NIKKEI Media Marketing

金沢工業大学

導入事例 Case Study

DX時代の人材育成に向け
実践的マーケティング演習を推進

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情報フロンティア学部・経営情報学科 教授
松林 賢司 氏

導入しているサービス
  • 大学授業・ゼミナール支援パッケージ
  • 日経テレコン(教育機関向け)

 DX(デジタルトランスフォーメーション)が加速するなか、大学にはビッグデータを分析し経営者へ提言を行える、高度な情報処理能力と経営力のマルチな能力を兼ね備えた人材の育成が求められている。「共同と共創」の精神で外部の英知を取り込み、授業に活かしている金沢工業大学は、日本経済新聞社グループが提供する「大学授業・ゼミナール支援パッケージ」サービスを採用、ビッグデータとして日経POS情報を使って実践的なマーケティングの演習を行った。その狙いと成果を松林賢司教授にうかがった。

データサイエンティストの素地磨く、ビッグデータからビジネス構築体験

--- まずはサービス導入の経緯からお伺いできますでしょうか。

 私が所属している金沢工業大学の情報フロンティア学部・経営情報学科では、ビジネスに役立つイノベーションやマーケティングの知識を持ち、かつ理系の考え方ができる、すなわち定量的な分析ができる学生の育成をめざしています。
 前身は今から約50年前の「工学部経営工学科」にあり、当時、経営工学の学科があったのは東京工業大学と金沢工業大学くらいで、日本の大学でも歴史がある学科です。
 経営工学は工場管理や品質管理を統計的な考え方に基づいて行い、経営をサポートする学問です。それが高情報化社会になり、ICT(情報通信技術)が入ってくると、ソフトウエアを使って工場管理、品質管理を行う、非常に高度なものになってきます。その高度な技術に対応するため、本学科の名称も「情報経営学科」に変更されました。さらに、ICTを用いながら工場管理、品質管理を進めるなかで、求められてきた人材が生産管理、品質管理、労務管理、財務管理など会社全体の管理を行い、経営層の戦略サポートができる、あるいは実際に経営者になれる人材です。
 経営工学に情報学が加わり、さらに経営学が加わったことで、最終的に学科も情報経営学科から今日の「経営情報学科」に変更されました。
 特に、今日のビジネス社会で注目されているのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)です。そのため、大学にもビッグデータやICTを駆使した分析手法で情報を収集・加工し、会社経営に対してしっかりとした提言をしていく「データサイエンティスト」の要素を持った人材の育成が求められています。
 その点、従来から取り組んできた経営工学と情報学に経営学を加えた当経営情報学科はデータサイエンティストに必要な3要素、すなわちビジネス、データ分析、データエンジニアリングを網羅しています。わかりやすくいえば、いま、実際に企業や社会で求められる人材を育てるための、最新のビッグデータを用いた分析ができる人材、またはそこに携わる素地を持つ学生を育てて行くという方向性が確立されているのです。
 その流れを受けて私が担当しているのが3年生の「経営情報専門実験・実習A」(マーケティング演習)という科目です。これは理系の学部・学科でいえば、工学における最終的な知識をベースに、実際に実験を行って工学専門分野のスキルを磨くための経験を得るという内容です。建築学部なら建築のモックアップを作り、工学部だったらロボットを作って動かしてみるというようなことです。
 もちろん、これら理系の学部のような「実験」はできませんが、その代わりに、学生に実際のビジネスを経験してもらう授業を私が担当になってから進めています。社会が求めるデータアナリスト、データサイエンティストとしての素地を磨くため、ビッグデータを用いた分析からビジネスを構築し、新しい商品やサービスの開発を行います。
 こうした授業をやりたいと構想していたとき、幸運にも日本マーケティング学会で日経メディアマーケティング(以下、日経MM)の担当者と会い、日経POS情報のビッグデータの話をうかがい、検討のうえ、導入させていただきました。

