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導入事例

導入事例 Case Study
企画部 CS室 課長 下津 竜之 氏

めざすブランド・イメージは
「未来社会Society5.0」をリードする大学

金沢工業大学

企画部 CS室 課長
下津 竜之 氏

導入しているサービス
  • 大学ブランド・イメージ調査

 さまざまな調査で常に上位にランキングされる金沢工業大学(本部:石川県野々市市)は全国に広がってきたブランドの確立を検証するため、早くから日経BPコンサルティングが毎年まとめる「大学ブランド・イメージ調査」を活用、着実に成果を挙げている。就職率や先進的な教育改革をアピール、「面倒見のよい大学」として評価が定着、いま、未来社会Society5.0に向けた産学連携の実証実験・研究をテーマにかかげ、さらにブランドに磨きをかけようとしている。企画部CS室の下津竜之課長にその取り組みやブランドの現状と調査の利用方法などをうかがった。

他大学に先駆け、95年から教育改革 在校生は石川県外77%

--- 金沢工業大学は教育改革への取り組みが全国大学学長、高校進路指導教員から評価され、「面倒見のよい大学」ランキング(大学通信)では14年連続1位、ブランド・イメージは確立されています。その要因はどこにあるのでしょうか?

 金沢工業大学が教育改革を始めたのは1995年です。「自ら考え行動する技術者の育成」を教育目標とし、他の大学よりもいち早く教育改革に取り組みました。現在は教育改革も第5期になります。この間のさまざまな教育改革が全国に知られるようになり、ブランド・イメージができあがったのだと思います。
 在校生の約77%は石川県外の出身者で、全国47都道府県から学生が集まっています。大都市圏の大学では7割程度が地元出身者というところも珍しくないなかで、出身者割合からいうと「全国区の大学」という見方もできます。それだけに、全国へ向けてブランド・イメージを発信しなければなりません。
 「面倒見のよい大学」と評価されているのは手取り足取り、細かく学生の面倒を見ているということではなく、教育目標にある通り、学生自身が自主的に行動でき、力を伸ばすことのできる仕組みを構築しているからです。
金沢工業大学キャンパス
 その一つが「数理工教育研究センター」です。学生は全国から集まってきますが、工業高校出身もいれば、普通科出身の学生もいます。時に「高校で未履修の範囲があるため理解が難しい」「授業の内容が分からない」といった場合があります。そこで、センターに行けば科目ごとに個人指導教員から習熟度に応じた個別指導を受けることができるのです。一方で、日々の授業の予習復習も厳しく「金沢工業大学は課題の量が日本一多い」と言われるようになりました。
 学生の真価が問われるのは入学時ではなく卒業時であることは言うまでもありません。40年以上前に、当時の学長が「金沢工業大学の学生は、卒業時の実力は国立大学の学生とそう違わないと思う」と話していますが、この言葉が教育改革の原点にもなっているのです。

実践で学ぶ学生が主役、大学で初めてCS室 その「満足」を発信

--- ブランド・イメージを発信する際に、気を付けていることはありますか?

 大学は何のためにあるのか、誰のためにあるのか、これまで何度となく議論してきましたが、やはり、大学は学生が主役です。
 学生が元気で、日々成長し、満足していることが最重要課題です。そこで、学生を顧客と位置付けて2003年に大学では初めてCS室(顧客満足度推進室)を設置しました。学生が成長し満足度を高めるということは、本人のみならず周りの社会も感じてこそ、ブランド・イメージとして確立していきます。金沢工業大学は産業界や地元の社会と接する機会が非常に多く、満足している学生を通して、社会にブランド・イメージを発信することが大切なのです。
 金沢工業大学の教育の最大の特徴が「プロジェクトデザイン教育」です。最近、多くの大学で採用されているアクティブラーニングの進化形で、1995年から導入しています。チームを組み、学生自身で社会生活の中から研究課題をみつけ、解決策を実施する実践型の授業です。課外では地元の方も巻き込んでプロジェクトを実施しています。
 身近な例では、「アパートリノベーションプロジェクト」があります。大学周辺には、4000室を超える大学指定アパートがありますが、その約半数は築20年前後で改修が必要です。そこで、大家のみなさまとともに老朽化したアパートに付加価値を与えるためのリノベーションプランをつくり実施する、というものです。
 また「夢考房」も大学を象徴する施設の一つです。ここでもさまざまなプロジェクトが進行し、産学連携で行われたり、ロボット大会などの技術コンテストで優勝したりしていますが、いずれも金沢工業大学の名前が認知されるきっかけとなっています。
 このように、元気で頑張っている学生を通して、産業界や地元の方々にも成長の過程をみていただくことで、金沢工業大学のブランド・イメージが浸透していくのではないかと思っています。

客観的データで検証、PDCAサイクルを回す 自由コメントに重み

--- 「大学ブランド・イメージ調査」は、どのように活用していますか?

