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導入事例

導入事例 Case Study
宮川壽夫教授

NEEDS-FinancialQUESTを活用、理論と実践両面から
コーポレートファイナンスを実証研究

大阪公立大学(旧大阪市立大学)

商学部 教授 
宮川 壽夫 氏

導入しているサービス
  • NEEDS-FinancialQUEST(教育機関向け)

※2018年10月取材当時の内容を掲載しています。
 大阪市立大学商学部の宮川壽夫教授は自らのゼミナール活動のなかで、学生たちがコーポレートファイナンスを理論と実践の両面から学び、科学としてのオーソドックスな実証研究を体験してもらうために、日本経済新聞社が提供する企業、財務、証券、マクロ経済統計など幅広いデータを収録した情報サービス「NEEDS-FinancialQUEST(以下、FQ)」を活用している。企業を多角的でリアルな財務データを使って比較分析するだけでなく、データをもとに企業に取材やインタビューなどを行うことで、教科書ではわからない経営の現実や実践的な知識に触れられるよう指導、学問だけでなくキャリア形成にもプラスに働くことが多いという。宮川教授と実際に学んでいるゼミ生に、研究の実態や成果、課題などをうかがった。

大阪市立大学
1880年設立の大阪商業講習所にそのルーツを持ち、日本で初めて市立の大学として発足した旧制・大阪商科大学を経て、現在にいたる総合大学。8学部10研究科の多彩な学問分野を持つ。「理論と実際との有機的な連結を重視する学風」や市井の精神に発する自主独立・自由進取の気風を重んじ大阪の発展や日本と世界の未来を担う人間を育成している。

「企業価値の算定」プログラムに3年生から着手、企業や「三商大ゼミ」でも成果発表

―――宮川教授のゼミのテーマ、学習内容を教えていただけますか?

 宮川教授:大きなテーマは企業の価値を考えるコーポレートファイナンスの実証研究です。「理論」と「実践」、そのどちらも重視しています。ゼミ活動は3年生の4月から始まり、まず、コーポレートファイナンスの教科書をゼミ生全員で輪読して理論を学ぶとともに、同時に、FQを使って「企業価値の算定」というプログラムを進めていきます。

―――プログラムは具体的にどのようなものですか?

 宮川教授:このプログラムは毎年、定めた上場企業に対して取材・インタビューなどを実施し、その企業に関するレポートを作成、最終的にその企業に対して、プレゼンテーションを行うというものです。学生はいわばアナリストの立ち位置となり、企業分析やレポート作成を行います。分析のためには、過去に遡って財務内容の変化とその特徴を捉え、さらにその企業だけでなく同業他社を選んで、財務内容を比較します。こうした財務データ取得の際に、FQを活用します。
 企業へのプレゼンテーションを行うのは12月なのですが、同時期に「三商大ゼミ」を開いています。これは旧商科大学である一橋大学(旧東京商科大学)、神戸大学(旧神戸商業大学)、そして大阪市立大学(旧大阪商科大学)の3つの大学が合同で行うゼミですが、ここでも研究発表・プレゼンテーションを行います。昨年は「ファミリー企業の優位性」をテーマに発表を行いました。この研究をもとに論文も作成し、これは学内の学会誌に掲載します。もちろん、この研究発表では大量のデータ分析を行うため、FQを大いに活用します。
 このように、当ゼミではFQの利用は切っても切り離せないツールとなっています。新入ゼミ生が4月に入ってきたら、すぐに日経メディアマーケティングの担当者の方を招き、FQの使い方を学ぶ講習会を開くのが恒例となっています。
大阪市立大学正門

何回もデータを取得し、仮説を実証 定性的な視点と組み合わせて卒論へ

―――学生のみなさんは、FQをどのように使っていますか?使い勝手はいかがですか?

宮川教授とゼミ生
 谷上恵海さん(3年生):現在、進めている「企業価値の算定」プログラムでは、私のチームは飲料販売を事業とする企業の分析を行っています。その企業と同業他社の財務諸表をFQで引き出し、財務内容の特徴を比較して見ています。何回もデータを取っていくうちに、自分が必要とするデータを簡単にダウンロードできるようになり、操作も慣れていきました。
 西尾潤さん(3年生):12月の三商大ゼミに向けて、「社名変更が株価に与える影響」をテーマに研究を進めています。企業が社名変更を発表した日と、その前後60日分の株価をFQで取得し、その推移を見て、どのような影響があるのか検討しています。何度もデータを取りに行くので、最近図書館の方が「FQですね」と使用申請書を先に出してきてくれるようになりました(笑)。
 原田春貴さん(4年生):卒業論文の執筆を進めています。株価の配当とインタンジブルズ(無形資産)が研究テーマです。日本企業で配当がどのように推移してきたかを調べるため、これまで上場した全企業の一株当たりの配当データをFQで取得し、増配・無配・減配・据え置きに分類してグラフを作成しました。そこから、インタンジブルズと配当の関係性を調べていきます。ROE(自己資本利益率)、ROA(総資産利益率)、DER(負債比率)などの説明変数をFQで取得した財務データから算出し、統計的な分析を行うという手法をとりました。最初に使った変数で仮説がうまく説明できない場合は、また、別の財務データを取り直すなど、いろいろなやり方を試しているところです。データを多く扱うので、一括でまるごとデータが取れるFQは非常に使いやすいと感じています。
 齋藤聖矢さん(4年生):「広告宣伝が企業価値に与える影響」が卒論テーマです。まず、過去10年の上場企業の広告宣伝費をFQから抽出しました。宣伝費を開示している企業の中からさらに財務データが揃っている会社に絞ると、約250社まで絞り込むことができました。企業における広告の位置づけはそれぞれ異なるため、そこは定性的な視点が必要です。定量的な部分はFQを活用しつつ、定性的な部分においても自分の考えが及ぶような論文を書き上げることが目標です。

