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日経POS情報『日経MJ前編集長によるトレンド分析セミナー』

 日経メディアマーケティングは2018年10月15日、東京で、「日経POS情報『日経MJ前編集長によるトレンド分析セミナー』」を開催しました。食品や日用品など消費財メーカーや流通企業の商品企画、マーケティング、プロモーション、広報・宣伝部門などの担当者のみなさまに数多く参加していただきました。

開催日時 2018年10月15日(月)
14時~16時30分(13時30分開場)
開催地 東京
プログラム 講演「今年の消費から見るこれからの潮流」
日本経済新聞社 編集委員 中村 直文氏

プレゼンテーション「日経POSセレクションのご紹介」「日経POS情報でつかむ2018上半期ヒットの秘密」
日本経済新聞社 デジタル事業BtoBユニット

中村直文氏「孤独を楽しむ・癒す」「退屈しのぎ」が次に来る!ヒットの条件

成功体験への執着禁物、思考を老朽化させてはいけない

 日本経済新聞社編集委員の中村直文氏は講演の冒頭で、「20世紀型の消費モデルが限界にきている」と分析、「さまざまなサービスの無料化が進むなかで、消費者の支出へのハードルが高くなり、値下げしても消費者の心をつかむことが難しくなっている」と話しました。また、「顧客志向が分散化し、大きなヒット商品がうまれにくくなっている」と加えたうえで、「過去の成功体験に執着し、思考を老朽化させてはいけない」と警鐘を鳴らしました。

“万人受け”より“化け狙い”、隠れたジョブを発見しよう

 中村氏はこうしたなかで、ヒットを生むために大切なこととして、「万人受けではなく、“化け”を狙うこと」と独自の言い回しを使って表現。その解説として「美少女コンテストなどをみると、最近ではグランプリを獲得したタレントより、審査員特別賞を取ったタレントのほうがその後の活躍が目立っている」と例に挙げて、「誰からも評価されるものは意外性がなく、飽きられやすいが、新規性や変わったところがあるほうが“化ける”可能性があるということではないか」と話しました。
 さらに、中村氏はこれからのヒントとして、経営学者でハーバード・ビジネス・スクールの教授、クレイトン・クリステンセン氏の「ジョブ理論」を紹介しました。中村氏によると、ジョブ理論とは「消費を人々(顧客)が問題を解決するための手段(ジョブ)」と考えることであり、「顧客には現状を改善したり、状況を進歩させたりするために行うべきジョブがあり、そのジョブをこなすうえで、ぴったりの商品・サービスであれば、顧客はそれを購入するということになる」と筋立てを示しました。そして、「そもそもマーケティングとは、隠れた問題(ジョブ)を発見し、市場を創ること。新しい現実にどう対応するか。それがマーケティングの本質」と強調しました。

中村直文氏

人気商品4つのキーワード、「身近さ」「コアの力」「シェアリング」「使い方革命」

 こうした話を前提にしたうえで、中村氏が最近のヒット商品について、(1)身近さ(2)コアの力(3)シェアリング(4)使い方革命―――の4つのキーワードを指摘しました。
 「身近さ」の例として、体型を計測した後、注文し、カスタマイズされた服を購入できる「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」や地元に特化したツアーを提供する「民旅」、「コアの力」では口コミやSNS(交流サイト)で急速に広まり話題となった映画『カメラを止めるな!』、「シェアリング」では「民泊」やカーシェアリングの「タイムズ」、「使い方革命」では機能性で女子や若者の人気に火がついた「ワークマン」のPB商品―――などの商品・サービスを挙げました。

“バカな?その後なるほど”のマーケティングが主役に

 また、今後のキーワードとして中村氏が注目したのが「孤独」と「退屈」です。「働き方革命」で時間に余裕ができたサラリーマンやシングル層をどう取り組むかがポイントになるということでした。中村氏は「企業は自社のマーケティングにおいて、いままでの常識にとらわれず、常に自己否定・再解釈をしながら、汎用化・陳腐化をさけることが重要」と述べたうえで、今後の方向性について、「神戸大学の経営学の考え方を引き合いに出し、ヒットするモノは『バカな?しかし後になるほど』と思うような構造になっている」と指摘しました。

中村直文氏

日本経済新聞社編集委員
1989年、日本経済新聞社入社。東京、大阪、札幌で長年にわたり小売業や消費財メーカーを担当。大手百貨店そごうの経営破綻、百貨店の統合、イオンやダイエーなど大手スーパーの再編などを取材してきた。2016年から2年間、日経MJ(流通新聞)編集長を務め、小売りやネット企業のほか映画監督、アーティストなどに幅広くインタビューした。2018年4月から現職。マーケティングや消費をテーマに執筆活動を続ける。

久慈未穂氏 「災害消費」が目立った上期、地道なメッセージ発信に人気の“芽”

不安心理が影響!? トップブランドへのシフト目立つ

 プレゼンテーションでは日本経済新聞社デジタル事業BtoBユニットの久慈未穂氏が日経POS情報のデータを使って分析した2018年上半期のヒット商品について解説しました。久慈氏によると、上期は西日本豪雨や猛暑、度重なった台風、北海道を襲った地震と各地に深刻な被害をもたらした自然災害が消費にも大きく影響、「災害消費」ともいうべき現象が起こったことを指摘しました。
 例として、9月のデータを報告し、「前年比で千人当り金額の伸び率の高かった商品は食品では麦茶飲料(前年比28%増)、即席食品(24.8%増)、総菜缶詰(23.8%増)、家庭用品では電池(77%増)でした」と話しました。細かな時系列のデータを提示し、「即席白飯・無菌包装白飯」は大阪で地震があった6月、関西を台風が襲い、北海道で震災があった9月に全国的に売り上げが急増、販売価格も上昇していることを示しました。
 また、こうした消費について、久慈氏は「消費者の不安心理が反映するのか、商品選びについて、トップブランドへのシフトがみられるようです」と分析、「即席白飯・無菌包装白飯」ではトップメーカー「サトウ食品工業」、「麦茶飲料」では「伊藤園」の伸びが顕著だったことを示すデータを紹介しました。

「サバ缶」に学びたい、話題づくりへの継続的な努力

 一方、久慈氏は上期に売り上げを伸ばした商品のなかから、「サバ缶」に注目。自然災害がプラスに働いた影響を指摘しつつ、ここ1、2年、地道に話題を提供してきた背景を説明しました。久慈氏は「日経テレコンで検索して、サバ缶の関連記事の推移をみると、被災者支援、災害食、常備食、夏バテという言葉にまじって、缶詰料理、健康効果、節約、ダイエットなどというキーワードが目につき、継続的な話題性があったことがわかります」と話しました。缶詰食品では「サバ缶」は現在、「ツナ缶」を抑えて、売り上げトップになっているとのことでした。
 最後に、商品やブランドのメッセージが広がっていくことで、ヒットにつながっていく例として、久慈氏はストレス低減をうたった機能性表示食品「GABA」(江崎グリコ)を挙げました。購入者の属性や立地別の購入金額比率などのデータを示しながら、「30-49代の男性の購入比率が高く、オフィス街の立地での購買が多く、ストレスの高まる月~木曜日に売れています」と話しました。「露出は少なくても粘り強く続けることが効果的なのではないでしょうか」と久慈氏は締めくくりました。

久慈未穂氏

(日経MM情報活用塾メールマガジン12月号 2018年12月17日 更新)

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