NIKKEI Media Marketing

セミナー

  • 日経メディアマーケティング × 英国 Acuris Risk Intelligence特別セミナー

日経メディアマーケティング × 英国 Acuris Risk Intelligence特別セミナー

 日経メディアマーケティングは2019年7月3日、英国の情報サービス会社、Acuris Risk Intelligence(ARI社、アキュリス・リスク・インテリジェンス)と共催で、「今、求められるAML、KYCを中心としたグローバル・コンプライアンスの課題と対策」をテーマに特別セミナーを東京・大手町で開きました。アンチ・マネーロンダリング(AML)対策やテロ資金供与防止、海外贈収賄規制問題などに詳しい弁護士が世界的な規制の現状と行方を解説、日本企業とりわけ金融機関が取るべき施策のポイントを指摘、ARI社からはグローバル・コンプライアンスに欠かせないKYC(Know Your Customer)に最適な情報ソリューションを紹介しました。

開催日時 2019年7月3日(水)
14時~16時15分(13時30分開場)
開催地 東京
プログラム 13:30 開場
14:00 主催者挨拶
14:10-15:10 「グローバルコンプライアンスの課題と対策」
鈴木 正人 氏 稲葉総合法律事務所 パートナー弁護士
15:10-15:20 休憩
15:20-16:10 「海外事例から見たKYC6が実現する、顧客・取引先チェック業務の大幅効率化」
Christophe Barel氏 Managing Director, APAC Acuris Risk Intelligence  ※逐次通訳付
16:15 閉会

講演1 鈴木 正人 氏 「グローバルコンプライアンスの課題と対策」

避けて通れないAML・KYC対策、その取引がテロや犯罪生む温床にも

 弁護士の鈴木正人氏はAML(Anti-Money Laundering/アンチ・マネーロンダリング)、KYC(Know Your Customer / 顧客確認)を 中心としたグローバルコンプライアンスの課題と対策を説明。鈴木氏は特に金融機関に対し、マネー・ロンダリング/テロ資金供与対策を充実させることの要請が高まっていることを強調、「ビジネスを行う顧客や取引関係者、その個人や企業が所在する国や地域、当事者の背後にいる支配者について、リスクを正確に把握しなければなりません」と話しました。
 具体的なリスクには(1)金融政策や支払い能力などの経済リスク(2)戦争・革命、テロなどの政治リスク(3)民族・宗教問題、騒乱・暴動などの社会リスクのほか、さまざま種類があるといいます。リスクを抱えている国・地域の相手先との取引はそのリスクがビジネスそのものに支障をきたすだけではなく、かりに取引は成立したとしても「その資金が新しいテロや犯罪を生む温床にもなりかねません」と指摘しました。
 すでに、各国の間ではさまざまな規制や法整備があり、鈴木氏は「日本企業にとって国内の法令やルールを守ることも重要ですが、海外との取引を行うグローバル企業は世界的に行われている規制などへの対応が必要になります」と話しました。

鈴木 正人 氏

「リスクベースアプローチ」の観点重要、不利益大きそうな国やルールから対応

 鈴木氏は例として、(1)外国公務員などに対する贈収賄・腐敗防止対応(2)事業会社の価格調整や入札の調整などで問題になる国際カルテル対応(3)イラン、北朝鮮、イスラム国など特定の国・地域やテロリストに対する経済制裁(4)AML(5)個人情報(パーソナルデータ)の保護規制(6)国際税務・税務コンプライアンス対応を挙げました。
 そして、「すべてに対応できればそれに越したことはありませんが、人員・予算等のリソースが限られるなか、企業の対応としてはまず、そういった規制に対応していないことによって生じる不利益が大きいと思われる国やルールから対応する『リスクベースアプローチ』という観点が重要」と加えました。

