救ってくれた「高杉晋作」の言葉、おもしろくないものをおもしろくするのは「自分」
--- 座右の銘や、経営者やリーダーとして日ごろ、心掛けていることはありますか。
一つは高杉晋作の「おもしろきこともなき世をおもしろく すみなしものは心なりけり」という辞世の句です。私は三井物産でメキシコ駐在時代、拘置所に195日間収監されたことがあります。容疑は詐欺罪で、三井物産が輸出した人工皮革製造機が欠陥品だったというのです。相手は巨額の和解金を目的に詐欺に遭ったと訴え出ました。要求された和解金は300億円。私たちは言いがかりに屈したくないので、頑として、その要求を撥ねつけました。
結局、訴えた相手が提出した証拠書類はほとんどが偽造されたものであることがわかり、裁判所の判決もなしに、私は突然釈放されましたが、その時に拘置所のなかで読んだ「高杉晋作」の本に書かれていたのがこの言葉でした。私もさすがに拘留されて気が滅入った為か、会社や関係者を恨むよう気持ちになっていました。過酷な環境で自分がおかしくなってしまうと思っていた気持ちを救ってくれました。
世の中は、そもそもおもしろくできているわけではない。これも自分の運命だと考えて、心の持ちようを変えて、前向きに生きようと、この言葉で勇気づけられました。独房に入れられて195日もいると、さすがにノイローゼやうつ病になる人が多いといわれますが、それは「世の中にはおもしろいことが用意されているはず」という過度な期待があるからです。実は世の中はおもしろくない状態がデフォルト(既定値)であり、そう考えればおもしろいことがないからといって、いちいち落ち込まずにすみます。
むしろ、その「おもしろくないもの」を自分で「おもしろく」するということですね。