながります。なお、静岡銀行の持株会社構想に関して、山梨中央銀行がその傘下に入るのではないかと聞かれることが度々ありますが、現時点においてそうした考えはないと明言しています。

DXは目的でなく手段 シリコンバレー拠点開設でイノベーション喚起へ

--- DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みは。

 DXも手段です。DXをテコに、ビジネスモデルを変革する、あるいは企業の考え方、仕事のやり方を変えていくことが必要です。静岡銀行では、フィンテックなどの新たなテクノロジーを取り入れ、外部とも柔軟に連携できるITインフラの構築を目指し、約15年かけてシステムのオープン化を進めてきました。今年の1月には次世代システムが稼働し、大手金融機関で初めて勘定系のオープン化を実現しました。これにより、オープン化の取り組みが一区切りついたところです。
 ここから先の10年はまさにDX戦略推進のステージに入ります。肝になるのは情報系だと考えています。現在、静岡銀行グループが持っている情報は一元的に管理されているわけではなく、これは多くの金融機関が同じように抱えている課題でもあります。それを、あらゆるチャネルを通じて、いつでもどこでも同じ情報が見られる、活用できる環境を整え、かつ、その情報をいかに活用していくかが課題となります。
 足元では、DX戦略推進室が、5つの重点テーマを掲げてDXに取り組んでいます。①非対面チャネルの強化②法人分野のチャネル拡充③グループ一体での情報利活用④事務サービスの効率化⑤デジタル人財の育成――の5つです。
 なかでも進捗が早いのは、チャネルのDXです。店舗の集約や機能の見直しなど、店舗網の最適化を進めていくほか、スマートフォンアプリの機能を拡充したり、コンタクトセンター(従来のコールセンター)において、電話だけでなくチャット等でも相談受付ができる体制を整え、将来的にはセールス機能を持たせることなどを考えています。

--- DXは手段であって、事業環境は整うけれど、それだけではイノベーションは起きないということだと思います。イノベーション、つまり本当の成長につながる取り組みについては、どうお考えですか。

 今年の11月に、地方銀行で初めて、シリコンバレーに駐在員事務所を設けました。主な狙いはシリコンバレーの先端技術やベンチャービジネスの情報収集、ネットワーク構築です。それにくわえて、ベンチャー企業に対するデット・ファイナンス(社債発行や銀行借入などによる資金調達)を得意とするシリコンバレーバンクなどもあり、こうしたノウハウを学び、吸収したいと考えています。
 日本では、ベンチャー企業に対する融資はなかなか難しいとされています。旧来型の銀行員は、ある一時点の貸借対照表や損益計算書を用いて企業の分析を行う習慣があるからです。こうした習慣にあまりにも慣れすぎていて、そのやり方にこだわっている間は、ベンチャー企業を育てることは難しいと思います。これまでの審査基準ではなく、技術やサービスの現在価値、将来価値をしっかりと評価し、投資できるような人材を育成していかなければなりません。現地に派遣している行員には、シリコンバレーで実際にファンドの人たちと一緒に仕事をして、どのような会社だったら投資できるのか、その判断基準や目利き力を養ってもらいたいと考えています。ベンチャービジネスは、今後10年くらいかけて成長ドライバーの一つに育てたい事業であり、そのための先行投資として将来を担う人材を現地に派遣し教育しています。このメンバーが10年後には中心となって事業を牽引してくれることを期待しています。
 世界の最先端をいくシリコンバレーに学ぶならば、これから日本でも「オープン」「プラットフォーム」「アンバンドル」などの概念がキーワードになると思います。事業や経営はアライアンスで進めていくことになると予測しています。

