NIKKEI Media Marketing

セミナー

選ばれる大学のブランド戦略

開催日時 2017年12月7日(木)
<東京会場>2017年12月7日 14:00-16:30(13:30開場)
<大阪会場>2017年12月8日 14:00-16:30(13:30開場)
開催地 東京
大阪
プログラム ■第一部 「国士舘大学イメージ一新戦略 --100年目の姿--」  学校法人国士舘 常任理事 瀬野 隆 氏 学校法人国士舘常任理事、国士舘大学名誉教授、国士舘大学大学院経済学研究科博士課程修了、博士[経済学](国士舘大学)。 ■プレゼンテーション 「日経テレコンを使った情報共有について」  日経メディアマーケティング株式会社 営業企画部 寺山 奈保子 ■第二部 「『大学ブランド・イメージ調査2017-2018』結果と活用事例」  株式会社日経BPコンサルティング コンサルティング本部  ブランドコミュニケーション部 渡邉 真由美 氏 大学卒業後、食関連のメーカーでマーケティングに従事したのち2014年に日経BPコンサルティング入社。「大学ブランド・イメージ調査」のプロジェクトマネージャーとして、大学に対する調査・コンサルティングを担当している。

第一部:「国士舘大学イメージ一新戦略 -100年目の姿-」

建学精神守り、「新生」果たす 時代ニーズを映し、実態から大改革

 国士舘大学は近年、イメージが大きく変化した大学の一つといわれています。どのようにしてイメージを一新していったのか、改革をリードしてきた、学校法人国士舘常任理事の瀬野隆氏はまず「建学の精神と、時代が要請する人材の育成を、いかにリンクさせるか」という基礎となった考え方を強調しました。国士舘大学の建学の精神、教育理念は「"日本の将来を担う、国家の柱石たるべき『国士』の養成"」です。瀬野氏は「こうした精神や理念は本質的に変えてはいけないもの」としながら、それを現代的な意味として「"社会や人を支える力を持った人材の育成"」と読み解くことで、「その精神を守りながら、イメージの一新を図ってきました」と話しました。

 瀬野氏が考えるイメージの一新とは単なるイメージ・チェンジではありません。「イメージ・リジェネレーション(新生)」、つまり、印象を変えるのではなく新しく創り出すために、「(大学の)実態そのものを変える」ということでした。

新キャンパスは「女子仕様」

 国士舘大学は2000年以降、スポーツ医科学科や武道学科など新たな学科を新設し、学部学科を充実させています。世田谷キャンパスには新校舎を完成させました。

 新しい校舎は「女子学生のニーズを満たす環境整備に力を入れ、たとえば、天井を高くし明るく開放的にしたり、外壁の色をポップな色使いにしたり、女子トイレには全身が映る姿見を設置するなどホテル仕様にしました」(瀬野氏)。それまで男子学生のイメージが強かった国士舘大学としてはまったく新しい試みであり、瀬野氏によると、「新しいキャンパスにより、男女共学のイメージが醸成され、一気に女子学生が増えました」。

 また、新しいキャンパスはレストランや図書館を地域の市民に開放するなど、地域に開かれた大学に向けた環境整備も実施しました。瀬野氏は「(新キャンパスが)イメージの一新に大きな効果をもたらしている」と話しました。

 国士舘大学はこうしたブランド戦略の策定・実施にあたり、日経BPコンサルティングの「大学ブランド・イメージ調査」を活用したといいます。

 瀬野氏によると、調査では大学認知率は平均を大きく上回っているものの、認知度の内訳は"名前だけは見聞きしたことがある"といった限定的なものでした。瀬野氏はこの調査から「他校と差別化できる"とがる"要素が必要なことが分かりました」と振り返りました。

「防災教育」を第3の柱に

 こうした調査などを受けて、国士舘大学は創立100周年を契機に、目指すべき国士舘教育の3つの柱を策定しました。瀬野氏は「1つめが『武道をはじめとする日本の伝統的な諸道教育』、2つめが『キャリア教育』、そして3つめが国士舘大学ならではの『防災教育』を掲げました」と話しました。

 国士舘大学は警察官採用ランキングで日本2位、そして消防官採用ランキングは1位です。瀬野氏は「特に、救急救命士は現場のリーダーとなる人材育成を行っており、大きな評価を得ています」と強調しました。さらに、「これを強みとして、学部にかかわらず、防災能力の習得・技能・意欲向上を目指す『防災教育』を徹底することにしました」(瀬野氏)。

