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文京学院大学

導入事例 Case Study
文京学院大学キャンパス

不正会計防止をテーマに
学生とともにデータを実証分析

文京学院大学

経営学部 教授
中島 真澄 氏

導入しているサービス
  • NEEDS 日経財務データ DVD版

 文京学院大学経営学部の中島真澄教授は会計学を専門に先進的な研究を進め、2020年、ゼミナールの学生から学生の会計学研究発表大会である「第5回 アカウンティングコンペティション」で最優秀賞受賞者を輩出しました。自らの研究や講義、ゼミ活動に日本経済新聞社が提供する『NEEDS 日経財務データDVD版(以下、NEEDS)』を活用、研究テーマにあわせた実証分析に取り組んでいます。中島教授に最新の研究課題や成果、学生たちとの活気あふれる講義・ゼミ活動の様子と今後の展望についてうかがいました。

不正会計のメカニズムを解明、予測の構築をめざす

--- NEEDS導入の経緯についてお聞かせください。

 当初は、財務諸表データを用いて教育および研究している教員および関心のある学生に活用してもらえるように導入しました。会計の研究テーマは大きくシフトしています。これまでは企業の実態をいかに正確に財務諸表などで「見える化」するかといった、規範的なアプローチが主でした。あるべき会計基準や会計制度の理想を研究するものです。一方、現在のグローバルな会計学の潮流は実証的アプローチです。会計情報からどんなことが読み取れるかということを研究するものです。たとえば、経営者の意図的な裁量行動を読み取る場合もあります。つまり会計研究は「会計情報を作成」だけではなく「会計情報を活用する」時代にシフトしているといえるかと思います。
 私の研究テーマは「経営者の裁量行動と会計不正に関する理論と実証の融合的研究」です。企業の財務情報、非財務情報を分析することで、会計不正発生のメカニズムを解明し、さらには会計不正を予測できるかどうかを研究するものです。
 残念ながら、2019年全上場企業の「不適切な会計・経理」を開示した上場企業は前年より増加し、過去最多となりました。他の先進国からみるととても奇異なことで、「世界では会計不正は減少しているのに、なぜ、日本のような経済大国で会計不正が増加しているのか」と疑問に思われています。もし会計不正予測手法が構築できれば、投資者、監査人、規制当局などにとっても有用ですし、企業側に対しては会計不正関与を牽制することもできるのではないかと考えています。
 この研究にはまず膨大な財務諸表のデータが必要になります。そのために、NEEDSを導入いたしました。

過去の不正会計企業をベースに調査、正しい企業と同規模・同業種で比較

--- 中島教授のゼミでもNEEDSを活用しているとお聞きしました。具体的な活用方法を教えてください。

 ゼミのテーマは「財務会計研究」です。財務会計の知識を踏まえて、さまざまな経済現象を説明したり、予測したりするゼミです。特に、私の研究テーマでもある会計不正の検出手法を構築するのが大きなテーマです。
 ゼミでは、人がなぜ不正を働くのかという要因を示す「不正のトライアングル」理論などを適用します。要因の一つめは動機(モチベーション・インセンティブ)、二つめは機会、三つめは自己正当化です。この3つが同時に存在したとき、人は不正を働くという理論です。私が発表した論文では、3つの要素それぞれに財務諸表数値をあてはめて不正を予測できないかと検証いたしました。
 専門的な話になりますが、会計発生高(アクルーアル、Accrual)という指標があります。決算上の利益と現金収支(キャッシュ・フロー)の差異のことです。会計発生高は利益が現金収入を伴う「質」の高い利益かどうかを検証するための指標で、不正会計の検証にも使われます。この会計発生高に特化して分析を進めています。
中島真澄教授
 NEEDSから活用するデータは連結財務諸表のなかから主に3つ、(1)連結損益計算書(2)連結キャッシュ・フロー計算書(3)連結貸借対照表から変数を抽出します。期間は2000年からのデータを活用します。2000年は会計ビッグバンといわれる会計基準のグローバル化が始まった、会計の転換期です。
 まず、過去に不正会計を行った企業をベースに調べていくのですが、不正を行っていない企業との比較をしながら検証していくことも大切です。その点、NEEDSを活用すれば、資産と業種で検索をかけると、同規模、同業種の企業の財務諸表数値を簡単に抽出できます。不正企業と非不正企業を比較した検証ができるので、とても便利ですね。

データベースづくりで「研究の楽しさ」実感 学生に自発性、独創性に意気

--- 学生にとってのNEEDSの使い勝手や、その反応はいかがですか?

