NIKKEI Media Marketing

導入事例

導入事例 Case Study
現代経営学部 准教授 八塩 圭子 氏

コロナ禍をプラスへ転換、
実践的動画コンテンツでリモート授業に刺激

東洋学園大学

現代経営学部 准教授
八塩 圭子 氏

導入しているサービス
  • テレ東BIZ 教育機関向け
  • 日経テレコン(教育機関向け)

 新型コロナウイルス感染症拡大により、多くの大学ではオンラインによるリモート授業を余儀なくされている。経営学・経済学・マーケティングの「理論および実践」を学ぶことを目標に掲げる東洋学園大学現代経営学部では、リモート授業ではなかなか教えきれない「実践」面を充実させるため、実際のニュースやドキュメンタリーなどの経済番組をインターネット上の動画コンテンツにまとめた「テレビ東京ビジネスオンデマンド」を教材として活用し始めた。その導入の経緯や成果について、同学部の八塩圭子准教授にうかがった。
 

※「テレビ東京ビジネスオンデマンド」は2021年4月12日『テレ東BIZ』としてリニューアルしました。

生き生きとした教材を求めて、かつて在籍したテレビ局にメール

--- 導入の経緯を教えていただけますか。

 新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、大学では現在、オンラインによるリモート授業が続いています。本学も2020年度春学期は対面を避け、学生の通信環境に配慮しつつ、各教員が工夫しながらリモート授業を実施しました。私の場合は、ゼミなど演習科目はライブで行う一方、大人数の講義科目は、自分で録画した動画をストリーミングで配信し、学生はそれを見て課題を行うなど、内容に合わせて授業形式を選択しました。
 こうしたリモート授業では当然ですが、外部講師の方を招いてご指導いただいたり、学外研修として実際の企業を見学したり、グループワークやケーススタディを行ったりすることは簡単にはできません。生き生きとした授業、学生に興味を持ってもらえるようなコンテンツを提供することがとても難しい状況です。
 このままではシラバスで謳っている「理論を踏まえたケーススタディ」が不十分になり、学生に刺激を与えられないと考えたとき、リモートでも生きた教材を提供できるのはやはり動画ではないかという考えに至りました。そこで導入したのが「テレビ東京ビジネスオンデマンド(以下、BOD)」だったのです。
東洋学園大学ロゴ
 テレビ東京BODは個人的に長く契約をしていましたし、私自身がテレビ東京に在籍していたこともあって、内容はよく知っていました。そこで、ここで配信されている動画を教材として授業で使えないものかと考えて、テレビ東京のサポートにメールしたのです。
 リモート授業ですから、図書館などで視聴する通常の教育機関向けの契約とは異なり、権利関係をクリアするのは難しいかなと思ったのですが、こちらの希望を述べて、やり取りした結果、1カ月ほど経って利用の許可が下り、6月末から使い始めました。

ディズニーとUSJ、顧客満足度向上をめざす取り組みを比較

--- 具体的にどういう番組をどのように授業に活用されていますか。

 私が担当している「サービスマーケティング」という授業で活用しています。たとえば、その日の授業のテーマが「顧客満足」だとしたら、そもそも顧客満足とは何か、その概念をどう評価するのか、どのように評価基準を決め、どのように調査するのかといった「理論」をまず、学びます。さらに、こうして学んだ理論を使い、ケーススタディをやってもらいます。そこで、活用するのがテレビ東京BODです。
 顧客満足がテーマの時には、テレビ東京の人気経済ニュース番組であるWBS(ワールドビジネスサテライト)から、東京ディズニーリゾートとUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)の動画を使いました。
  USJは斬新なアトラクション、サービスなどを導入してディズニーに迫る勢いを見せて、顧客満足度がかなり上昇した時期の動画、そして一方のディズニーについては、一時期、顧客満足度が下がり低迷が続いた後、さまざまな施策を打ち出して、再浮上を図る過程の動画です。2つを学生に見せて、顧客満足の視点から、USJと東京ディズニーリゾートとを比較して考察させたり、ディズニーに関して顧客満足度を再び上げることができるかどうか、どのような経営のアイデアが必要かというテーマを与えたりしました。
東洋学園大学 外観
 テーマは毎回、変わります。サービスコンセプトの4タイプ(※1)について学習したときにはスポーツスクールやイベント、ヘルスケア事業を手がけるリーフラスという会社が経済ドキュメンタリー番組「カンブリア宮殿」で紹介されていたので、その動画を見せて、同社が展開しているいくつかのサービスがどのタイプに当たるのかを分類するという課題を与えました。また、サービスマーケティングの7P(※2)を教えた時には、「ガイアの夜明け」で放送していた「カシータ」というレストランの動画を見せて、このレストランの7Pを分析するという課題に取り組んでもらいました。
 基本的にはこのように、理論を勉強したうえで、その理論に即した動画を見つけ、その動画を学生に見てもらい、考察してもらう、というスタイルです。
(※1)サービス・コンセプトの4タイプ
近藤隆雄『サービス・マーケティング』(2010、生産性出版)の中でまとめられている。それによると、サービスコンセプトには「特別な能力の提供」「資源の新しい結合」「ノウハウの移転」「サービスとしての経営活動」の4つのタイプがあるとされる。

