NIKKEI Media Marketing

芝浦工業大学

導入事例 Case Study
村上 雅人 氏

外部客観評価で「立ち位置」把握
ブランド戦略に活用、自他認めるグローバル大めざす

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学長
村上 雅人 氏

導入しているサービス
  • 大学ブランド・イメージ調査

 芝浦工業大学がグローバル化を加速させるため、外国人教員の採用や留学生の積極的な受け入れを進める一方、グローバル大学としてのブランドの確立を急いでいる。外部の客観的な評価を把握するため、2017年から日経BPコンサルティングの「大学ブランド・イメージ調査」を採用。自他ともに認めるグローバル大学をめざし、必要な施策を検討、広報戦略に生かそうと動き出した。
 村上雅人学長に、同調査に対する感想と、そこから得られた指針やヒント、これからのブランド戦略への取り組み、展望をうかがった。

多くのステークホルダーから実態つかむ、コンサル的サービスも魅力

―――「大学ブランド・イメージ調査」を導入した経緯を教えてください。

 ブランディング戦略策定の一環として、芝浦工業大学がいま、どういう立ち位置にあるかを具体的に知るためです。2018年問題が叫ばれ、今後、18歳人口がますます減少し、大学間競争が激化するなかで、芝浦工大に限らず、多くの大学が改革に取り組んでいます。しかし、世の中に十分伝わっていないのが実情です。高校生や先生、父母、地域社会、企業の方などステークホルダーに、大学がどのように見えているのか、その実態を知らなければ、どういった戦略を立てていったらいいか、わからないからです。
 「大学ブランド・イメージ調査」はさまざまな年代層や立場の方を対象に調査しており、それぞれの調査項目ごとに芝浦工大がどのくらいの位置づけにあるか、表に出てこないデータの背景まで分析しています。そこからどういう戦略が考えられるのか、コンサルティング的なサービスまで含まれているため、これからのブランド戦略の構築・展開に有用と判断したのです。

世の中との「かい離」、大きな参考に 課題の発見へ貴重なデータ

―――調査結果をご覧になった印象はいかがでしたか?

 我々が持っているイメージと、世の中のイメージには、やはり少しかい離があるということをあらためて認識しました。これは大変、参考になりました。
 具体的には、芝浦工大として重要視している「教育・研究」など、王道部分のスコアでは高い評価をいただいて、満足していますが、イメージなどについては残念ながら、あまり高いスコアとは言えませんでした。特に、多くの年配の方々は自分たちが学生のころの工業大学のイメージで「油まみれの作業服を着て、実験を繰り返している」といったイメージをお持ちなのではないかと思います。「真面目である」という評価はいいのですが、真面目すぎて「硬い」というイメージがあるようです。
 理工系ということで「高い専門性・専門知識」「基礎学力が高い」などの項目で評価は高く、とりわけ「勉強に熱心である」というスコアは高くなっています。一方「面白味がある」「コミュニケーション能力が高い」などのスコアは低くなっています。
 こうした客観的な調査結果は、大学改革を進めていくうえでも、ブランディングの構築という観点からも、課題を発見するために非常に貴重なデータであると考えています。
村上 雅人 氏

専門家からは高い評価 「グローバル」イメージ浸透にはなお時間も

―――芝浦工大が力を入れている「グローバル」という視点からの評価はいかがでしたか?

 芝浦工大は文部科学省が行っている「スーパーグローバル大学創成支援事業」で採択された「スーパーグローバル大学」(※1)37校のうちの1校で、私立の理工系大学では唯一の採択校です。専門家からは、本学のグローバル化への取組みに対し高い評価を受けていますが、一般の方の評価をみると、工業大学とグローバルというイメージが合致していないようです。認知は、まだ十分ではありません。
 入学してくる学生は、芝浦工大がスーパーグローバル大学に選ばれていることをもちろん知っていますし、志望する際も「グローバルだから」「留学したいから」といった理由を述べる学生が圧倒的に多くなりました。採択が2014年で、2015年の入学生のなかで知っていた割合が3割程度だったことを考えると、少しタイムラグはありましたが、受験生の間の認知度は急速に高まっています。それでも「大学ブランド・イメージ調査」のように、調査対象を父母や教員、地域社会の人たちにまで広げると、まだまだ高いとはいえないということでしょう。
 ただ、イメージの浸透には時間がかかります。芝浦工大のグローバル化への取り組みは、さかのぼれば1990年代から始まっているのですが、注目され始めたのは2014年の採択からだと思います。まだ4年しかたっていません。調査では「地域産業に貢献している」という項目で、東京都在住者の回答では120校中3位にランクされていますが、これは2002年ごろ始めた産官学連携の活動などが徐々に評価されたものと考えています。グローバルなイメージが浸透していくには、もう少し時間が必要かもしれません。
(※1)「スーパーグローバル大学」
 文部科学省が2014年から国内大学の国際化と国際競争力向上を目的に始めた「スーパーグローバル大学創成支援事業」で採択された大学。世界トップレベルの大学と交流・連携を実現、加速するための新たな取り組みや、人事・教務システムの改革、学生のグローバル対応力育成のための体制強化などを進めている大学を選んで、文部科学省が重点支援している。世界レベルの教育研究を行う大学「タイプA(トップ型)」(13大学)と、日本社会のグローバル化をけん引する大学「タイプB(グローバル化牽引型)」(24大学)の37大学が採択され、国際化を軸とした大学改革が期待されている。

