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セミナー

大学ブランド戦略セミナー<東京・大阪>

 2018年12月、大学のブランドの確立や認知度向上を考える「大学ブランド戦略セミナー」を東京と大阪で開催しました。東京では立命館アジア太平洋大学(APU)学長の出口治明氏が「これからの大学教育について」をテーマに講演、大阪では近畿大学の広報戦略を担う総務部長の世耕石弘氏に「知と汗と涙の近大流コミュニケーション戦略」と題して現場最前線の体験談を披露していただきました。

開催日時 2018年12月5日(水)
2018年12月11日(火)
開催地 東京・大阪
プログラム
  • 「これからの大学教育について」(12月 5日・東京)
     立命館アジア太平洋大学(APU) 学長 出口 治明氏
  • 「知と汗と涙の近大流コミュニケーション戦略」(12月11日・大阪)
     近畿大学 総務部長 世耕 石弘氏
  • 「『大学ブランド・イメージ調査2018-2019』結果と活用事例」
     日経BPコンサルティング コンサルティング本部ブランドコミュニケーション部 渡邉 真由美氏
  • プレゼンテーション「『日経テレコン』を使った情報共有について」

出口治明氏 「これからの大学教育について」(12月 5日・東京)

グローバルで考えれば、大学は成長産業

出口治明氏

 立命館アジア太平洋大学(APU)学長の出口治明氏は講演の前半、自らが大切にしている「タテ」(歴史)、「ヨコ」(世界・グローバル)、「算数」(数値・データ)という3つの視点から、日本の教育に焦点を当てて、現状と課題を解説してくれました。そのなかで、まず、高等教育を担う大学でよく議論されている18歳人口の激減について、国内問題だけでとらえることに大きな疑義を提示しました。
 出口氏は、「ヨコ」からの視点、つまり世界を見渡せば、アジアやアフリカなど大学教育を必要とする国や地域はたくさんあり、こうした国や地域から学生を呼び寄せることができれば、日本の大学にも大きな可能性が広がることを指摘しました。「グローバルに考えれば、大学は成長産業だ」ということです。
 また、これからの大学教育の問題点として、これまで「素直で、協調性があり、我慢強い」工場モデル型の人材ばかりを育ててきたことを指摘、それが製造業の工場モデルには過剰なほど適応してきたが(それにより高度経済成長が実現)、サービス業が主体となり、独創的なアイデアが求められる時代にはふさわしくなくなったことを強調しました。
 例として、現在、世界経済や産業、サービス、暮らしの進化をけん引するGAFA(ガーファ)やユニコーンを挙げて、日本にはこうした企業がまったく育っていないことに危機意識を持つべきことを明らかにし、「自分の好きなことを徹底的に勉強する、『とがった個性』を持つ、いわば『オタク』的な人材を育てていかないと、日本には将来がない」と話しました。

(※)GAFAは「Google」「Apple」「Facebook」「Amazon」の頭文字を取った名称。ユニコーンは株式上場前の段階からその価値が10億ドル(1100億円)を超える評価を得る新興企業のこと。

偏差値でいくのか、とがった個性を伸ばすのか、2つのバリエーション必要

 さらに、(1)先進国のなかで日本は大学進学率が低いこと、しかも(2)その大学生がまったく勉強しないこと、そして企業が(勉強をした)大学生や大学院生を採用しないこと、(3)社会に出た後、勉強する時間がないこと―――を指摘、「日本はだれがどう考えても低学歴国である」と評価。これでは新しいテクノロジーについていけるはずはなく、新しい産業が生まれないことを強調しました。「長時間労働からいいアイデアは生まれない」と加え、これまでの日本企業の働き方に疑問を示し、最近の働き方改革について、「ようやく日本政府もこれに気が付いた」と解説しました。
 では、具体的に大学に何が求められるか。出口氏は大学の使命として、「際立った個性を育てること」と話し、その個性には「高い偏差値を追求する」のか、「個性を徹底的に伸ばす」のか、2つのバリエーションが必要としました。そして、技術や世の中の流れが10年で陳腐化することを考えると、大学には社会にいったん送り出した人たちにいかにして勉強する場を与えることができるか、リカレントへの取り組みが重要であることを加えました。

大学と社会を普通に行ったり来たり リカレント定着も大学の使命

 リカレントについて、出口氏は10世紀、エジプトで創設されたアズハルという世界最古の大学が「入学随時・受講随時・卒業随時」という3信条を掲げていたことを紹介。いつでも、だれでも、自由に好きな科目だけ、勉強する環境が求められていることを説明し、社会と大学を普通に行ったり来たりできる、つまり、アズハルの3信条を日本に定着させることが「これからの教育の基本になる」と話しました。それがこれからの大学の使命であると強調しました。

