NIKKEI Media Marketing

トップインタビュー

NMM 35th anniversary top interview

  • 第16回 東京電力ホールディングス 会長 川村隆様
 日経メディアマーケティングは2018年3月1日、おかげさまをもちまして会社創立35周年を迎えました。その記念プロジェクトとして、4月、お取引先様などとの絆(きずな)を深めさせていただくことを目的に、ウェブサイトを大幅にリニューアルしました。
 その目玉企画として、企業や各界のトップにインタビューをお願いし、みなさまにお届けする連載を始めました。グローバル化やデジタルトランスフォーメーションが加速するなか、ビジネスの革新や働き方改革に向け、今を読み解いて、未来に向けて行動するための視点やヒントを探っていきます。

変革への挑戦を続ける ラストマンが会社を強くする
東京電力ホールディングス 会長 川村 隆様

聞き手 日経メディアマーケティング社長
  大村泰
川村隆(かわむら・たかし)氏
川村隆(かわむら・たかし)氏
 トップインタビュー第16回は東日本大震災による福島第一原子力発電所事故で経営危機に陥り、現在、福島への責任を果たしながら経営再建を進める東京電力ホールディングスの川村隆会長です。2008年のリーマンショック後、深刻な経営不振にあった日立製作所の再建に子会社から復帰し、らつ腕をふるったリーダーが、最前線を退いた後、手腕を請われ、再び現場に戻った道で「ザ・ラストマン」(最終責任者)として見ているものは何か。東京電力ホールディングスが担う役割の先には、地球規模のエネルギー問題の克服、環境への配慮、世界中すべての人の暮らしへの貢献と、日本企業への警鐘がありました。
プロフィル
川村隆(かわむら・たかし)氏 1962年東京大学工学部卒、日立製作所入社。日立工場長を経て97年常務取締役電力事業本部長、99年代表取締役副社長。その後、日立マクセルなどグループ会社のトップを歴任し、2009年日立製作所代表執行役会長兼執行役社長兼取締役に就任。10年から代表執行役会長兼取締役、11年取締役会長。14年に相談役となるまで同社の再建を指揮。17年6月に東京電力ホールディングスの申し出を受けて現職。1939年生まれ、北海道出身

※川村氏の「隆」は旧字体(右側"生"の上に"一"が入ります)です。パソコン環境などにより、表示されない場合があります。

「稼ぐ」ことへの意識高まる なくなる「やらされ感」

--- 東京電力ホールディングスは2018年9月、「TEPCO統合報告書2018」を発行しました。会長は「エネルギー産業の未来を見据える」というタイトルでメッセージを寄せ、会長就任1年を振り返り、「取締役会と執行部門は良好な意思疎通と適切な緊張感のなかで経営課題への対処を進めることができた」と評価されています。

 統合報告書を発行するのは昨年に続いて2回目となりますが、全体像を見やすく、わかりやすいものに変えることができました。さまざまな実例や数字を入れ、たとえば、育児休職について、男性社員の2.1%が取得しているとか、企業としての業績や環境問題、働き方改革などへの対応について図表をまじえて整理しており、理解していただきやすくなったのではないでしょうか。
 社員の意識は変わってきました。企業が何のためにあるか、それが「稼いで社会に還元していく」ことであるということが浸透しているように思います。ESG(環境・社会・ガバナンス)は大切ですが、企業は付加価値を生まなければなりません。それを仕入れ先への支払いや社員への給料、株主配当、融資元への利子として、社会へ還元することで、社会が発展し、最終的には世界中の人たちの「貧困からの脱出」につながるのだと思います。
 社内の各部門がその付加価値を創るためにいま、何ができるか、それを自分たちで決めて、短期間でやり遂げるように動き始めています。自分たちで決めたことを自分たちでやる。そこには誰かにやらされているという「やらされ感」はなく、それで成果もでてくれば、これほどうれしいことはありません。

福島に対する責任まっとうへ、なお必要な「上乗せ」

--- やはり、現場の意識が決め手となるのですね。

 稼ぐために効率を上げるなど、目標を立てるようになります。成果がでてくれば、繰り返しがきくようになります。統合報告書では、経常利益はほぼ予想した通りに出せるようになったことを示すことと合わせて、新規事業や効率化など「上乗せ」が必要であることも明示してあります。原子力発電所の再稼働、再生可能エネルギーへの取り組みなど、福島に対する責任を果たすために、まだまだやるべきことはある、がんばらなければいけないということがわかると思います。目指す利益水準は高いですが、目標達成のためには、風力発電事業や海外事業など、これまでにやっていない事業を手がける必要があります。
東京電力HD連結業績

