不十分な年金制度改革、76歳支給開始の思い切った施策が必要
--- 日本経済に目を向けたときの課題とは。
経済・財政の持続性に向けてさらなる年金制度改革が必要です。年金の支給開始年齢は段階的に65歳まで上がりますが、まだまだ低いと言わざるを得ません。2004年の年金制度改正では3年ごとに開始を1歳引き上げて65歳にすると決めましたが、これは必要なペースの半分に過ぎませんでした。個人的には2040年までに支給開始年齢を76歳へ引き上げるべきだと考えています。その結果、21歳から定年の76歳まで働く年数(55年)と受給開始年齢の76歳から平均寿命と思われる90歳までの年数(14年)が4対1になります。財政の持続性のためにはこうした制度設計の見直しが待ったなしですが、実行すればこれ以上消費税は上げずに済みます。高齢者がもっと働くか、若い人がもっと税金を払うかという選択肢しかありません。どちらが日本の持続性にとってよいか一目瞭然でしょう。
2014年に内閣府が実施した意識調査によると、60歳以上の人にいくつまで働きたいか尋ねたところ、65歳までと答えた人は13.5%、70~80歳が38%、働けるまで働くと答えた人が42%でした。環境さえ整えば、政府が支給開始年齢を引き上げてもあまり反発はないのではないでしょうか。引き上げれば高齢者は働くため健康に気を使って元気でいようとし、予防医療にも取り組みます。もちろん、「あと4年でリタイア」と考えていたら残り14年に延びる世代も出るので工夫は必要でしょう。しかし、現在GDPの約11%を占める年金の歳出を5~6%に抑えないと、他の使うべきところに使えないのです。