「ダイバーシティ」×「とがった個性」=「混ぜる個性」

 このように、これからの大学の在り方を示したうえで、最後に、出口氏はAPUの取り組みについて話し、さらに、会場からも具体的な質問をいくつか受け、わかりやすく回答しました。
 出口氏によると、APUは偏差値に基づく個性ではなく、「ダイバーシティ(多様性)」と「とがった個性」を求めること、そして、大学を通して、その個性を混ぜること(『混ぜる個性』)を建学のコンセプトに置いて、それを忠実に実現し、おもしろいことをやっているからこそ、世界中から多くの学生を集めていると話してくれました。

国際認証により、選ばれる大学へ

 APUには現在、世界88の国・地域から約3,000人が学んでおり、留学生が全学生数の半分を占めていることを紹介、そこでは海外におけるAPUの高いブランド力がいきていると指摘しました。
 出口氏はブランド力を支えている一つが「国際認証」と分析。APUは世界で最も権威あるビジネススクール認証機関の一つ、AACSB (The Association to Advance Collegiate Schools of Business)や国連世界観光機関(UNWTO)の関連組織の観光教育機関向け「TedQual(Tourism Education Quality)」など、「ミシュランの三つ星」ともいうべき国際認証を取得。これが留学生に評価されていると解説しました。
 さらに、外国人のための秋入学制度の導入、外国人教職者を軸とした学部の運営、国内生と一緒に住むことができる整備された学生寮、イスラム圏学生のためにはハラールメニューを学生食堂に用意するなど、きめ細かな配慮を施していることを強調しました。講義やゼミナール、構内掲示や連絡メールなども二言語対応を徹底、外国人が日本語や日本文化などを学び、まさに「若者の国連」(出口氏)さながら、学生たちが専門的な知識だけでなく、世界中の若者同士がつながるネットワークを得られる環境を説明しました。

出口治明氏

隔絶した環境が「APU愛」へ 熱いネットワークを生むサイクル

 そして、出口氏が強調したのが、大学で生まれたネットワークが卒業後もつながっていく循環でした。現在、卒業生は1万7,000人。半分は外国人であり、生まれ育った国・地域に戻ったり、グローバルに散らばったりして、活躍しながら、各地で同窓会を組織。出口氏は「35ある同窓会のうち26はインドネシアやタイなど海外にある」と話し、「日本の大学の海外における最強の同窓会組織として、積極的な活動をしている」といいます。もともと留学生たちは現地の有力者・富裕層の子弟が多く、現地に戻って力を発揮するOBを中心に口コミや働きかけが広がり、それぞれの地域で、APUが評判となり、新しい留学生を送り出す仕組み、サイクルが生まれているのではないかと話されました。
 出口氏によると、「APUは大分県別府市の郊外という、いわば隔絶した環境のなかにあり、そこでいっしょにがんばったということが自己のアイデンティティとなり強い『APU愛(ラブ)』となっているようです」ということです。卒業生も在校生も母校愛が強く、APUというだけで学生・卒業生同士が助け合う状況が生まれており、卒業後も大学に立ち寄るOBが多いとのことでした。
 また、米国に比べて、日本は学費が安いばかりではなく、治安がよく、生活のしやすさも特に父兄にとって、APUが選ばれる、大きなポイントとなっていると解説しました。

身近なロールモデルを提供 教授、OBが事業プランをブラッシュアップ

質疑応答の様子

 出口氏は最後に、自ら、常に学長室のとびらを開けていることを説明。学長室には学生がよく相談に来るそうです。ちなみに、「次によく訪れるのが市民、職員、一番来ないのが先生たち」と笑って、付け加えました。
 出口氏は「学生にはとにかく好きなことをやってみればいいとハッパをかけています」と話し、今回の講演の冒頭で紹介したAPUのプロモーションビデオに触れながら、自主的にビデオを制作したタイからきた留学生が卒業後、友人2人とプロモーションビデオ制作会社を起業したことを紹介しました。
 会場からは出口氏が関わっている「APU起業部」について質問があり、「学生たちから起業プランを募集し、審査して選抜。32組・46人を教授6人が手分けして支援しており、さらに起業しているOBに呼びかけ、そのプランのブラッシュアップを助けている」と説明されました。そして、「身近なロールモデルの提供こそ、学生たちがもっとも必要としている」と、ここでもAPUの絆(きずな)の意味を会場に問いかけました。
 「おもしろいことをやっていれば、学生はみんな真似するのです」(出口氏)。
APUが世界中から人を呼び寄せる「秘訣」を話し、講演をまとめてくれました。