 ここ数年、地球的規模で自然災害が発生し、とりわけ、日本では東日本大地震以降、南海トラフ地震や首都直下型地震などが想定され、多くの国民が災害に対して不安を増幅させています。国士舘大学では今後の日本の社会では職種や立場に関係なく、防災能力を持った人材が必要となると考え、「これこそが時代の社会的ニーズでもあり、国士舘大学が取り組むべき課題である」(瀬野氏)と位置付けたわけです。

 国士舘大学は防災・救急救助総合研究所があり、被災地に災害ボランティアを派遣したり、地域との防災連携活動を行ったりしています。この活動が評価され、東京都から災害支援機関として認められています。瀬野氏は「今後はさらに、1、2年次の防災教育の必修化、防災リーダーの養成などに力を入れたい」と意気込みを披露しました。「防災教育を通して学生に建学の精神を体得させることにもなります」(瀬野氏)。

 最後に瀬野氏は「大学における教育そのものを、現代社会のニーズに反映させることで、誰もが知り、受け入れられる普遍性のあるイメージへシフトできます」と指摘しました。国や地域を超えた不可欠な人材を育成する機関として、教育内容が最も重要であることを加えて、講演を締めくくりました。

第二部:「『大学ブランド・イメージ調査2017-2018』結果と活用事例」

「らしさ」「強み」「特長」の認識を フェーズに応じた最適な広報活動探る

 日経BPコンサルティングコンサルティング本部ブランドコミュニケーション部の渡邉真由美氏は今回の講演でまず、同社が毎年、独自に調査している「大学ブランド・イメージ調査」の概要を説明、最新の2017-2018版から具体的な例をいくつか挙げながら、大学がブランド力を向上させていくために必要なポイントを解説してくれました。渡邉氏によると、「(大学の)ブランドを考える」ということは「何が武器なのかを考えること」であり、それぞれが「らしさ」や「強み」「特長」を認識したうえで、ターゲットを絞りながら情報発信していくことがブランド戦略で最も重要であると強調しました。自校が置かれている位置をきっちり把握し、その段階や状況に応じて、適切な措置を取っていく必要性があることを指摘しました。

49イメージ項目を調査、6つの因子分析で深掘り

 渡邉氏は「大学ブランド・イメージ調査」が各地域の主要大学(今回はのべ457校)を対象に、有識者(ビジネスパーソン)や中学生以上の子を持つ父母、一部は教育・研究機関従事者から、その大学や学生へのブランド・イメージをインターネットで調査したものであることを説明。調査では一般、大学ブランド、学生ブランドの3つのグループ・合計49のイメージ項目について回答を求め、その結果を中立的・多面的に編集。最終指標として「ブランド偏差値」を算出していると話しました。また、今回から6つの因子([1]一流[2]躍動感[3]創造力[4]グローバル[5]地域貢献[6]上品・誠実)に分類した因子分析を実施、それぞれ因子ごとの順位付けも公開したことを明らかにしました。

 渡邉氏は「調査によって、自校の『らしさ』や『強み』だけではなく、『弱み』も知ることができ、また、同一地域内での他大学との差異や自校のポジショニングが明らかになります」と強調しました。

 今回、渡邉氏は講演のなかで、全国9地域の大学ブランド力上位5校を紹介、さらに最新版の特徴をいくつか説明しました。

 たとえば、地域ごとにみると、東北編では東北福祉大学(宮城県)が前回3位から山形大学(山形県)と同率2位に上昇、同じ東北の会津大学(福島県)や北関東編の足利工業大学(栃木県、3位返り咲き)、九州・沖縄・山口編の立命館アジア太平洋大学(大分県、過去最高)などのランクアップについても取り上げました。また、因子ごとにみる各地域のトップ校を示し、「創造力」では工学系大学が強みをみせていることや国立・公立大学に上位が目立つ「地域貢献」で近畿編では私立の近畿大学(大阪府)がトップになったという指摘もありました。

 また、今回の調査に関連し、同社が発表したリリースなどから、東北編で『グローバルである/国際交流が活発』がトップとなった国際教養大学(秋田県)や『いま注目されている、旬である』という項目の北陸・東海編で前回6位からトップとなった至学館大学(愛知県)、『地域貢献』という項目で1位の静岡県立大学(静岡県)のケースも解説しました。