環境に対する意識づけも地銀の役割 最新動向を地域に発信

--- SDGs(国連の持続可能な開発目標)、特にカーボンニュートラルにはどう取り組んでいますか。

 現在、全国地方銀行協会の基本問題調査会(頭取級の研究会)において、「地方銀行の気候変動問題への対応」をテーマに掲げ、一年かけて取り組んでいます。気候変動問題への対応は、今年の11月にCOP26(国連気候変動枠組条約締約国会議)が開かれるなど、世界中が最も注目しているテーマだと思います。協会としても、将来に向けて持続可能な社会をつくっていくため、この問題への取り組みが必要不可欠なものと認識しています。常に最新動向を注視し、地域企業における技術革新のための設備投資や環境配慮型の工場建設などの対策を、資金面でサポートしていかなければなりません。時代の変化に乗り遅れてはならず、将来を見据え、必要な投資をしっかりと支えていく必要があります。
 しかし、その一方で、地域の中小企業における気候変動問題に対する意識の浸透はまだ道半ばの状態にあるのが実情です。世界の潮流や国内の最新動向に対してアンテナを高く張り、先取りした情報をタイムリーに地域に還元していくのも地方銀行の重要な役割だと考えています。その意味では、地方銀行が気候変動問題に関する行動宣言をすることが、地域の企業に意識を高めてもらうことにつながると思います。
 静岡銀行では、今年の10月、サステナブルファイナンスを2030年までに2兆円、そのうち環境関連ファイナンスについては1兆円実行するという目標を発表しました。このほか、2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度対比で60%削減するという思い切った目標もすでに発表しています。これらは地域への意識づけが必要との判断からです。
 これは、環境だけでなく、DXでも同じことが言えます。情報発信などでリードしていくことは地域金融機関として大切なことです。

--- SDGsに関連して、透明性など公正という面で、マネーロンダリングなどに関する国際組織、金融活動作業部会(FATF)が日本の地域金融機関の取り組みが不十分と指摘しました。

 このテーマは、全ての金融機関がしっかりと対応しなければならないものです。まだまだ工夫できることはあると思います。一つの金融機関だけで行うのではなく、全ての金融機関が一緒になって対策を進めることで、全体のレベルも上がりますし、経費の抑制にもつながります。たとえば、継続的顧客管理については、すでに預金口座を持つお客様に対して定期的に本人確認を行う取り組みを共同で実施することを検討しています。これは競争分野ではありません。競争分野と非競争分野を明確に分け、非競争分野についてはむしろ金融機関が一緒になって取り組み、お互いの経費抑制や効率化を図っていくべきです。

迅速な情報収集手段を選択 健康のため朝夜と散歩

--- 情報をいかにして集めていらっしゃいますか。

 新聞も読みますし、インターネットのニュースでも情報収集をしています。特に日経電子版は、翌日の紙面記事が前日夜にはアップされるので、心の準備という意味からも確認しています。インターネットでは、上場会社の適時開示情報も関心を持って見ています。「あの企業がこういう内容の開示をした」という情報を、かなり早い段階でチェックしています。あと、SNS(交流サイト)も静岡銀行に関係するツイッターなどの情報には一通り目を通すようにしています。
 書籍は、頭取という立場になり、さまざまな方から頂く機会がありますので、種々雑多なものを斜め読みすることが多いです。いまはどうしても業務に直結する本を読むことが多くなりますね。テレビは、ニュース以外を見る時間がなかなかとれません。ただ、NHKの大河ドラマのように、皆さんがよく見ている番組は、見るように心がけています。今年の『青天を衝け』は、渋沢栄一が静岡にゆかりがあるものですから興味深く見ています。来年の『鎌倉殿の13人』でも物語序盤の舞台が静岡県ですし、再来年(2023年)の『どうする家康』ではご当地の徳川家康に脚光があたります。静岡県の観光振興につながることをぜひ期待したいですね。

--- 趣味について、お聞かせください。

 健康も考えて散歩するように心がけています。大型犬(ゴールデン・レトリーバー)を飼っており、犬の散歩を兼ねて、朝と夜、できるだけ歩数を稼ぐようにしています。一日1万歩が目標です。
 犬の散歩をしないと、なかなか目標に届きません。実は雨でまったく散歩できず、1,000歩に満たない日がありました。これにはさすがに愕然とし、それからは雨の日でも小雨であれば散歩するようにしています。毎朝およそ3,000歩、夜は少し遠回りのルートで4,000歩くらいですので、日常生活と合わせて一日1万歩の目標達成を心掛けています。
柴田 久(しばた・ひさし)氏

(掲載日 2021年12月14日)

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