統合報告書

 企業の財政状態や経営成績などを表す「財務情報」と、「非財務情報」として経営戦略や経営課題、リスクやガバナンス(企業統治)、社会や環境問題に関する課題、貢献などをまとめた報告書。コーポレートガバナンス・コード(CGC)の改訂において、企業に求められるようになった開示情報。ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の広がりにより、作成し、公開する企業が増えている。非財務情報は単なる社会貢献の報告ではなく、それが将来の資源配分、事業・投資戦略につながり、企業や事業の価値を向上させるかを示す必要があるとされている。

100年先考え再生可能エネルギーを主力に 原子力も一定レベル

--- 再生可能エネルギーについては会長もかなり期待されていらっしゃいます。

 国の政策の基本の一つがエネルギーです。政府が方向性をつくり、その方向性が指針になるものと思っています。
 国の「エネルギー基本計画」では、2050年に温室効果ガスを80%削減するために再生可能エネルギーの導入を拡大して主力の電源となることを目指すとしています。
 ただ、この再生可能エネルギーは水力や地熱など以外は、(自然条件などに左右される)変動電力ですから、再生可能エネルギーだけでは全体をカバーできません。電力の変動を補うための「調整」できる電源を残しておかないと、産業界も一般消費者も困ることになります。その調整の役割には火力が適しており、火力は一定程度必要です。降雪時など、太陽光が発電できなくなったときに火力で補うということです。また、原子力もベース電源のひとつとしておく必要があります。一方で、100年後を考えると、化石燃料の石油がなくなり、火力燃料が枯渇する可能性があります。長期的にエネルギーを考えた時には、脱炭素電源として再生可能エネルギーはもちろんのこと、原子力も一定程度残す必要があるのではないでしょうか。

洋上風力発電へ、いま出発点 銚子沖で実証試験を実施

--- 東京電力としての具体的な取り組みはいかがですか。

  利益水準の拡大に向けて、再生可能エネルギー、特に風力発電事業に取り組むことを計画しています。陸上にはすでに相当数の風力発電があり、たとえば静岡県の伊豆半島にはたくさんの風車が回っています。それでも海上のほうが風況はよく、千葉県銚子沖で実証試験を行っています。本当に安定した電気が作れるのか、設備の耐久性や安全性はどうかということを確認してから、本格的なプロジェクトにしようとしています(※)。銚子沖が出発点となり、こうした地点が東北にあるかもしれないし、北海道にもあるかもしれません。必ずしも、東京電力だけの仕事にはならないかもしれませんが、いろいろ広げようとしています。

※2019年1月から商用運転を開始することを、2018年11月27日に公表

水もガスもまとめて供給、「Utility3.0」へ融合を設計

--- 今年9月には北海道胆振東部地震で広域停電が話題になりました。公益事業としての役割が重要です。

 停電は2日でおおよそ復旧しましたが、停電と断水は生活に大きな影響を与え、一番困ります。電力会社はいうまでもなく公益事業です。最近では「Utility(公益責任)3.0」とよく言われていますけれど、電源の分散化や脱炭素化、人口減少、デジタル化などの進展もあり、ガス・水道など他産業との連携や融合が進むことになりそうです。Utility1.0(電気事業の誕生と急激な発展)から、現在はUtility2.0(自由化による発電・小売りの競争)に入り始めたばかりですが、Utility3.0では2050年ごろまでには電気と水やガスなどを一緒に運営しているかもしれません。市民の生活で一番大事なところをすべて担うことになります。その時、どこの会社が一番停電が少ないかとか、どこの会社が一番断水がないかとか、そのように比べられるようになっていくでしょう。ユーティリティへの強い意識を持ったところがバラバラではなく、まとめて責任を持つことがいいという考えで、Utility3.0を設計していくことになると思います。
  今後は、現在の発電所や送電網、配電網を前提としながら、小さな地域ごとにエネルギー網を作っていく形になると思います。家庭の小さな太陽光も使うし、EV(電気自動車)も使う。停まっている車が地域の中に何台あって、その中のバッテリーにはいくら電気がたまっているかを、地域の管轄者がチェックして、そこからメインの電気を供給する。家庭や地域の町工場などいろいろありますし、病院などもあるでしょう。小さな“ミニグリッド”が、従来の電力会社の配電網のなかにできて、それは従来に比べると、停電が少ないとか、そういう形で町がだんだん良くなっていくのではないかと思います。
 そして、移動や暖房、調理や加熱に電気が使用されることが増えて、効率の点から社会のエネルギー消費総量も下がり、地球温暖化防止にも大いに貢献できると考えています。
川村隆(かわむら・たかし)氏