FATF相互審査が今秋、日本でも実施 大きなターニングポイントに

 こうした観点を踏まえたうえで、鈴木氏は2019年10~11月にかけて、マネー・ロンダリング/テロ資金供与対策について国際的に取り組む機関であるFATF(Financial Action Task Force on Money Laundering=マネーロンダリングに関する金融活動作業部会/通称「ファトフ」)の相互審査が日本でも行われることを紹介しました。
 「FATF勧告」と呼ばれる国際基準に沿って各国がAML・KYC対策の整備を行っているかどうか、FATFの審査団が加盟国に直接訪問し、モニタリングをするというものです。鈴木氏は「2019年5月現在、23カ国に対してこの第4次FATF相互審査が行われましたが、合格点が出ている国はわずか5カ国です」と注意を促しました。
 合格点が取れた国には通常のフォローアップが行われ、3年後に1回、状況の改善報告が課され、一方、不備があり不合格と判断された国は強化されたフォローアップがFATF側から課され、改善状況の報告をしなければならない頻度が高くなっていくそうです。

顧客調査、『信頼に足る証跡』求められる 異常取引検知へITシステム利用も

 鈴木氏はこのFATF相互審査をきっかけに、KYC関連において対応を求められる事項を解説。たとえば、顧客やその実質的支配者の本人特定事項を含む本人確認事項、取引目的などの調査には「『信頼に足る証跡を求めて行う』ということ、つまり顧客管理(CDD=カスタマー・デュー・ディリジェンス)の工夫が必要」と指摘しました。また、個々の取引に関して、(1)異常取引や制裁対象取引を検知するためには適切な取引モニタリング・フィルタを活用すること(2)ITシステムやマニュアルなども活用しながら、疑わしい顧客や取引などを的確に検知・監視・分析することなどの重要性を強調しました。
 そして、最後に、KYCの重要性について米国の財務省外国資産管理室(OFAC)規制の例を挙げて注意を喚起。この規制に基づいて、米国は指定した国・地域や特定の個人・団体などについて取引禁止や資産凍結などの措置を講じるもので、「制裁対象者が関与する米ドル建取引などは海外の銀行からの取引を制限される可能性もある」と話しました。「KYCへの対応を確実に行うことはこうしたビジネス上の不利益を回避することにもつながるのです」と講演を締めくくりました。

鈴木 正人 氏 稲葉総合法律事務所 パートナー弁護士

2000年東京大学法学部卒業。2002年弁護士登録。2010年ニューヨーク州弁護士登録。2010年4月から2011年12月まで金融庁・証券取引等監視委員会事務局証券検査課に在籍。著作書に『FATCA対応の実務』(共著、中央経済社、2012年)、『The Anti-Bribery and Anti-Corruption Review Fourth Edition』(共著、Law Review、2016年)、『Q&A営業店のマネー・ローンダリング対策実践講座』(共著、きんざい、2019年)など

講演2 クリストフ・バレル氏 「海外事例から見たKYC6が実現する、顧客・取引先チェック業務の大幅効率化」

取引関係におけるリスクの効果的管理を支援 データとアナリスト、最先端技術を融合

 Acuris Risk Intelligence(ARI)社のクリストフ・バレル氏は冒頭、自社について概要を説明、英国に本社を置き、デューデリジェンスおよびコンプライアンス向けのPEPs(外国政府などにおける重要な公人など)情報や制裁およびAMLに関する独自データを提供するグローバルデータプロバイダーであることを強調しました。「さまざまな不正やサイバー・セキュリティに関連した情報を含む世界有数のデータセットと熟練したアナリストと最先端技術とを融合させて、組織の取引関係におけるリスクの効果的な管理支援を手がけている」と話した後、ARI社が2018年から日経メディアマーケティングと日本国内におけるパートナー契約を結んで販売を始めた「KYC6 Search」という情報プラットフォームサービスを紹介しました。