 NEEDSの操作については、学生を含めて、オンラインセミナーを開催し説明していただきました。学生の間でもわかりやすかったと好評でした。今の学生は一度覚えるとあっという間に使いこなすようになります。
 以前は、一社ごとに過去の財務諸表の数字を一つひとつ取り出し、手入力しながらデータベースを作成していましたが、とても膨大な時間を要します。
 その点、NEEDSはデータベースづくりに、とても利便性が高いですね。たとえば、自分の調査対象としている企業のデータが一度にダウンロードできます。取り出したデータを各自加工してグラフにするなど、学生はデータベースづくり自体を楽しんでいます。そうなると、自分のつくったデータベースから、いろんなものが読み取れるようになる。次はあれを試してみよう、これを試してみようということになります。
 会計学の基礎理論を学ぶ過程において、データベースを用いて財務諸表数値を検証することで、私が教えるより先に答えを導き出すことがあります。データベースを用いて財務諸表数値を分析することで、学生自らが勉強したり、研究したりする前向きな姿勢が身についたようです。
 ゼミ生から「研究がすごく楽しいです」と言われたとき、データで分析をする楽しさを学生が学んでくれたということですから教師冥利に尽きます。ゼミのテーマは、先進的なテーマですから、誰もやっていない独自性の高い研究に自らすすんで取り組む楽しさを見出したのでしょう。これは学生の人生にとっても非常に意味のあることだと思います。

最優秀賞、テキスト・マイニングから不正検出に挑戦 自信と団結力生まれる

---学生の会計学研究発表大会である「アカウンティングコンペティション」で最優秀賞と学生最多得点賞を獲得しました。

アカウンティングコンペティション発表資料
 文京学院大学では2年生からゼミに参加しますが、アカウンティングコンペティションでは2年生のチームが受賞しました。知識としては1年次で簿記原理を身につけ、2年次で会計学の基礎を学びつつ、ゼミで実証分析手法を学修し、結果を出したことになります。
 受賞チームのテーマは「テキスト・マイニング分析によって不正を検出することが可能か:建設業と小売業の実証研究」です。審査員からは挑戦的テーマだと評価されました。これは非財務データのテキスト分析です。先述の「不正のトライアングル」の三つめに挙げた経営者の「自己正当化」を検証するのに財務諸表数値の検証だけでは難しいと考え、テキスト分析を試みたものです。受賞した学生たちは、今後は財務諸表数値データと照らし合わせて研究を進めたいとモチベーションも高まっています。
 学生にとってはコンペへの参加は大きかったと思います。他流試合に参加したことで、一人ひとりの自信にもつながりましたし、団結力も生まれました。いまでは、私は指示していないのに、チームごとに毎週オンライン会議をしているようです。明らかに、学術研究への意識が変わりました。

世界トレンドの会計を研究、学生にも求めたい英語発信力

---今後の展望、期待をお聞かせください。

 経済現象などを紐解く場合に、データで実証することは最も説得力がありますので、データベースを用いて実証していくのは社会科学の王道だと思っています。活用する元データが日本経済新聞社のデータであれば、日本のみならず世界的にも信頼性が高いです。NEEDSはその点で安心感もあります。
 会計研究は世界的にみても、学際的な理論の適用および新概念の導入など、進化しています。これからは伝統的な会計研究だけではなく、世界の潮流としての会計を研究する必要があります。日本の場合は、不正会計問題に対しては、ガバナンスの強化が社会的課題でもあります。日本の不正会計は世界からも注目されているテーマですので、私も論文は英語で作成しますが、学生にもできれば英語で世界に発信してもらいたい。そういう研究手法を身につけて社会へと羽ばたいてもらいたいと思います。
(2021年3月19日 更新)

プロフィール

大学名 文京学院大学
開学 1991年
所在地 本郷キャンパス/東京都文京区向丘1-19-1
ふじみ野キャンパス/埼玉県ふじみ野市亀久保1196
学生数 4,811人 (2020年5月現在)
学部・大学院 外国語学部 経営学部 人間学部 保健医療技術学部
大学院(外国語学研究科・経営学研究科・人間学研究科・保健医療科学研究科・看護学研究科<2021年4月開講>)
Webサイト https://www.u-bunkyo.ac.jp/

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