「拠点なくして課税なし」、時代に対応できず AIやビッグデータ、国際活用ルール待ったなし
--- デジタルの問題は具体的にいうとどういうことなのでしょうか。
デジタルというのは範囲が広いですよね。何でもありという感じもありますが、たとえば具体的にはまず、デジタル課税の問題があります。すでに経済そのものがデジタルに移行しているなか、課税体制は1920~30年代に作られた税制がそのまま残っている状況です。従来の国際的な課税ルールである「拠点なくして課税なし」という制度がデジタル時代に対応できなくなっています。国境を越えてビジネスを行っている多国籍企業が低い税率の地域に会計上の拠点を移転させるケースが増えています。オンライン上の取引が増えたため、実質的には経済活動が行われている国でも、デジタル企業に対して課税権がないという状況もあります。OECDではこうした事態に対処するロードマップを作成し、2020年までの世界的な合意形成を目指し、多くの国とともに取り組んでいます。
もうひとつはAI(人工知能)やビッグデータの問題です。AIやビッグデータの活用によって、国境を越えてグローバルにデータを活用し、マネタイズできるようになりました。 しかし、データの活用方法に関して、各国のプライバシー(個人情報保護)の制約はあるものの、国際的なガイドラインがありません。実際に動いている民間企業と、それに対する行政のスピードがまったく違うため、大きな問題が生じてきています。OECDは今年5月、加盟国とパートナー諸国の間で、AIに関する初の国際的な政策ガイドライン「人工知能に関するOECD原則」を採択しましたが、待ったなしの緊急課題だと認識しています。デジタルの課題は次々と派生する問題を生んでいるのが現状です。