 渡邉氏は「国際教養大学は学生に留学を義務づけるなど、独自の国際教育の取り組みで知名度を上げています」、「至学館大学は女子レスリングの吉田沙保里氏が2016年11月に副学長に就任したことが大きな要因です」と発言。吉田氏は同大学卒業生で、卒業後も同大学を拠点に活動していましたが、「副学長就任記者会見のアナウンスを広く行った結果、地方紙にまで記事として取り上げられ、一気に認知度が上がり、ブランド偏差値も平均以上になりました」(渡邉氏)。広報活動の重要性を示すいい例ということのようです。

 静岡県立大学は大学と地域の橋渡しを担う事業統括機関「みらい共育センター」を設置、地域に対するセミナーなどイベントを開催、学生も地域の課題について研究・発表も実施しています。さらに、理系文系またがる教養科目として地域のことを学ぶ「しずおか学科目群」を設けている点などを紹介し、『地域貢献』項目トップもその影響とみているという評価でした。

「相対評価」でライバルとの距離チェック

 このあと、渡邉氏は「大学ブランド・イメージ調査」についてその骨子を説明、活用法を具体的に解説しました。「目に見えないブランドを、数字で表して見える化調査」である同調査のコンテンツとして、(1)「個別分析シート」(絶対評価)(2)「競合分析シート」(相対評価)(3)「自由意見」――の3つの柱を挙げました。大学認知率調査もあり、それぞれ調査対象や回答者属性(性別、居住地など)別などにより複数のシート、分析結果を備えているといいます。

 個別分析シートにおける絶対評価では全体的な偏差値はもちろん、項目ごとに平均値と比べることで、自校の「強さ」や「弱さ」がわかるほか、競合分析シートでは3つの大学の結果を同時に比較ができるため、「たとえば、ライバル校とレーダーチャートを重ね合わせれば、項目ごとに違いを視覚的に捉えることができます」(渡邉氏)。渡邉氏は「絶対評価では平均値を大幅に上回っていて自校の『強み』と思っていても、ライバル校がさらにそれを上回っていればむしろ『弱み』に転じかねない」と分析しました。

 また、「自由意見」は数値で表された調査結果の理由づけの分析や広報活動、ブランド戦略を考えるうえでヒントとなるコメントが含まれていることを指摘。今回も合計で20万件の意見が寄せられているようで、調査を活用するうえで、大きな参考になるといいます。

「ひろがる」→「とがる」→「よろこばす」

 最後に、渡邉氏は具体的にブランド戦略を進めるにあたり、「大学ブランド・イメージ調査」のなかでも、特に重視している活用法を紹介しました。それは「ブランド偏差値」と「認知率」をプロットしたグラフを使った自校の位置づけの客観的な把握と、その位置づけに応じた広報・PR活動などのポイントを示したものでした。

 渡邉氏によると、ブランドの成長には3つのフェーズがあるといいます。渡邉氏を第一のフェーズを「初期段階(ひろがる)」、第二を「成長期(とがる)」、第三を「成長期(よろこばす)」とネーミング。第一フェーズは「認知度・知名度がまだまだ低く、上げていくには金銭的・人的資源を多く投入し、十分な効果を得る必要がある段階」、第二フェーズは「認知度が広まってきたものの、競合校との差別化="とがる"ものが確立されていないため、他大学と差別化できる自校ならではの"とがる"特長の認知を向上させる必要がある段階」、第三フェーズは「さまざまなステークホルダーに対して、ブランドが魅力的に映っている段階」です。

 第三フェーズが目指すべきフェーズであることは間違いないのですが、渡邉氏は「受験生が同じ偏差値の大学に合格した場合に自校を選択してくれるかどうかといった『入学意向率』や企業サイドの『採用意向率』などの数値を経年でチェックしていくことで、ブランド力が維持できているかどうかを確認するのに役立ちます」と話しました。

 渡邉氏は「3つのフェーズを段階的にクリアしていくことで、ブランド力が着実に高まります。自校の広報活動は何を目的とするのかを検討する際や、自校のブランド戦略の効果を測定する際などに、大学ブランド・イメージ調査を活用していただければと思います」とアドバイスしました。