(※2)7P
サービスマーケティングを実践するための基本的なフレームワーク。ジェローム・マッカーシーが1960年代に提唱したマーケティング・ミックスの4つの概念(4P)、すなわち「Product(商品・サービス)」「Price(価格)」「Place(流通・チャネル)」「Promotion(販促・プロモーション)」に、フィリップ・コトラーが「People(人・要員)」「Process(業務・販売プロセス)」「Physical Evidence(物的証拠)」の3Pを付け加え、最終的に7Pとして構成された。

自ら編集も 飽きていた学生に新鮮味と刺激、洞察にずいぶんな深み

--- 主に教材として使うのはニュース的なコンテンツより編集した番組的なコンテンツですか。

 どちらでも構わないと思っていますが、授業ではタイムリーなニュースを話題として取り上げることはあっても、理論と照らし合わせる教材としては使いにくいため、基本的には企業経営にまつわる動画を探します。
 狙い目はWBSの中でもちょっとした長尺の特集か、あとは「ガイアの夜明け」や「カンブリア宮殿」などの経済番組です。授業ではあまり長い時間の動画は使えないため、自分でポイントとなる部分をピックアップする作業が必要になります。
 動画の長さは重要です。長すぎるものは使えないし、逆に数分だと物足りない。だいたい10分~20分ぐらいのものがちょうどいいのですが、その長さのコンテンツを見つける作業もなかなか大変です。「ガイアの夜明け」では1つの番組の中で数社が紹介されており、その中の1社は20分ぐらいで編集されているので、ちょうどいいですね。
八塩准教授

--- 学生の反応はいかがですか。

 テレビ東京BODは学生にとって新鮮なコンテンツのようで、とても刺激を受けますという意見をもらっています。すでにオンライン授業が数カ月も続き、学生も教員が作成したパワーポイントで説明する動画にはだいぶ飽きてしまっているのかもしれません。
 さらに、動画を使うようになってから、学生の考察がずいぶん深くなったと感じます。普通に理論を教えるだけでは、学生たちはその理論を自分のものにしにくく、考察もままなりません。しかし、そこに動画というケーススタディが入ると、その理論を使ってケースを解釈することが容易になるようで、考察で書いてくる内容が非常に濃くなったという印象を受けます。特に、無形であるサービスは、モノのマーケティングよりも理解しにくい部分があるので、言葉で説明するよりも動画で現実のビジネスの場面を見たほうがわかりやすいのだと思います。
 「動画を見る」という作業はリモートでもできることなので、結果的にはコロナによってオンライン授業を余儀なくされた状況をプラスの方向に逆転させることができたのではないかと思います。

学生の自主的な検索で可能性広げたい 先行研究や就活のヒントにも

--- いずれ対面で授業ができるようになると思いますが、その時もやはり授業の中で使っていきたいとお考えですか。

八塩准教授による対面での授業の様子
 契約の形態や大学の予算の問題などがあるので私の一存では決められませんが、可能であればもちろん使っていきたいと思います。
 本学は「理論および実践」の習得を唱っており、「実践」の部分ではケーススタディなどを積極的に授業に取り入れていくカリキュラム体系になっています。その点、テレビ東京BODの番組が実践向き教材として非常に質が高いことは在籍していた私は誰よりもわかっているつもりです。経営の現場の状況や裏側、企業経営者・社員の声がふんだんに盛り込まれているコンテンツはなかなかないですからね。
 大学が教育機関向けの契約を結ぶと、学生は図書館で好きな時、自分で検索して動画を見ることができるようになります。テレビ東京BODから自分が興味ある動画を見つけ、それをサービスマーケティングの視点から分析してレポートを書くといった課題を出せるようになります。
 卒業研究や卒業論文の執筆にも役立ちます。たとえばEスポーツ(エレクトロニック・スポーツ/electronic sports)や仮想通貨など新しいテーマは先行研究を見つけるのが難しいのですが、そういうときはニュースや報道から情報を取り、現状把握、現状分析から研究を始めます。その材料集めの作業にも使えるでしょう。さらには就職活動の際の企業選びのヒントにするなど、授業で使う以外に、個人個人のニーズに合わせて使えれば、その可能性は広がっていくと思います。

--- ありがとうございました。

(日経MM情報活用塾メールマガジン9月号 2020年9月28日 更新)

プロフィール

大学名 東洋学園大学
創立 1926年
所在地 本郷キャンパス/東京都文京区本郷1-26-3
学生数 学部生 2,692人 大学院生13人 (2020年5月1日現在)
学部・大学院 グローバル・コミュニケーション学部、人間科学部、現代経営学部、
現代経営研究科(大学院)
Webサイト https://www.tyg.jp/index.html

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