クリストフ・バレル氏

世界140万人分のPEPs情報、DB100億件以上 分析にヒューマンインテリジェンス駆使

 ARI社が提供するサービスの強みは「ハイリスクの顧客の特定」。同社は500万件以上のハイリスクな個人や組織に関する情報を持ち、その中には140万人分のPEPsの情報も含まれています。また、データの盗難や詐称によって犯罪に使われた個人情報など、100億件以上を有するデータベース(DB)を所有。バレル氏は「サービスの特長は正確性、そして最新かつ関連性の高い情報である」と強調しました。その大きな要因として、「単純にスパイダーテクノロジーを活用してスクリーニングしただけのデータではなく、データの裏で必ず人が動いているヒューマンインテリジェンスを駆使していること」と加えました。

「リスクテイクのアプローチ」 システムに柔軟性、ユーザーが状況にあわせて設定可能

 バレル氏やARI社がデューデリジェンス(査定)を行ううえで重要視しているのが、効率的かつ柔軟に判断する「リスクテイクのアプローチ」。「たとえば、顧客を低リスク・中リスク・高リスクと3段階に分けて、それぞれのステージでスクリーニングやモニタリングの強化レベルを変えることができる」と話しました。
 個人・法人、またその法人の実質的支配者に対して、さまざまなステージでスクリーニングを実施。そして、「アルゴリズムを駆使してチェックを行いますが、そのアルゴリズムにはPEPsや制裁、否定的なメディア情報などさまざまなデータを設定していきます」(バレル氏)。加えて、自社が独自に持っているブラックリストなどもデータセットとしてアルゴリズムに入れてスクリーニングを行うといいました。
 スクリーニングの頻度や、そのデータ(制裁か、PEPsか、あるいは否定的メディア情報か)を重視するのか、などといった方法は、ユーザー企業が自由に選定できる特徴があり、アラートの設定なども可能で、「さまざまな状況に対応できる柔軟性を持たせたシステムであるというところがポイントです」(バレル氏)。

ウェブ上のサーチに加え、調査員現地派遣のサービスも 40以上の言語に対応

クリストフ・バレル氏

 さらに、バレル氏はARI社が具体的に取り扱っている「KYC6 Search」サービスの詳細を説明。大きな機能としてグローバルなリスク&コンプライアンス情報を個人と組織名で簡単にスクリーニングできる点を指摘しました。人物のプロフィルは詳細なドキュメントを抽出し、監査証跡として残すこともでき、写真入りのプロフィルで誤検出を防ぐことも可能とのことです。
 また、ARI社ではオンラインによる「KYC6 Search」のサービスに加えて、特に、ハイリスクな顧客・サードパーティーに対して、「デスクトップの文章をベースとしたサーチに、ARI社が現地に調査員を派遣して行なうサーチを組み合わせて、より厳格なデューデリジェンスの調査を行うこともできます」(バレル氏)。「調査にあたる人員として、40以上の言語に対応したチームがあり、情報源として4万3000件以上のグローバルな情報源を活用している」と説明しました。

オペレーション・コストと指定要件、バランス考える 「やり過ぎ」は事業にマイナス

 そして、セミナーの最後にバレル氏が言及したのがコンプライアンスに関するコストでした。「コンプライアンスの有効性はビジネス取引関係をスクリーニングし、モニタリングする組織の能力に高く依存し、確実に企業として行わなければならないことですが、重要なことはオペレーションのコストと当局から求められている指定要件とのバランスを常に考えるということです」(バレル氏)。「求められている以上のことをやり過ぎた結果、ビジネスにマイナスの影響が出るということは避けなければいけない」と話し、効率的な「KYC6 Search」サービスの有用性やメリットを強く示唆しました。

クリストフ・バレル氏 ARI(Acuris Risk Intelligence)社アジア太平洋地域責任者(Managing Director, APAC)

グルノーブル・ビジネススクール(フランス)卒。Capgemini(キャップジェミニ:コンサルタント企業)やArkadin(アルカディン:ビジネスコミュニケーション手段を一体的に提供する企業)、Altran(アルトラン:コンサルティング企業)のアジア・ヨーロッパ社などに在籍。2015年までの5年間は現在のARI社事業を手がけていた企業を買収したAcuris社のアジアパシフィック営業部長として法律とコンプライアンスのサービスを担当