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日経MM情報戦略セミナー「進化するメディア・データビジネスと情報収集活用法」

2019年5月16日、「進化するメディア・データビジネスと情報収集活用法」をテーマにセミナーを開催しました。SNSの普及やビッグデータ解析・AIテクノロジーの進展がもたらすメディア・データビジネスの急速な進化を日本経済新聞社編集局次長が最前線から報告するとともに、企業の社会的責任やコンプライアンスを確保しつつ、競争力の向上や「働き方改革」につながる効率的な情報収集・活用法について、実践に役立つノウハウやソリューションを紹介しました。

開催日時 2019年5月16日(木)14:00~16:45(13:40開場)
開催地 東京
内容 講演1「デジタルエコノミーの衝撃とメディア産業の対応」
日本経済新聞社 編集局次長 八田 亮一 氏

講演2「日経スマートクリップ plus導入事例」
日立金属株式会社 経営企画本部 コミュニケーション部 主任 吉原 正幸 氏

プレゼンテーション「日経BPビズボードの効果的な使い方」「日経の記事共有サービスのご紹介」

講演1 八田亮一氏 「デジタルエコノミーの衝撃とメディア産業の対応」

データ活用、創意工夫で日本企業も躍進 メディアはますます変化

覇権を握る米国4社 GAFAの表と裏

八田亮一氏

 日本経済新聞社編集局次長の八田亮一氏はセミナーの冒頭、米国の「GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)」の台頭を象徴するデータとして株式の時価総額世界ランキングを示しました。1989年(平成元年)のランキングは1位のNTTを筆頭に11社中8社が日本の企業です。しかし、2019年(令和元年)のランキングに日本の企業は1社も入っておらず、日本で一番時価総額の高いトヨタ自動車でさえ45位です。
 1位のマイクロソフトに続く2位から5位がいわゆる「GAFA」4社です。八田氏は「驚くべきはその時価総額の価値であり、GAFA4社で約360兆円、これはドイツのGDPに匹敵する価値」と紹介。さらに、「その成長スピードはこの10年で、たとえばAmazonの時価総額が30倍となるなど、デジタル社会の特徴は富が集中しやすいところにある」と強調しました。

アマゾンエフェクト=Death by Amazon

 GAFAはなぜ、台頭できたのでしょうか、その結果、産業界にどのような影響をもたらしたのでしょうか。八田氏はAmazonを例に解説しました。
 Amazonは書籍のネット販売会社としてスタートしました。競合も数多くいましたが、成功したのはAmazonだけです。八田氏によると、「Amazonが他と違った点は、経営理念『地球上で最もお客様を大切にする企業』にあります」と話しました。Amazonは設立して数年間は利益を出さず、お客様が喜ぶことに投資したそうです。
 投資は「主にデータの解析に向けられました」(八田氏)。
 顧客の買い物データをアルゴリズムで解析し、おすすめ商品を自動で表示するようにしました。そして、今では書籍だけではなく、あらゆる商品を扱っています。会員数は3億人を超え、仕入れなどスケールメリットを活かし、世界一のECサイトになりました。
 一方、Amazon台頭の影で、米国トイザらスや百貨店シアーズを始め、多くの企業が経営破綻に追い込まれ、変革を余儀なくされました。この現象をアマゾンエフェクトといい、八田氏によると、「アマゾンエフェクトで収益下振れが見込まれる小売関連銘柄約50社で構成される『アマゾン恐怖銘柄指数(Death by Amazon)』も設定された」ということです。

サービス利用の対価は個人情報の提供

 Amazonは最近、ECサイトだけでなく実店舗の事業を展開し始めました。特長は、レジがないということです。誰が何を買ったかは、店内のカメラ映像からAIが判断します。2021年には3000店舗に広げる計画があるといいます。
 「Amazonにしろ、Google、Facebookにしろ、便利なサービスを利用していることの対価として、個人情報の提供があります」と八田氏。誰が、いつどこに行って、何を買ったのか、全ての行動データが蓄積され、各社の大きな企業アセットとなっています。いま、ネットの広告はターゲティング広告が主流になり、その人の趣味嗜好や行動パターンを予測して広告を表示します。たとえば、八田氏の場合、「出張先のゴルフ場(趣味)の広告が表示される」といいます。そして、「これこそが、本当の恐ろしさで注意しなければならないことだ」と八田氏は警告しました。

