●インターネットをはじめとする情報通信技術革命によってヒト・モノ・カネ・情報が国家の垣根を簡単に超えて(フラット化する世界・ボーダーレス社会)高速で移動し、交流することが可能になったこと。 ●途上国の飢餓・食糧問題に人口爆発、民族間対立、大気汚染・海洋汚染・地球温暖化など地球規模で人類全体が取り組むべき課題が大きくクローズアップされてきたこと。 ●産軍複合体による核兵器など大量破壊兵器の軍拡競争を抑止し、大国間の覇権争いではなく、各国間・各地域組織間の緩い連携によって地域間、あるいは地球全体の安全保障を確保していく体制づくりが求められるようになってきたこと。 |
――80年代までの「国際人」は海外事情に通じて、それを国内に通報する「受信型」が中心だった。だが(1)~(3)に対応しながら日本が世界に向かって何に貢献できるかを考え、日本人としての誇りを持って発言し、行動する「発信型」の人材、つまり「グローバル人材」の育成・養成の必要性が日本の重要な政策課題として浮かび上がってきた。
(1)異文化(異国籍)への好奇心を強く持ち、異文化摩擦・衝突を楽しむことができる (2)自分の文化(家族・生まれ故郷・地域社会・国)をよく理解し、誇りに思う (3)論理的思考・批判的判断力を養い、自分の考えを的確に表現し、主張できる (4)他人(他人種・他民族・他文化)を蔑視しないで、共感できる想像力を持つ (5)民主主義の理念(自由・平等・公正・寛容)を実行し、高い正義感と倫理感を持つ (6)職業として選んだ仕事で常に「プロとして一流」「世界でトップ」を目指す (7)既成事実に流されず、既得権益に安住せずに、常に「ゼロから」挑戦・創造する |
――ここで注意してほしいのは「英語力」「語学力」が入っていないことだ。多くの「グローバル人材」論はせいぜい(1)~(3)までを想定し、それを発信する語学力=「異文化コミュニケーション力」として、特に、英語力の重要性を挙げている。
だがよく考えればわかるはずだが、(1)~(7)は別に英語ができなくても十分身につけられる。そこで以下、普通の「グローバル人材」論では触れていない、(4)~(7)について、なぜ、それらが本来の「グローバル人材」の重要な条件=資質なのかを説明したい。
1947年、大分県生まれ。東京外国語大学英米語科卒。元日本経済新聞編集委員。日経社会面の長期連載「サラリーマン」取材班で84年に菊池寛賞を受賞。87-90年にロサンゼルス支局長。日経文化面「私の履歴書」で91年にJ・W・フルブライト米上院議員、2001年にジャック・ウェルチ米GE会長、02年にL・ガースナー米IBM会長の聞き書きを担当した。81年に米スタンフォード大学からジャーナリズム研究員に招かれる。95年から03年まで東京外国語大学非常勤講師(国際関係論)。2002年、秋田県に全国初の公立大学法人・国際教養大学(AIU)の設立準備の段階から中嶋嶺雄初代学長を補佐して「日本に前例のない理想的な大学づくり」に関わり、04年春の開学と同時に教授兼図書館長に就任。北米研究、日米関係論、ジャーナリズム論などを英語で教え「理想的な図書館づくり」に取り組んだ。16年春、定年退職で名誉教授となる。公職として財団法人日本語教育振興協会評議員、公益社団法人国際日本語普及協会(AJALT)理事など。13年秋に発足した「グローバル人材育成教育学会」の設立以来4年間副会長を務め、18年秋から会長。
主な著訳書に『J・W・フルブライト:権力の驕りに抗して』(日本経済新聞社、1991)、N・バラン著『情報スーパーハイウエーの衝撃』(訳、同、94)、『日本語教育振興協会20年の歩み』(同会、2010)、『国際教養大学10周年記念誌』(同大、14)、『中嶋嶺雄著作選集』全8巻(責任編集、桜美林大学、15~16)、『最強の英語学習法』(IBC出版、17)、『グローバル人材・その育成と教育革命――日本の大学を変えた中嶋嶺雄の理念と情熱』(責任編集、アジア・ユーラシア総合研究所、18)、『グローバル人材育成教育の挑戦』(共著、IBC出版、18)。