ベンチャーと組み、アジアでミニグリッドに参画 ノウハウ確立へ

 こうした地域では小さな会社が活躍するかもしれません。サーバーや小さなコンピューターを持って、地域を管理するような、きめの細かな仕事です。電力会社以外の参入もあるでしょうし、東京電力の子会社、孫会社かもしれません。地域の情報を集めて、発電できるところから電気を集める、昼間であれば屋根の上の太陽光、夜間は自動車から集めて配るとか、ミニグリッドの仕事が出てくると思います。まだ成熟した事業にはなっていませんが、ドイツでは例があります。そういうことを我々も日本でやっていかなければいけないのではないでしょうか。
 地域ごとにエネルギーを自給できるようになると「まちづくり」が変わります。これからは、点々と住んでいたところが、街中に人を少し集めていく方向です。特に、地方は人口が減っています。地方自治体としてはバラバラに住んでいる人たちをサポートするのは大変ですから、住居はある程度、街中に集めて、畑に行く人は自動車で出かけるということがありえます。こうして新しくできた地方の町に電力と水道を供給するには何がベストかを考えることになります。大きな電力会社が担うべきかどうかはこれからの課題です。
 むしろ、電力会社が開拓しなければいけないのは東南アジアの未電化地域などかもしれません。密林などの中に、ミニグリッドをポツポツと作ろうとしています。東京電力もベンチャー企業と組んで、運営会社をシンガポールに設立しました。シンガポールを東南アジアの拠点に、若い社員が中心となり、フィリピンなどで計画を進めています。
 日本のような先進国と、これから社会資本を作っていく発展途上国とでは、順番が違います。発展途上国では、ミニグリッドを先に作ってから電力会社が配電網などを追いかけてつくる形になると思います。東南アジアでは携帯電話の充電もできない地域があります。そこでは太陽光とバッテリーを組み合わせて小さい電源を作り、充電できるようにします。さらに蓄電した電気を、川の水からきれいな水を作ることなどに利用できるようになれば、大きな貢献ができるのではないでしょうか。
 また、中国は広域経済構想「一帯一路」と同じ流れのなかで、中国から東南アジア、中東、そしてアフリカ、欧州、さらには北米、南米と世界を繋ぐ送電網を整備し、電力を融通しあう構想も公表しています。日本はまだ、韓国や中国などと結ぶ送電線すらありませんが、日本企業もこうした構想に参画すべきという声はあります。まだ、アイデア段階で、中国は自らが主導したいと考えているようですが、ゴビ砂漠などで風力発電所を建設し、その電力を自国のみならず、ヨーロッパに持っていきたい。発想としてはありえますよね。

SDGs、当面3つの目標 「エネルギー」「技術革新」「まちづくり」

--- ESG経営やSDGs(国連の持続可能な開発目標)について、会長は東京電力の社会的使命と重ね合わせて、その意義を強調されています。

  SDGsは、やはり会社が何のためにあるのかを考えるなかで、政府やボランティアなどではやりきれないようなことが社会には残っていることを認識した日本企業の共通意識になっています。東京電力としては国連目標17のうち、(7)「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」(9)「産業と技術革新の基盤をつくろう」(11)「住み続けられるまちづくりを」の3つについて、特に貢献していくことができると考えています。「貧困をなくそう」が(国連目標の)「1番」ですが、それは企業が稼ぐ力をつけて社会に還元するということです。東京電力としてはそれをベースに置いて、加えて3つを選びました。企業の存在意義をあらためて意識すれば、これまで以上に社員に元気が出てくると思います。