紅い旋風BAT 中国の台頭

 巨大IT企業は米国だけでなく中国でも台頭しています。こちらはBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)といわれ、八田氏は「ECサイトのアリババは時価総額ランキング7位、SNSサービスのテンセントは8位です」と解説しました。
 八田氏は「アリババは、スマホ決済(アリペイ)を通して、お金の流れも把握しています。そして、恐ろしいのは中国人民銀行を通すことを義務づけていることです」と続けました。つまり、国が個人情報を吸い上げているということです。
 また、アリババが最近、開業した無人ホテルを紹介しました。八田氏によると、チェックイン、部屋の出入り、レストランの利用もすべて顔認証です。いまは一泊2万円ほどしますが、将来は、無料にする構想もあるということです。「個人情報が蓄積できれば、無料で構わないということ、つまり、それほど、個人情報は価値のあるデータなのです」(八田氏)。
 テクノロジーに詳しい八田氏は「顔認証によるAIの解析は驚くほど進化しています」と強調。中国ではコンサートや大きなイベントで、指名手配犯が監視カメラの映像解析で実際に逮捕されている事例も披露、「警察官がモニター内蔵のサングラスをかけ、リアルタイムで不審者や指名手配犯を特定するというSF映画のような話が実際に行われています」といいました。これも国が国民を管理できる中国ならではかもしれません。

セミナー風景
セミナー風景

日本はどうする したたかな復権策

 GAFAは規模、スピードの面で他国の企業を圧倒しています。では、日本の企業は勝ち目がないのでしょうか。八田氏は「実はまだ手つかずのリアルデータが過半数を占めている。それを活用することで日本は世界をリードできる」と展望しました。
 たとえば、日本は世界一の超高齢社会ですが、電子カルテや健康診断を活用すれば、その情報は新薬の開発や予防医学に大いに役立ち、ヘルス産業は大きく進展するはずです。
 また、「小売店にあるPOSデータは宝の山である」と八田氏は指摘します。いままでは誰が買ったかということまではわかりませんでしたが、クレジットカード会社や電子マネー会社と連携すれば、誰が買ったかもわかります。「いま、セブン&アイ・ホールディングスでは、金融を始めさまざまな異業種と連携して、新たな事業展開につなげようという試みを行っています」(八田氏)。
 このように、「創意工夫で日本企業も大きく躍進できる」と八田氏は主張しました。

新聞産業の未来は――進化する電子版

 新聞業界もデジタル社会進展の影響は避けられません。八田氏は「新聞発行部数は14年連続で減少しています」と説明しました。そして、2008年から、2010年3月に創刊した日本経済新聞電子版の立ち上げプロジェクトに参画した経験を振り返り、「創刊当初は、周囲から失敗する」といわれたそうです。しかし、日経電子版は進化を続け、いまでは65万人が購読するメディアになりました。八田氏は「デジタル時代になって、各メディアのあり方も大きく変わった」と話し、デジタル編集の最新ポイントを次の4つに絞って、解説しました。

(1)タイミング
 読者がどのタイミングで記事を読むのか、詳細なデータを分析し、配信しています。かつて、紙媒体が主流のころは、スクープは朝刊で届けるため、それまで内密にしていました。しかし、デジタル版ならいつでも配信できるため、読者が最も読むタイミングを見計らって、配信することができます。
(2)内容―解説・分析に価値を見いだす
 単に事実の報道だけではなく、その現象についての解説・分析に力を入れています。たとえば、大手企業のM&Aがスクープされると、それを分析し、その背景には何があるのか、産業界に与える影響は何かといった解説記事を出します。
(3)見せ方―ビジュアル・スマホを重視
 電子版はスマートフォンで見られることがほとんどです。デザインはスマートフォンの縦長の画面を意識し、見出しの入れ方や図版もスマホ仕様にしています。
(4)伝え方―ソーシャルメディアやテレビ出演も
 以前、新聞記者は顔を隠せ、記者だと分からないようにしろと教えられました。しかし、いまは逆です。いくらニュースを配信しても、そのことを知ってもらわなければ読んでもらえません。スクープが配信されると、記者はSNSでつぶやき、テレビ番組にも出演します。

