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「先見力」上昇ランキング

企業、商品、サービス延べ1,500ブランドを50,000人以上の消費者とビジネスパーソンが評価する日本最大のブランド価値評価調査「ブランド・ジャパン」。コンシューマー市場(BtoC)編とビジネス市場(BtoB)編の2調査で構成され、ビジネス市場(BtoB)編では認知度だけではなく、"人材"、 "信用"、"環境"など、企業として重要、かつ必要不可欠な要素にも着目し、企業のブランド総合力を算出している。

今回は、2014年3月28日に発行されたなかから、日本をリードしている企業ならではの「先見力」に注目。2013と2014の「先見力偏差値」を比較し、世の中に新しい価値を提供するための取り組みを強化した企業=「先見力」上昇ランキングトップ20と、時代を切り拓いていると評価されている2014「先見力」トップ10を紹介する。

「先見力」上昇ランキング2014

上昇順位 先見力順位 ブランド名 2014偏差値 2013偏差値
1位
14位 IDEMITSU 出光興産 74.0 50.1
2位
2位 SoftBank ソフトバンク 106.6 88.7
3位
21位 adidas アディダス 71.9 55.5
4位
69位 PILOT パイロット 59.4 43.3
5位
93位 NHK 日本放送協会 56.7 42.1
6位
99位 松井証券 56.2 41.8
7位
4位 7-ELEVEn セブン-イレブン 89.8 75.5
8位
29位 ソニー損保 68.3 54.4
9位
24位 楽天銀行 70.6 57.1
10位
3位 Yahoo ヤフー 91.6 79.0
11位
60位 SEIKO セイコー 60.3 48.6
12位
19位 NTT docomo NTTドコモ 72.5 60.9
13位
91位 odakyu 小田急電鉄 56.9 45.6
13位
76位 NRI 野村総合研究所 58.6 47.3
15位
108位 エバラ食品工業 55.4 44.2
16位
10位 SUNTORY サントリー 77.7 67.1
16位
43位 Nestlē ネスレ 63.6 53.0
18位
30位 AJINOMOTO 味の素 68.2 57.7
19位
53位 DENSO デンソー 61.5 51.2
20位
61位 yodobashi ヨドバシカメラ 60.2 50.7

「先見力」ランキング2014

順位 ブランド名 偏差値
1位
Apple アップル 106.7
2位
SoftBank ソフトバンク 106.6
3位
Yahoo ヤフー 91.6
4位
7-ELEVEn セブン-イレブン 89.8
5位
TOYOTA トヨタ自動車 88.5
6位
Google 85.6
7位
Amazon アマゾン 81.9
8位
OLC オリエンタルランド 81.8
9位
セブン&アイ・ホールディングス 79.9
10位
SUNTORY サントリー 77.7


ブランド・ジャパンでは、調査対象ブランドの一つひとつについて、回答者にいくつかのイメージ項目を提示し、あてはまるものを選択する設問形式を採っている。

「先見力」のイメージ項目は、「ビジョンがある」「この企業から学びたい」「成功している」「時代を切りひらいている」「経営者に魅力がある」の5項目。

「先見力」(「先見力」ランキング(BtoB) 2014)の1位は、106.7ポイントを獲得したアップル。100ポイント超えでの首位は3年連続。第2位には106.6ポイントを獲得しアップルと僅差でソフトバンクが、また3位にヤフーが上がってきたことにより、ソフトバンクグループが並んだ。
各業界を牽引するような「ビジョナリー・カンパニー」(ビジョンに基づいた未来志向の経営を実現している企業)や、先進的な技術を大衆に向けていち早く展開する企業、また、海外の企業が名を連ねる特徴的な結果となった。

イメージ項目には「経営者に魅力がある」といったビジネス市場(BtoB)編ならではのものも含まれているが、「先見力上昇ランキング」の上位企業には、創業時からの良きDNA(遺伝子)を受け継ぐ会社、創業者自らが経営の先頭に立つ会社が多く顔を出している。

1位の出光興産の創業者は出光佐三。ベストセラーとなった歴史経済小説『海賊とよばれた男』(百田尚樹著)のモデルだ。「出光史料館(門司)」の一角に、佐三の「出光憲法―五つの主義方針」が掲っている。人間主義、大家族主義、独立自治、黄金の奴隷たるなかれ、生産者より消費者――の5つだ。

佐三は終戦直後、「出光は終戦にあわてて馘首(かくしゅ=解雇)してはならぬ」と言い、外地から引き揚げてきた約800人を含め社員を一人として解雇しなかった。一時、印刷、農・漁業などの仕事も手掛け、糊口をしのいだ。デフレ下でリストラ旋風が吹き荒れた時代にも、出光興産は社員の一時解雇と無縁の会社だった。

創業家出身でない初の社長に就任した天坊昭彦は新入社員へのメッセージでよく訴えた(趣旨抜粋)。「事業は人が中心。人を大切にし、事業を通して一人ひとりが世の中で信頼され尊敬される人間に成長していけば、会社も社会で信頼され、世の中に貢献できる」と。個人商店から今では上場公開企業になったが、人間尊重のDNAは引き継がれる。

16位のサントリーも同様だ。創業者の鳥居信治郎はNHKの朝のドラマ「マッサン」に登場した鴨居商店の大将のモデルだ。「やってみなはれ、やらなわからしまへんで」を信条に、革新的なマーケティングに次々と挑戦した。日本初のヌードポスターをつくり、オペラ団を結成して全国を巡回し、広報宣伝の先鞭を付けた。同社の人事考課の一項目には今も「挑戦するか、しないか」があると聞く。

2位のソフトバンク、6位の松井証券は創業者並びに創業一族が経営の先頭に立つ会社の代表格である。11位のセイコーも創業時の旧服部時計店、生産工場だった旧精工舎以来の良き伝統を残す。 16位のネスレ、18位の味の素は共に「地球環境保護のサステナビリティ(持続可能性)」に積極的に取り組む企業としても知られている。

先見性は株式投資にも求められる資質だ。福園一成(立花証券元会長)が生前に話していた持論が忘れられない。「株式投資には、3つのカンが必要。感、観、勘だ」。相場の地合いの強弱を知る感性、方向性を予知する先行き観、異変を察知する勘働きの3カンだ。「先見力上昇ランキング」の上位企業はいずれも3カンが鋭い会社と映る。(敬称略)
(文責:日経メディアマーケティング)
(日経MM情報活用塾メールマガジン3月号 2015年3月23日 更新)