世の中のスピーディーな変化に対応するためのM&A戦略
--- なぜこの3分野に絞ったのですか。
世の中で起こっているIoT(Internet of Things/モノのインターネット)の進展や、5Gに代表される通信のインフラの急速な変化、世界的な人口問題、環境問題などを勘案して、この3分野に絞り込んだという背景があります。
まずモビリティに関して言えば、「コネクテッド」という大きなキーワードの元に、自動車の自動運転や通信網とのつながり、交通インフラの進化など大きな変革が起きる中で、大きな社会的変化をもたらすと考えました。
具体的には、車載用の5Gアンテナを、NTTドコモ、エリクソン・ジャパンと共同開発し、実験に成功しましたが、5Gというコンセプトを実現させるためには、社会インフラも非常に重要です。現在の4Gの電波は到達距離が2kmくらいですが、高周波の5Gは200m程度しか届きません。そのため、5Gのシステムを稼働させるためには、200mごとにアンテナを立てなければならないわけですが、それでは街の景観も損なわれますし、何よりもアンテナの設置という物理的課題があります。
当社の持つ素材や技術を使えば、社会インフラ整備をなるべく安く、効果的なやり方を提案するチャンスが出てきます。例えば長年自動車ガラスの製造を手掛けてきたことで培った、アンテナ設計技術があります。さらに5Gのような高周波な電波を減衰させにくい、優れた電気特性を持つフッ素樹脂の技術も有しています。これらの自社技術を組み合わせ、極めて伝送損失の低いアンテナを設計することが可能です。
しかし当社にない技術もあります。例えばアンテナ材料であるCCL(銅張積層板)の銅張部分の基本技術は持っていません。このような足りない部分は、M&A(合併・買収)によって補います。社会のスピーディーな変化に対応していくため、時間をお金で買う戦略です。