育児も人材育成のきっかけに カイゼン活動で次々とラストマン

--- 人材育成についてのお考えをお聞かせください。

 会社には人材育成に関係していることがすごくたくさんあります。たとえば、育児も人材育成につながるものと考えています。育児休職から職場復帰するにあたっては、子育てと仕事の両立が必要になりますが、そのときに在宅勤務制度をうまく利用して仕事に取り組むことで、いろいろなことができるようになります。「働き方改革」とは、自分の時間を上手にバランスよく使うことで、ある種の人材育成です。人生100年時代のいま、勉強しようと思えば、大学教授の講義もだいたいインターネットで聴講できる時代です。
 もう一つ感じているのは東京電力が続けている「カイゼン活動」の効果です。2015年1月から始めていますが、10人くらいの小さなグループでテーマや目的・目標を決めて、日々の業務の改善を進めていく活動です。良い成果がでたグループが半年に1回、発表するようにしています。何かをやろうとするためには、グループのなかにリーダーが必要です。それは課長とか役職者ではなく、社員のなかから、「このテーマであれば」ということで自然と選ばれる方が多いようです。
 私は「ラストマン」という言い方をしているのですが、リーダーというのはグループに目標を示し、チームを動かし、最終的に意思決定し、その結果に責任を持たなければなりません。活動のなかで、ラストマンの心構えができ、その経験を備えた人材が組織のなかで増えることになります。グループもテーマもリーダーも原則、上の人が決めているわけではありません。技術的に専門ではない社員がラストマンになったりすることもあります。こうした社員がだんだんと組織の上の方に行くと良いリーダーになっていくわけです。これが一番良い人材育成と私は思っています。

ザ・ラストマン

 1999年7月23日、羽田発、新千歳行きの全日空のジャンボ機(B747)が包丁を持った犯人にハイジャックされた。同機に乗り合わせた非番のパイロット、山内純二さんはコックピットのドアを体当たりで開けて操縦かんを握り、間一髪のところで旅客機(乗客・乗員500人超)を救った。実は川村会長はこの飛行機に乗り合わせ、事故後、パイロットに「機長、あなたはザ・ラストマンですね」と感謝の言葉を述べると、「ああ、そういう役割を私は図らずもやりました」とおっしゃったという。川村会長はとっさにでた、和製英語というが、最後の責任を担うことの重さを十分、理解した発言だったと推察できる。川村会長は自らの著書タイトルに採用している。
 川村会長は今回のインタビューのなかで、「最近、マクロン仏大統領を『the lastman standing』と評した『Newsweek』の記事をみつけ、これは本当の英語だったのだと思いました。私は喜んでいるんです」と笑っていました。トランプ米大統領などが国際協調や自由貿易主義などを踏みにじりかねないなか、マクロン大統領こそが「ザ・ラストマン」として、自分の足で立って、最後の一人としてがんばっているという内容だったそうです。
 私がラストマンという存在を感じたのは59歳のとき、いまから20年前ですが、ラストマンが小さい組織の中にそれぞれ入るようになると、会社はすごく強くなると思っています。いま、東京電力はそれをやっている最中です。ラストマンがすべて社長になるわけではなく、きっと、運のいい社員が社長となり、そうでない社員は外に飛び出すかもしれません。こうした社員がこれから数多く出てくると思います。それはそれでいいと思っています。それくらい社員が自分の行く末を真面目に考えてくれれば、こんなにいいことはないです。

35歳、大学再入学のすすめ なんなら他の企業へ修行も

川村隆(かわむら・たかし)氏
 一つの会社でずっと働いていると、視野が狭くなることがあります。これからの世代は35歳ぐらいのとき、もう一度、大学に2年間戻るとかすればいいと思っています。大学で学んだことはそのころには擦り切れてしまっているでしょう。そういうことができる時代です。今後は定年が延びて、今よりも長く働くようになると思いますので、途中でもう一度、勉強に行くのはいいですね。なんだったら、他の企業に勉強に行ってもいいくらいです。こうした働き方を自分で意識して実践していく世の中に変わっていくでしょう。会社側もある程度、プログラムは提供しますが、会社の枠からはみ出す社員がでてくると思います。

「大過なし」は当たり前 プロセスからサービスまでトップが自分で考える

--- リーダーとして心がけていること、信条のようなものがあったら教えてください。

 いま、日本の中を見渡した時、リーダーに「変革への挑戦」が足りないと思っています。いまのままでいいと思っているリーダーが案外多く、順番で社長になったような人たちで、無事に自分の任期を過ごし、バトンを次の人に渡せばそれでいいくらいに思っているのではないでしょうか。これでは社会は強くならないと思います。日本はだんだん人口が減っていきますし、何もしなければ、衰退してしまいます。特に古い会社のトップにはがんばってもらいたい。「任期中、大過なく過ごしました」などと言ってもらいたくありません。大過なく過ごすなどというのは当たり前のことです。これだけみんな基礎ができているのですから、大過があっては困るわけです。
 リーダーに必要なのは「チャレンジ・フォー・イノベーション」です。技術的なことだけではなくて、いろいろな意味でプロセスから資材調達、ファイナンスなども含めて、「変革への挑戦」をいつも意識した、自分で考えるリーダーにならないといけません。マネージャーはどうやるかを考える人ですが、リーダーは何をやるか、自分の組織では何をできるようにするかを考える人なのですから。