 「大学ブランド・イメージ調査」を10年ほど活用しています。導入した理由の一つはまず調査回答者に特徴があること。日本経済新聞の読者などビジネスパーソンと中学生以上の子を持つ父母が回答者だということです。金沢工業大学は多種多様な産学連携のプロジェクトを推進し、社会貢献しています。学内だけでなく、一般の方々にどうみられているかは、定期的に検証しなければなりません。
 2019年学部卒業生の就職内定率は99.9%で、マスコミにも取り上げられました。しかし、本当のところ、それはどんなイメージを与えているのかなど、客観的なデータが必要です。気を付けなければならないのは、数字だけのイメージで独りよがりになることです。そこに陥らないためにも、さまざまな観点からみた客観的なデータは必要不可欠なのです。
 もう一つ、「大学ブランド・イメージ調査」の良い点は自由コメントがあることです。ここに生の声があります。生の声は定量データと違い、ひと言ひと言に重みがあり、貴重なデータとなります。時々、反省させられるコメントもありますが、それこそ真摯に受け止めなければならないと思っています。この定性データは、他にはありません。
企画部 CS室 課長 下津 竜之 氏
 データ結果は報告書にまとめられていますので、経営者や教員にも情報を共有しています。大学でも独自に学生アンケート、企業アンケートを実施していますが、それらも合わせて、教育改革プロジェクトの検証やイメージづくりの検証、方向性の確認、またはカリキュラムの作成に活かしています。その都度、PDCAサイクルを回していく際には欠かせないデータです。

研究にとどまらず、社会に実装できるイノベーション、人材を育成

--- 今後のブランド戦略については、どのような方向性を考えていますか?

 政府が提唱する、日本がめざすべき社会に「Society5.0」があります。サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会です。金沢工業大学ではこの未来社会、「Society5.0」をリードする人材育成に向け、19年度(令和元年度)より、(1)全学的な情報技術教育の導入(2)社会実装を実現する6年制メジャー・マイナー制度の導入(3)実務家教員を起点とした深い産学連携―――という3本の柱から構成される新たな教育の取り組みを始めました。
 世界を変えるための17の目標「SDGs」(国連の持続可能な開発目標)があります。「誰一人取り残さない世界」を理念に、国連全加盟国が2030年までに達成を目指した目標です。金沢工業大学は95年度から全国に先駆けて実施してきた問題発見・解決型教育が評価され、2017年12月に第1回「ジャパンSDGsアワード」SDGs推進副本部長(内閣官房長官)賞を受賞しました。いわば、日本を代表するSDGs推進高等教育機関でもあります。
 これらの実現には、AI(人工知能)や、すべてのものがインターネットにつながるIoTなど最新のテクノロジーを活用したイノベーションが欠かせません。金沢工業大学では、先ほどの「夢考房」のほか、18年に開設した「白山麓キャンパス」では、地方創生に取り組む全学横断型のイノベーションプロジェクトが進んでいます。
 どのプロジェクトも最終的にめざしているのは、研究にとどまらない社会実装です。そういう意味でも、金沢工業大学は社会実装可能なイノベーションやイノベーション人材の育成大学として「なくてはならない大学」にならなければなりません。そのためには、今後、金沢工業大学は「未来社会Society5.0をリードする研究力が身につく大学」としてのブランド・イメージを確立していく必要があると考えています。

--- 本日はありがとうございました。

(日経MM情報活用塾メールマガジン1月号 2020年1月29日 更新)

プロフィール

大学名 金沢工業大学
創立 1965年
所在地 扇が丘キャンパス(メインキャンパス)/石川県野々市市扇が丘7-1
やつかほリサーチキャンパス/石川県白山市八束穂3-1
白山麓キャンパス/石川県白山市瀬戸辰3-1
学生数 学部生 6,383人 大学院生487人 (2019年5月1日現在)
学部・大学院 工学部、情報フロンティア学部、建築学部、バイオ・化学部
【大学院】工学研究科、心理科学研究科、イノベーションマネジメント研究科
Webサイト https://www.kanazawa-it.ac.jp/

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