イベント取り込み、にぎわい演出 店舗改装加速、顧客志向鮮明に
--- 2019年の改元・新天皇即位、消費税増税、そして2020年の東京オリンピック・パラリンピックと、これから個人消費に影響を与えそうなイベントが続きます。また、18年から19年にかけて、三越伊勢丹ホールディングスでは店舗の改装も急ピッチで進める計画ですね。
国内の人やモノの移動も激しくなりますし、旅行客も含めて、外国人の方が訪れるスピードや数もイベントに向けて高まると思います。こうしたお客さまに対して、しっかりと商品やサービスを提供し、買い物のサポートをしていかなければならないことはすごく意識しています。これまでも百貨店はこうしたイベントをうまく取り込みながら、お客さまの気持ちを楽しく、豊かになっていただく「仕掛け」をたくさん実施してきました。来年の改元では写真展をやったり、スポーツ大会ではラグビーやオリンピックなどに関連する商品を展開したりして、百貨店のにぎわいに行ってみたいと思っていただく企画を行っていきます。
店舗の魅力を増していくことは大きな課題です。三越伊勢丹ホールディングスでは「リモデル」という言い方をしていますが、お店の内装や取扱商品の構成を変えていく、それぞれのお店の立地や来店されるお客さまの関心やニーズに合わせていくということに徹底的に取り組みます。
いま、アパレルや装飾品・雑貨、食品などでも、従来、百貨店などで購入していただいていた中間の品質・価格帯の商品が売れなくなっています。たとえば、かつては2~3万円のハンドバッグが多くのOLの方に買われましたが、この価格帯の商品が売れなくなっています。消費行動の二極化に原因があります。普段、利用する商品であれば、必要最低限の機能で十分、安ければ安いほどよく、ファッション性を求めない消費者が増えています。逆に、高機能商品やブランドを求めるケースでは、ハンドバッグなども10万円、20万円という高額な商品を買われます。“ファストファッションの服を着て欧米の高級ブランドバッグを使う”という消費行動が明らかになっています。
三越伊勢丹グループも実はこうした消費行動の変化に店舗がうまく対応できていなかったという反省があります。「化粧品」は伊勢丹新宿本店の場合、つい5、6年前は年間100億円くらいだった売り上げが、いまでは300億円ほどになっていますが、売り場面積はほとんど変わっていません。時間当たりの来客数の密度が増えるなか、接客の質を高めることでなんとか売り上げを伸ばしてきたのです。一方、婦人向け商品の売上シェアは減少傾向にあったにもかかわらず、フロアの構成や売り場面積のバランスを変えてきませんでした。お客さまの嗜好の大きな変化に対し、リアルな店舗の対応が遅れていたのです。
問われているのはお客さまに商品を買ってもらうために、お客さまが求めている「適正な商品」を「適正な時期」に「適正な場所」「適正な量」「適正な価格」で提供するMD(マーチャンダイジング)の管理をしっかりと徹底することです。お客さまの生活のスタイルが変わっているなか、それぞれの店に期待していることをあらためて読み切り、その期待に合わせて、店舗の特徴、内装・外装、フロアの構成、品揃えを変えていくということです。