危機はまた来る いまこそ本当の元気を 新しいことを始めよう

 リーマンショックから10年たちました。そろそろ次の危機に備える必要があるのではないでしょうか。中国や米国が少しおかしくなると、前回よりも大きな危機となって襲ってくる可能性があります。現在、日本は少し景気がいいように見えるのは金融政策でなんとか「ぬるま湯」にしてくれているからです。ぬるま湯の分だけ、株価が上がって、金融でジャブジャブにして見かけを良くしています。その間に本当の元気を出せと、企業は言われているわけです。
 せっかくぬるま湯にしてくれているのに、変革への挑戦が足りないと思います。東京電力はいろいろ工夫をしています。成果はこれからですけれど、大切なことはお客さまが買ってくれる事業なりサービスなりをきちんと考え出すというところです。先ほど話したような、洋上で風力発電をするとか、ミニグリッドを手がけるとか、これまでにないことを始めようとしています。リスクも見ながら、挑戦するということが大事です。前の人たちがそうやってプロセスを確立したから、自分もそれで行きますというだけではダメです。
 日本はまだ、金利ゼロで、戻せないままでいますから、金利を正常に戻し始めてきた米国より打てる対策が一つ少なくなっています。その時に持ちこたえられなければいけないわけで、持ちこたえるための体力を社内でつけておかなければいけません。あと2、3年くらいのうちに次の危機が来てもおかしくはないという気がしています。

何回も勉強し直す機会をつくる 長い人生、自分磨き忘れずに

--- 若い世代へのエール、メッセージをお願いしたいと思います。

 これからの若い人たちは何回も勉強し直すチャンスが出てくると思います。東京電力にも、たとえば育児休職をとって、復職した後にチャンスを掴み、出世している人もいるし、上がってくる人がいるということがわかりました。自分を磨いていく人たちにはいろいろな道があります。一つの会社の中で同じ部門で静かに過ごし、足を洗って行くということではなくて、いいと思います。何でも自分で決めてやることができる世の中になったし、たぶん、若い人は75歳ぐらいまで働かせてもらえると思います(笑)。いろいろなことを考えながら、途中で自分を磨くということを忘れないで欲しいです。

スキーを細々と、同年代の趣味仲間大切 今季は安比とニセコ?

--- 趣味やリフレッシュ方法をお聞かせください。会長は2015年5月、日本経済新聞に「私の履歴書」を執筆されたとき、シニアライフをこれから楽しみたいと話していました。

 いま78歳です。80歳を過ぎたらシニアライフを楽しみたいと思っています(笑)。趣味のひとつ、スキーは途中で中断してはいけないから、細々と続けています。今シーズンも何回かいけるかなと思っていますが、安比高原(岩手県)と、うまくいけばニセコ(北海道)に行けるかもしれません。そう世の中は甘くないでしょうが(笑)。続けておかないと、趣味友だちというのもいますから、遊んでくれなくなってしまうと困りますよね。スキーのメンバーは大体、トップを経験したような方たちです。一緒にやるのは年寄りじゃないとダメです。ゴルフにしても、あまり若い人とやるとおもしろくないでしょう。若い人はこんなに飛ばして、我々も昔はあのくらい飛ばせたと思いながら、これぐらいしか飛ばないわけでしょ。だんだん同じくらいの歳の人と遊ぶことが増えるようになりますね。
 スキーではトレーンという滑り方があるのですが、最初に先生が滑って、その跡をたどっていきます。最近はもう8回ぐらい回るとついていけなくなり、先生のシュプールから外れてしまいます。やっぱり足が弱っているのですね。年を取っても仕事を続けているとそういう目にあうのです。
(左)川村隆(かわむら・たかし)氏 (右)大村泰
(左)川村隆(かわむら・たかし)氏
(右)大村泰
(掲載日 2018年12月12日)

35周年記念「トップインタビュー」