―――具体的に調査データをどのように活用していますか。

 調査結果のデータは教育担当、就職支援担当、入試担当など、さまざまな教職員の会議の場で共有しています。各項目に該当する担当者の反応は、予想外の結果に驚いたり、納得したりとさまざまですが、それぞれ自分の部署に結果を持ち帰り、今後の対策に生かしていきたいと話しています。

外国人教員、積極採用 30人目標 女性教員比率上がり、女子学生も増加

―――創立100周年を迎える2027年にはアジア工科系大学のトップ10に入るという目標を掲げておられます。特に、強化するポイントをどのようにお考えですか。

 日本の大学の弱いところは外国人の教員が少ないという点です。これは人件費の問題なども関係してきますので難しいテーマではありますが、グローバル化は芝浦工大にとっての最重要課題ですから、従来の人事の枠にとらわれず、外国人の教員を積極的に採用しています。現在、18人外国人の教員がいますが、いずれは30人くらいまで増やしたいと考えています。
 外国人の教員や留学生が増えると、学内にも多様性(=ダイバーシティ)が生まれてきます。これがいま、本学のもう1つの大きな特徴になっています。ダイバーシティという観点から見たとき、私は工科系大学の弱いところは、女性教員が少ないことだと思っています。これからは女性が活躍しないといけない時代です。女性が活躍できない場所では、さまざまな面でブランド・イメージも棄損されます。芝浦工大も男女共同参画を本格的に推し進め、女性の教員を積極的に採用し、今日では工科系大学の中で一番女性教員比率が高い大学になりました。女性の教員が増えたことで、女子学生の数も年々、増加しています。
豊洲キャンパス

広報戦略を強化、スマホサイト構築 「ダイバーシティ」もアピール

村上 雅人 氏
 さらに広報戦略の強化も考えています。いま、芝浦工大ウェブサイトの全面リニューアルにあたり、スマートフォンからのアクセスを重視した情報の充実に取り組んでいます。いまの高校生やその父母はスマホから情報を収集されますから。
 あとは地道な活動ですが、やはりイメージの構築には口コミの影響力が大きいと考えています。具体的には高校に対する宣伝や情報提供です。
 たとえば、芝浦工大は2017年度、1,288人の学生を海外の大学や企業に送り出し、1,297人の外国人留学生を受け入れました。5年前にはそれぞれ100人くらいしかいなかったので、その数は急速に増えていることになります。こういう話を高校の進路指導の先生方にすると、びっくりされます。先生方も忙しいので、ウェブサイト上で情報を更新したからといって、必ずしもそれを見てくれるわけではありません。ステークホルダーがこちらの情報を見てくれるのを受動的に待つだけでなく、積極的に情報を発信していく活動も必要です。そのため、私自身もいろいろ高校を訪問して、芝浦工大の特徴を直接説明させていただいています。また、説明の際には、たくさんの特徴をアピールしても、聞き手の記憶に残りません。大事なポイントを1つか2つに絞って説明することが大事だと思っています。芝浦工大では「グローバル」と「ダイバーシティ」ということになるでしょう。

「工大サミット」通じて意見交換、ステレオタイプ払拭へスクラム

―――今後の大学のブランド戦略についてお聞かせください。

 芝浦工大のブランドは工業系大学全体のブランドと重なる部分が大きいと思います。そのため、芝浦工大のイメージを変えていくためには、工業大学全体のブランド・イメージも変えていかなければなりません。実は2017年から開催している「工大サミット」(※2)の場では、ブランディング構築に関する意見交換なども行っています。理工系大学が協力して、いわゆるステレオタイプの工業大学のイメージを払拭し、ブランド力の向上に努めていく試みです。今後は参加大学の数をもっと増やし、そこに高校の進路指導の先生なども招聘して、工業大学全体のブランド・イメージ構築に役立てたいと考えています。
豊洲キャンパス
(※2)「工大サミット」
 日本の理工系5大学(愛知工業大学、大阪工業大学、芝浦工業大学、広島工業大学、福岡工業大学)が集まって、2017年3月に始まった連携組織。工業立国を支える人材育成に対する工科系大学としての使命を果たし、ボーダレス化の進む世界のなかで、イノベーションを創出し、グローバルな環境で活躍できる人材を育成するために、各大学の人的・物的資源の情報の共有と、相互の連携・協力による理工系高等教育の活性化を目的に活動している。2018年から東北工業大学が参画。

―――本日は貴重なお話をありがとうございました。

(日経MM情報活用塾メールマガジン1月号 2019年1月28日 更新)

プロフィール

大学名 芝浦工業大学
創立 1927年
所在地 東京都江東区豊洲3-7-5(豊洲キャンパス)/埼玉県さいたま市見沼区深作307(大宮キャンパス)/東京都港区芝浦3-9-14(芝浦キャンパス)
学生数 7,761人(平成30年5月1日現在)
学部 工学部 システム理工学部 デザイン工学部 建築学部
Webサイト https://www.shibaura-it.ac.jp/