具体的なファクツもとに、社長や取締役など経営陣とインタビューで“対峙”

―――ゼミではFQ必須ということですが、学生のときにFQを使って研究を行うことのメリットをどうお考えでしょうか?

 宮川教授:うちのゼミの特徴は「いきなりデータを触ったり企業分析をしたりしない」というところです。まず、きちんとコーポレートファイナンスに関する教科書を読みこんで理論を把握し、その上で企業訪問や企業分析など実践を行います。
 FQを使って企業の実体を見る作業は、医学部で言えば臨床実習のようなものです。最初の理論を学んで得た知識をどう使って世の中を見るのか、というときに、FQのデータが橋渡しになります。FQを使って企業分析を行ったあと、その企業を訪問します。そのときFQのデータからの分析や具体的な数字、ファクツがあるからこそ、社長や取締役など経営陣と対峙したときにも議論ができます。
 FQで企業分析するのは決して楽な作業ではありません。しかし、企業の人が貴重な時間を割いて会ってくれる以上、こちらもそれなりの準備が必要ですし、学生自身がしっかり努力をしないといけない。そういうこともFQのデータ分析を通じて伝えたいと思っています。
ゼミ風景

より分かりやすく伝え、広く世の中に発信したい 「プレゼン力」「説得力」鍛える

―――FQを使ってコーポレートファイナンスの研究を行うことで、ご自身の成長や変化を実感されることはありますか?

 齋藤さん:ファイナンスというファクターを通して学部の授業を理解することができるようになりました。就職活動でも、私は証券会社を中心に受けていたのですが、3年生で行うFQを使った企業分析は、ほとんどプロのアナリストがやっていることと同じです。面接官の受けも良く、しっかりと話ができました。学生時代に学んだことを、就職後にそのまま生かせたらと思います。
 宮川教授:4年生を見ていると、1年でこんなに成長するのかと毎回、驚きますね。たとえば、FQの使い方を後輩に教えるなど、ゼミで大事にしていることを伝承してくれていると思います。
 原田さん:先生は特にプレゼンテーションの方法をしっかり指導されます。企業での発表や学外ゼミなど、外で発表する機会が多いので、どういえば伝わるのかといった「プレゼン力」は鍛えられます。
 宮川教授:私はもともと投資銀行出身で、ビジネスの世界にいました。FQで単にデータを作成するだけでなく、それをどのように理解して、どのようなシナリオに仕上げて、どのような工夫で伝えるかが大切です。相手を納得させるための説得力も、学生には武器として持ってもらいたいと思っています。

成果をデータベース化へ、アクセス可能に テーマ引き継ぎ、さらに高いレベルへ

―――ゼミとしての今後の目標をお聞かせください。

 宮川教授:ゼミが現在7期目です。私の赴任当初からFQを使っており、FQから取得したデータを基にした研究も蓄積されてきました。いま、4年生に協力してもらい、卒業生を含めたこれまでの研究データを集大成して、みんながアクセスできるようなシステムを作成しているところです。データを蓄積してみんなが閲覧できるようにすることで、より発展した研究に進化させたいと思っています。
 先ほど挙げた、昨年の三商大ゼミでの研究「ファミリー企業の優位性」も、もともとは前の代の先輩がやり残したテーマを、次の3年生がグループ研究で行ったものでした。そして、いま、そのうちの1人が卒業論文でさらにその内容を発展させています。学生の努力がその場限りで終わらず、受け継げるようにすることは非常に良いことだと思っています。
 いま、行っている学習も、学部としては相当高いレベルのことを行っているので、これまでの蓄積された研究とともに、より広く世の中に発信したいですね。大阪市立大学の宮川ゼミに聞けば、こんなデータが揃っているよ、と認知されるようになったらうれしいです。
大阪市立大学キャンパス

―――本日はお忙しいなか、ありがとうございました。

(日経MM情報活用塾メールマガジン12月号 2018年12月17日 更新)

プロフィール

大学名 大阪市立大学
創立 1880年
所在地 大阪市住吉区杉本3-3-138
学生数 6,595人(2018年5月1日現在)
学部 商学部 経済学部 法学部 文学部 理学部 工学部 医学部医学科 医学部看護学科 生活科学部

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