出口 治明氏

 1948年生まれ。京都大学法学部を卒業後、1972年日本生命保険相互会社入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを歴任。2008年ライフネット生命保険株式会社を開業、代表取締役社長に就任。2012年上場。社長、会長を10年勤めた後、2017年同社代表取締役会長職を退任。2018年立命館アジア太平洋大学(APU)学長に就任、現在に至る。

世耕 石弘氏 「知と汗と涙の近大流コミュニケーション戦略」(12月11日・大阪)

ポジティブな情報を集中的・効果的に発信、時にイメージを優先

世耕 石弘氏

 近畿大学総務部長の世耕石弘氏は、広報発信の責任者である立場から、時代の変化に対応していくことの重要性を強調し、「現在は情報発信ツールの普及により、無名の大学でも一度、情報が拡散されれば一気に広まる時代です。だからこそ、自分たちのポジションを卑下することなく、ポジティブな情報を発信していくことが大事」と話しました。
 世耕氏は実際に行ったさまざまな事例を紹介、そこでは伝える情報を絞り込むとともに、「集中して発信することに力を入れてきた」と説明しました。たとえば、海外からの視聴も視野に入れた3分間の大学紹介動画「グローバルムービー」について、大学施設やイベントの様子を中心とした、ビジュアル面を重視した内容とし、その意図を「まずは入り口として短い動画でイメージを見せて、そこで興味を持った人に大学のサイトにアクセスしてもらうことをめざしました」と話しました。総合大学である近畿大学について、短い時間ですべての学部や教育内容を伝えることは不可能と判断、イメージを伝えることを優先したといいます。

軽いコミュニケーションきっかけに、大学情報へのアクセス促す

 2017年に設立した学内図書スペース「アカデミックシアター」の広報活動でも、「24時間利用可能な自習室」「日本の大学初出店のカフェ」「スマートフォンアプリで座席予約可能」など、新しい試みにトピックを絞り、発信することで話題を集めたといいます。さらに、「大学の図書館」だけではインパクトが薄いことを理解したうえで、紹介する動画の撮影にはマイクロドローンという最先端のテクノロジーを活用してアピール、動画はテレビ番組の背景に利用されたほか、SNS(交流サイト)でも繰り返して発信することで、結果的に多くの人に認知されたそうです。
 グローバルムービーもあわせ、世耕氏は「まず『この動画はすごい』と軽いコミュニケーションを誘発し、大学の情報へアクセスする人が増えればいいと考えていました」と語りました。世耕氏は常に「コミュニケーション」を意識、大学案内冊子でも教育や研究内容を紹介する要素をなくし、キャンパスライフを中心とした内容の雑誌風のスタイルへ刷新。一方的な「インフォメーション」ではなく、読者との「コミュニケーションツール」として機能する内容をめざしたとのことです。

大学案内冊子

過去の成功事例から学べることは少ない。常に他の大学がやらないことを模索

 世耕氏は「発信した情報のインパクトが大きすぎてネガティブに受け取られることがあっても、最終的に近畿大学を好きになってくれる人が現れれば良いという考え方がそのベースになっています」と解説。少子化が進み、大学へ進学する18歳の人口は減っているなか、「同じことをやり続けていても意味がない、過去の成功事例から学べることも少ない」という思いから、「他の大学がやらないことを模索している」と付け加えました。

組織方針として「全教職員が広報員」徹底、予算も機動的に運用

 さらに、近畿大学学内の組織体制を紹介、全学的事務組織方針として、全教職員が情報収集力と発信力を高めて、近畿大学の広報員となることを定めていると説明しました。世耕氏は「大学全体が一丸となって広報に取り組む体制を整えたことで、取材対応など広報関連業務をスムーズに進めることができるようになった」と、その効果を指摘しました。
 また、「近大的広報の強み」として、次の3点を列挙しました。
(1)包括予算制度:年1回の決算体制であることを活用し、期間中、より効果的な広報となると判断した場合はそれにあわせて柔軟に組み替える
(2)意思決定の部内完結:広報委員会方式を取らず、意思決定を部内で完結させることで責任の所在を明確にする
(3)選択と集中:慣例にとらわれず、効果があると思われる媒体に集中的に広告出稿の予算を投入する