日経POS情報からデータを分析し、「金沢で売れる新商品」を学生が開発

--- 具体的な授業・演習の内容を教えてください。

 私がいま担当しているのは、経営学の中でも「ストラテジック・マーケティング」といわれる内容です。実験演習自体は経営学に特化したAと、情報学に特化したBとがあり、私が担当するのはAの経営学のカテゴリーです。
 まず、授業の前半はビジネスプランを作り、起業の演習をします。後半は新製品、新サービスを実際に開発し、街に出て販売をする、マーケティング演習を行います。
 マーケティングに際してはデータを収集・分析して市場の現状を確認、さらにはその先読みをして、そこに新しい商品・サービスを投入します。いままで感覚でやってきたものが、日経が提供する最新のビッグデータを使って理論的に分析できるようになりましたので、学生にとっても非常に有意義な経験ができているのではないかと思います。

--- 今回はビッグデータと分析ツールがセットになった「大学授業・ゼミナール支援パッケージ」サービスを利用したと聞いています。どのようなかたちで使ったのですか?

 まず、学生を5人から7人の5チームに分けて、それぞれのチームがマーケティングのフレームワークに基づいて新商品やサービスを開発します。そして、最終的には金沢市の中心地にある商店街に模擬店を出して、そこで一定期間、販売実験します。金沢市の商店街で何を販売すれば売れるのかということを調査・分析し、実際の新商品、新サービスに落とし込むわけです。そして、実験の結果、売れた、売れなかった、という結果に対する原因の分析と、最終的な収益を発表資料にまとめ、プレゼンテーションします。このようなかたちで半年間取り組む演習になっています。
 各チームが日経POS情報「POS EYES」を使った分析を基に、商品開発の根拠を作成して、「金沢を元気に」というコンセプトのもと、商店街に模擬店を出店する予定でした。金沢市の中心部のデパートの1階広場に出店し、1日販売をしてその販売額を競うことを目標としていたのです。しかし、残念ながら、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、出店は見合わせとなりました。リアルな経験をするという前提でカリキュラムを作っていたのでこれは大変残念なことでした。
 しかし、その代わり、商品説明のフライヤーと数分程度のプロモーションビデオを学生が制作し、金沢市の商店街振興組合の理事・事務局のみなさんに見ていただいて、販売予想をしてもらうというかたちにしたのです。仮に出店をしたという前提で、こういう商品だったら何個ぐらい売れるか、それを商店街の皆様に予想していただき、その結果をもってバーチャル売上として売上成果を競うというかたちで最終発表会を行いました。

各チームの取り組み内容

 マーケティング演習に参加した5チームは日経POS情報「POS EYES」によるデータ分析を駆使して、金沢の商店街で売れる新商品・サービスの開発・販売に取り組みました。また、STP、4P、SWOT(※)分析などのマーケティング理論をベースに事業計画を立案し、生産コストの内訳や、予想売上と売上総利益まで算出しています。
 アイスとお菓子を組み合わせたパフェを開発したチームは日経POS情報のデータから、「石川県はアイスと和菓子の消費率が全国1位で、甘党の人口が多い」というところに着目しました。
 アイスクリームを開発したチームは同じく日経POS情報で「アイスクリーム購買層の1000人当たり金額が北陸は全国の約1.5~2倍」「上位にはバニラ・チョコが多い」というデータ分析に加え、日経テレコンで探し当てた「金沢市民はアイスを食べる人が多い」「加賀藩が栄えた江戸時代に茶の湯文化が浸透したことで、甘いものが好まれるようになった」という記事も事業計画の論拠としています。 
中間発表

 大学芋とアイスクリームの組み合わせを考えたチームは日経データの分析から、「2019年7月~10月までに、『限定』を商品名に含むチョコレート製品を分析したところ、全国、北陸のABC分析ランキング4位に安納芋味がランクインした」ことに着目します。
 さらにEXCELで「限定」を商品名に含むチョコレートの1000人当たりの金額と平均価格の図を作成したところ、北陸は他地方と比べて圧倒的に金額が少ないことがわかり、そこに市場の「伸びしろがある!」と判断して商品開発に取り組みました。

 ちなみにアイスクリームの案が多数だったのはちょうど予定していた模擬店出店が真夏の7月末だったという季節要因もあります。
 各チームが作成したプロモーション動画もユニークで、笑いを交えたコミカルな動画の(大学芋&アイスクリームの開発チーム)、ジャズのBGMに乗せてスタイリッシュに見せるボトルドリンクの作り方(ボトルドリンク開発チーム)、商品の美味しさ、メリットとチームのメッセージをふんだんに盛り込んだアイスクリーム開発チームなど、どれもプロ顔負けの完成度の高いものでした。
 商店街の方からも好評をいただき、また、商品の売上予想なども出していただいて、その結果をもって、実際に出店して得る予定だった収益の代替としました。