 また、日本経済新聞社はデータに着目したデータジャーナリズムやVR(仮想現実)、AR(拡張現実)を積極的に取り入れていることを強調。さらに、企業の決算サマリー(発表数字をベースとして決算発表概要を示すコンテンツ)の配信は完全自動化され、AIが数秒で作成していることを指摘しました。
 八田氏は「メディアのあり方も変化し、今後もますます進化していくだろう」と締めくくりました。

八田 亮一 氏
1968年千葉県生まれ。’90年早稲田大学商学部卒業後、日本経済新聞社入社、産業部記者として電機、自動車、ITなどを担当。2003~2008年シリコンバレー、ニューヨーク駐在。08年~15年デジタル編成局編成部で日経電子版の創刊と運営を手がける。15年企業報道担当部長、16年メディア戦略部長、19年4月から現職。
 

講演2 吉原正幸氏 「日経スマートクリップ plus導入事例」

劇的に変わった業務効率、スマホ・タブレット閲覧が高評価

 日立金属は2018年6月から、日本経済新聞社とELNET社が共同で提供するデジタル記事共有サービス「日経スマートクリップplus」を導入、セミナーでは広報を担当する経営企画本部コミュニケーション部主任の吉原正幸氏に、その経緯と具体的な活用法、メリットなどを話していただきました。

紙ベースの回覧、遅滞するケースも PDF化など無断複写・電子化リスク

吉原正幸氏

 吉原氏によると、日立金属は自動車(EV)、産業インフラ、エレクトロニクスと幅広い業界に製品を供給しているため、情報収集には多くの媒体に目を通す必要があるといいます。変化が激しい時代だからこそ、重要な情報を社内で共有する必要性を感じ、広報部門として記事クリッピングを1994年からスタート、「4人態勢で毎朝30分から45分の時間をかけて作業をしてきた」と紹介しました。
 しかし、「A4の紙に記事を印刷していたが、うまく収まらない」、「少ない部数で回覧するため、どこかの部署で止まってしまうこともある」、「回覧した先で無断複写、電子化のリスクがある」―――などいくつかの課題を抱えていたほか、「広報部員がクリエイティブな仕事に専念できない」という悩みを感じるようになったといいます。

作業は「4人で180分→1人で10分」 グループ500人が円滑に情報共有

 「日経スマートクリップplus」はこうした記事クリッピング業務をなんとかしたいとの目的から検討。その結果、採用を決めたそうで、吉原氏は「配信対象は部長以上と国内外のグループ会社社長」、「閲覧方法はPC(パソコン)、タブレット、スマートフォン」など、現在の具体的な利用法を紹介しながら、導入ビフォア&アフターを紹介、「作業効率は劇的に変わった」と話しました。4人で行っていた作業は1人、しかも、時間はわずか5分~10分に短縮できたといいます。

■「日経スマートクリップ plus」導入前後の比較

  導入前 導入後
作業人数 4人 1人(交代制)
作業時間 60時間/月(30~45分/日一人) 2~3時間/月(5~10分/日一人)
配信対象 日立金属、国内外グループ会社 部長クラス以上、国内外グループ会社社長 計500人
備考 印刷枚数3~4万枚/月 印刷権限は役員と広報部門のみ
自社記事のみ紙クリッピング継続

新しい仕事にチャレンジ 広報が変われば、他部署にも良い影響

 導入後のメリットのひとつがタブレットやスマートフォンでも閲覧できるので、外出先や出張先でも情報が入手できるという点でした。「特に、海外に出向しているスタッフや、グループ会社の社長などは日本の情報を欲しがっているため、『タイムリーに閲覧できる』と評価が高い」と強調しました。
 吉原氏自身、今後、育休を取る予定。「会社のスマートフォンで家にいても情報を共有できるので、情報隔離のリスクを回避できる」といいます。
 吉原氏によると、今後は役員向けのメール配信を計画しているほか、配信対象の拡大を検討しているとのこと。広報部門としても、クリッピング作業から解放され、新しい仕事にチャレンジができたそうです。吉原氏は「広報部門はあらゆる部署との接触が多く、広報が変われば、他部署にも良い影響が出る」と話してくれました。

(日経MM情報活用塾メールマガジン7月号 2019年6月26日 更新)

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