ウェブ関連サービスで最先端めざす、業務効率化にも活用

 世耕氏によると、現在、近畿大学が特に力を入れて取り組んでいるのはウェブ関連サービスとの連携でした。「近大エコ出願」と称したインターネット出願や、クレジット機能付き学生証、保護者向けポータルサイトの開設、学費のクレジットカード決済など、さまざまなサービスを展開しています。「この分野においては最先端でいようと思っています」と世耕氏は意気込みを語ってくれました。
 「徹底した情報発信」のために、大学ホームページで積極的に動画を導入、近畿大学に関するトピックを集めたキュレーションサイト「Kindai Picks(キンダイピックス)」の運営、メディアに向けて配る近畿大学教員名鑑「近大コメンテーターガイド」作成など、さまざまなツールを使い、広報発信を行っていることを披露しました。一方、フリーアドレスやペーパーレスに向けた電子業務の導入など、学内での業務効率化も積極的に行っているとのことでした。

世耕 石弘氏

「変化に対応する」先進的な取り組みと、確実な成果

 最後に、さまざまな取り組みに対して、確実な成果が生まれていると強調。2018年の公募入試などの年内受験者数は前年比15%増となり、5万人を超え、大学への取材件数も倍増したといいます。
 大学に関連した調査においても「改革力が高い」「学校が発展していく可能性がある」「活気がある」「今注目されている」「エネルギッシュ」「チャレンジ精神がある」「面白みがある」項目で、関西地域1位を獲得しています。「これらの要素を人に置き換えたとき、まさに、いま、求められている人物像となっているのではないか」と世耕氏は分析します。
 少子化、大学統廃合の増加など、大学はかつてない厳しい環境に置かれています。そのなかで、世耕氏は「変化に対応できる大学しか生き残れない」と断言しました。「この世に生き残る生き物は変化に対応できる生き物だ」というダーウィンの言葉をもって、講演を締めくくりました。

世耕 石弘氏

 1969年生まれ。大学を卒業後、1992年近畿日本鉄道に入社。2007年近畿大学に奉職。入学センター入試広報課長、同センター事務長を経て、2013年広報部長代理、2015年広報部長、2017年広報部が総務部広報室となり総務部長、現在に至る。

渡邉 真由美氏 「『大学ブランド・イメージ調査2018-2019』結果と活用事例」(東京・大阪)

49のイメージ項目から評価軸 大学ブランド偏差値を算出

 日経BPコンサルティング ブランドコミュニケーション部 コンサルタントの渡邉真由美氏は同社が2018年11月28日に発行した最新の「大学ブランド・イメージ調査」の調査結果の概要と、調査データの活用方法について、具体的な例を挙げながら、説明しました。
 渡邉氏はまず、調査について、全国を9つのエリアに分けて、各エリアに在住する有職者/教育への関心が高い中学生以上の子を持つ父母を対象としていることを紹介。さらに調査項目によっては教育・研究機関に従事する人が対象となっていることを説明しました。各大学に対して49のイメージ項目をチェックしてもらい、それを大学ブランド偏差値に結びつけていると話しました。
 49のイメージ項目は共通点をたばねて3つのグループに分類。「一流感がある」「知名度がある」「親しみが持てる」などの【一般イメージ】、「教育機関としてのビジョンがある」「学部、学科が充実している」などの【大学ブランド・イメージ】、「勉強、研究に熱心である」「基礎学力が高い」「語学に長けている」などの【学生ブランド・イメージ】。各グループでのチェックされた項目のスコアを足し上げ、大学ブランド偏差値が算出されるとしました。また、【一流】【躍動感】【創造力】【グローバル】【地域貢献】【上品・誠実】の6つに因子に基づく分析も実施、「どの傾向が強みとなるのかを知ることができる」と話しました。

渡邉真由美氏

広報次第で一定のブランド・イメージの確立可能

 渡邉氏は「大学ブランド・イメージ調査2018-2019」の結果をもとに、49のイメージ項目の評価から、ブランドコミュニケーション戦略に成功したと考えられる各地域の大学を発表。
 東北エリアにおいては「グローバルである/国際交流が活発」項目の1位は2004年に開学した国際教養大学、「いま注目されている、旬である」項目の1位も獲得しました。九州・沖縄・山口エリアでは「グローバルである/国際交流が活発」含めて、複数項目で1位を獲得したのが立命館アジア太平洋大学(APU)。2000年開学ですが、エリアにおいてはグローバルなイメージがすでに形成されています。
 甲信越エリアでは2018年開学の長野県立大学が「いま注目されている、旬である」項目で1位に。開学時に各種メディアで取り上げられ、その際に大学としての展望や地元への貢献などについて積極的に発信していたことが要因と分析しました。
 渡邉氏によると、「たとえ学校の歴史が浅くても、広報をうまく行うことで、学外の人に一定のブランド・イメージを持ってもらうことはできる」ということでした。