(※)
「STP」:セグメンテーション(Segmentation)・ターゲティング(Targeting)・ポジショニング(Positioning)
「マーケティングの4P」:製品(Product)・プロモーション(Promotion)・流通(Place)・価格(Price)
「SWOT分析」:強み(Strengths)・弱み(Weaknesses)・機会(Opportunities)・脅威(Threats)

90%以上が満足、「ビッグデータに関する理解深まった」

--- 新型コロナウイルスの感染拡大で、今回の演習を進めていくなかでも、やはり対面授業だけではなく、オンラインによるリモートの講義なども交えながら進められていったのですか。

 日経POS情報のデータ収集・分析の特別講義では、大学の方針で対面講義ができなかったため、日本経済新聞社と日経MMのご担当者にリモートで対応いただきました。授業に関しては感染予防対策を万全にした状態で、対面で行いましたが、今季はオンラインと対面の半々で授業を行っています。

---演習を終えて、学生の評判はいかがでしたか?

 日経・日経MMの関係者の皆様にすばらしい講義とサポートをいただきまして、学生の満足度も高かったです。90%以上の学生が、ビッグデータに関する理解が深まったと評価しています。
■前期演習終了時のアンケート結果:「はい」と答えた比率
Q.演習以後にビッグデータが何か?説明できるようになりましたか? 79%(演習以前:38%)
Q.ビッグデータ演習は面白かったですか?             97%
Q.今回の演習でビッグデータに関する理解が深まりましたか?       97%
Q.ビッグデータ演習における日経MMの使用は効果的でしたか?    90%
Q.今回のビッグデータ演習を後輩にも勧めたいですか?          90%  

就職活動に役立つ、現場での対応力を示せる効果大きい

---先生ご自身としては今回の試みについてはどのように感じていますか。

 もちろん、大変満足していますし、事例報告として大学の論文集に投稿して掲載してもらおうと思っています。
 なにより、今回の経験がなぜ学生にとって有意義かと言えば、就職活動に役立つということです。面接では、自分が大学生活で何をしたかということが必ず問われます。その際、たとえば、工学部であれば、「こんなロボットを開発しました」と写真を見せれば、その成果が面接官にもわかりやすく理解されますよね。いままでマーケティングの学部でそういうことはできていませんでしたが、今回のようなマーケティングの実演、経営学の実験で、実際に自分で店を開き、商品開発をして提案し、さらに本当に売ってみました、という経験をした学生は採用する企業側にとっても魅力的ですよね。
 今後もやはり、そこはこだわりたい部分です。実は昨年までは、学生が本当に新商品の販売をしていました。ぜんぜん売れないチームもありましたし、1万円の原資を10万円に増やしたチームもありました。
 それがビジネスというものです。仮に売れなくても、企画がしっかりできていたのか、いなかったのか、後で検証してみると、原因がわかってきます。その経験は、社会に出て、実際のビジネスの現場で役立つ対応力を磨きます。それがこの授業を私がやらせていただいている意味だと考えています。
 日経MMや、ほかにもマーケティング理論や動画作成を指導してくださった先生、市場情報を提供してくださった商店街振興組合の理事会・事務局、また、資金提供していただいたOB会(経工会)など、さまざまな外部の皆様の協力をいただきました。もともと、金沢工業大学には「共同と共創による教育研究の実現」をめざすというビジョンと実践目標がありますが、それがいまの授業に存分に発揮されていると思います。

--- ありがとうございました。

(2021年1月6日 更新)

プロフィール

大学名 金沢工業大学
創立 1957年
所在地 扇が丘キャンパス(メインキャンパス)/石川県野々市市扇が丘7-1
やつかほリサーチキャンパス/石川県白山市八束穂3-1
白山麓キャンパス/石川県白山市瀬戸辰3-1
学生数 6,415人 (2020年5月1日現在)
学部・大学院 工学部、情報フロンティア学部、建築学部、バイオ・化学部、環境・建築学部
(学部改組に伴い、募集停止または名称変更を行った学科含む)
Webサイト https://www.kanazawa-it.ac.jp/

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