踏み込んだ、力強いメッセージ発信がブランド力向上に成果

 続いて、各地域の大学ブランド力上位5校、続けて6因子分類で見る各地域のトップ校の事例も紹介。6因子分類において、たとえば【躍動感】の項目はスポーツ活動が活発な大学、【創造力】は理系学部を持つ大学が強い傾向にあると話しました。
 6因子分類で各地域トップ校のなかから、3校の事例を挙げました。四国地方【躍動感】1位の松山大学はスポーツが活発でメディアへの露出が多かったこと、また、2023年に100周年を迎えるにあたり、すでに周年ページを立ち上げ、大学としてのメッセージを力強く発信したことが影響しているのではないかと分析。東海地方【グローバル】1位の名古屋外国語大学は、複数の言語を学ぶ「複言語化」プログラムを全学部全学科で推進、広報発信も積極的に行っています。「複数の言語を学ぶと社会に出たときにどう使えるのか、という一歩踏み込んだ情報発信が奏功したと考えられます」(渡邉氏)
 首都圏【地域貢献】1位の横浜国立大学は、2017年に「都市科学部」を開設。首都圏にある強みを生かし、都市のありかたを考える研究プログラムを多く手がけています。研究成果の発表やシンポジウム、地元の人を招いた講演会などを行い、また、それについて積極的に情報発信したことが、今回の評価につながっているようです。

絶対評価と相対評価で自校の立ち位置を知る

 さまざまな事例を踏まえ、調査の見方やどう分析していくか。渡邉氏はその具体的な手順を解説。まず「個別分析シート」で大学の絶対評価を知ることから始めることを薦めました。渡邉氏によると、ブランド偏差値、認知率、入学推薦率など自校が平均と比べてどう評価されているかがわかりやすく、さらに年齢別や地域別の評価もあり、年齢による評価の差、地域による認知率の差なども明らかになるといいます。
 次に、「競合分析シート」を通じて他校比較を行うことを指摘。たとえば平均より高い評価を得ている項目であっても、「競合より低い場合は注意が必要で、その項目について積極的に広報発信しても、効果が薄い可能性があるからです」と話しました。そして、「競合分析シートからは相対的な自校の強み・弱みを見きわめることができます」としました。
 また、次の段階で注目したいのが自由意見と話しました。調査では「大学の特長・魅力」「大学が改善すべき点」「入学推薦/入学非推薦の理由」の3つに関する自由意見を知ることができ、自校が思った通りの評価をされているかどうかが判断できると話しました。

セミナーの様子(大阪)

ブランド偏差値と認知率、バランスのチェック重要

 今後のブランドコミュニケーション戦略を考えるうえでのポイントとして、渡邉氏は縦軸がブランド偏差値、横軸を認知率としたプロットグラフを紹介しました。そもそも一定の認知率がないとブランド偏差値も上がりづらいのですが、最も避けたいのが「認知率は高いがブランド偏差値が低い状態」と解説しました。「名前だけしか知られていない大学になってしまうと、その後にブランド・イメージを変えることは困難になってしまう。知名度を上げることも大事ですが、どこかのフェーズでブランドコミュニケーション戦略にシフトした広報に切り替えることが大事」とアドバイスしました。

ブランド成長に3段階、「ひろげる」「とがる」「よろこばす」

 最後にブランド成長のための3つのフェーズについて解説。ブランドの成長を(1)認知度・知名度を上げる「ひろげる」(2)他大学との差別化をはかる段階「とがる」(3)大学を好きになってもらう、ファンを増やす「よろこばす」―――3つのステップに分けて考えることで、効率的なブランドづくりに取り組めることを説明しました。そのなかで、それぞれのステップに応じた戦略を紹介。たとえば、「ひろげる」は人的・金銭的資源が必要な部分であるため、その効果が十分に出ているかどうか、調査を活用して定期的に測定するべき時期であると指摘、「とがる」段階では大学の強みや特長を意識して伝えていく重要性を強調しました。

(日経MM情報活用塾メールマガジン1月号 2019年1月28日 更新)