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Oxford Analytica社 2015 オックスフォード大学での「知の競演」に参加して

日経メディアマーケティング株式会社 三井悠里

 英国オックスフォード 大学の最大のカレッジにして、物理学者アインシュタインや「不思議な国のアリス」の著者ルイス・キャロルら数多くの学者や文化人、政治家を生んだクライスト・チャーチ。 この名門校のキャンパスに、毎秋、世界各国から政治・経済分野の英知が集まり、意見交換する3日間がある。

 オックスフォード大学を中心に世界の有名大学や研究機関の研究者ら1,500人以上をブレーンに抱えるコンサルティング・調査会社、Oxford Analytica(オックスフォード・アナリティカ)社 が主催する一大カンファレンスである。

 2015年春、日経メディアマーケティングが日本の販売代理店になり、世界各地の政治・経済分析レポートを掲載する有料の会員制サービス「オックスフォード・アナリティカ政治経済分析レポート」の提供を始めた。業務提携をきっかけに、昨秋開かれたカンファレンスに初めて参加する機会を得た。そこで、Oxford Analytica社が紡ぎだす「知の競演」の一端をご紹介したいと思う。
会場となったクライスト・ チャーチカレッジ

会場となったクライスト・ チャーチカレッジ

32回目を迎えるカンファレンスとは

 Oxford Analytica社の創業者であるデイビッド・ヤング博士は1970年代前半、米国のキッシンジャー国家安全保障問題担当大統領補佐官(当時)の下で働き、米国国家安全保障会議にも名を連ねた。英国に移った後の1975年、ホワイトハウス時代に培ったIntelligence(情報)の収集・分析技術を応用して国際政治・経済を分析するOxford Analytica社を設立。これまで40年にわたって世界情勢の現状把握や分析の領域で主導的な地位を占めてきた。

 32回目 を迎えた2015年のカンファレンスには、25か国、延べ200人に及ぶ世界各国の企業経営者、政策決定機関や政府の高官が参加した。また、ゲストスピーカーとして各国から研究者ら33名が招待された。Oxford Analytica社のブレーンである国際問題の専門家らと共に政治・経済についての分析を行った。

 カンファレンスは9月16日から3日間で、参加者はすべてクライスト・チャーチで寝食を共にする。一日のプログラムは早朝の「モーニング・カンファレンス」から始まり、「レクチャー」、「ディスカッション」と続く。

モーニング・カンファレンス 「本番さながらの分析作業を体感」

モーニング・カンファレンスの会場

モーニング・カンファレンスの会場

 午前7時45分、モーニング・カンファレンスが始まった。アフリカ担当アナリストのウィリアム・アットウェル氏やロシア・CIS担当のシニア・アナリストであるマイケル・テイラー氏らOxford Analytica社の精鋭アナリスト15名が顔を揃えた。英国放送協会(BBC)でもゲストコメンテーターとして活躍するアナリストも登場。まずアナリストごとに担当エリアの注目すべきニュースを決め、分析内容を発表する。他のエリア担当アナリストと意見交換し、結果を議長がいったんまとめる。さらに、担当アナリストが再度分析し、当日午後2 時までにデイリーブリーフの形で配信するレポートに仕上げる。

 どのアナリストが、どのようにトピックを選定し、いかに分析を行っているかといったプロセスが目の前で繰り広げられ、貴重なアナリスト会議の模様を見学できるという内容だ。普段は送られてくるレポートを一方的に受け取るだけのことが多い参加者も、この日ばかりは質問や意見があれば自由に会議に参加できるとあって1時間にわたって様々なやり取りが繰り広げられた。

レクチャー 「米中の緊張関係に高い関心」

 午前9時、クライスト・チャーチの向かいにある聖アルデイツ教会は、レクチャーの参加者で満員になった。いつもはオックスフォード大学の学生や市民の礼拝に利用される厳粛で静かな教会だが、カンファレンスの3日間だけは参加者の興奮やざわめきに包まれる専用ホールに姿を変える。

 世界銀行チーフ・リスク・オフィサーのラクシュミー・サンダー氏、米ゼネラル・エレクトリック(GE)アフリカ代表のジェイ・アイルランド氏ら著名なゲストスピーカーがテーマごとに登壇し自分の見解を示し、さらにスピーカー同士が意見や質問をぶつけあう。レクチャーというよりもパネルディスカッションの色合いが強い。
聖アルデイツ教会内でのレクチャー

聖アルデイツ教会内でのレクチャー

 聴講席の参加者からの質問も活発で、1テーマ45 分の制限時間を超過することもしばしば。  私が参加した「アジアの海洋問題」に関するレクチャーでは、南シナ海における米国と中国の緊張状態を踏まえて、「中国がベトナム、フィリピン、または、日本と戦争になった場合、米国は参戦するか」といった生々しい質問も出た。この質問に、英王立国際問題研究所(チャタムハウス)の米国プロジェクト・ディレクター、ゼニア・ウィケット女史から「米国が戦争に参加することはないでしょう。行くしかないという状況はあり得るけれど、自らいくことはない」との答えに会場は一瞬ざわめいた。

ディスカッション 「日本分科会はアベノミクスと女性が焦点」

 1 テーマにつき3―5 人程度のOxford Analytica社のアナリストとゲストスピーカーが司会進行役となり、1時間半ほど参加者とグループディスカッションを行う。私は中国や日本の問題を扱うセッションに顔を出した。 日本に関するディスカッションでは「アベノミクス」がメインテーマとなった。参加者は15人ぐらいだが、私以外は欧米系の金融機関関係者か、グローバル企業の幹部。「2016年以降アベノミクスは継続するのか」「日本の国粋主義的な色彩は中韓との関係にどう影響するか」などを巡って意見が交わされた。

 経済を軸に白熱した議論が一通り終わると、日本文化への素朴な疑問が飛び交った。「日本の男性が内向きだと聞くが、なぜ? 中韓と違い海外留学する男性が減少しているのはどうしてか?」「日本で女性管理職が少ないのはなぜか?」「キャリア女性はどうして結婚を後回しにするのか?」などの質問が相次いだ。

 参加者唯一の日本人女性だった私に、質問の矛先が向かうのを恐れていたが、案の定、パネラーの1人から指名された。「日本では海外留学経験があるからと言って、必ずしもキャリアに結び付くわけではない。むしろ、毛色が変わったところを敬遠される恐れもまだある。企業は飛び抜けた学生よりも、若く、協調性のある人材を求めることが多い」と持論を説明した。納得してもらえたかどうかは分からないが、追加質問がなかったのは事実。
クライスト・チャーチ内の学生食堂での夕食

クライスト・チャーチ内の学生食堂での夕食

 ちなみに、昼食と夕食はクライスト・チャーチ内の学生食堂。映画「ハリー・ポッター」のロケ地として有名なこの食堂も3日間は貸し切り。特に、夕食では自己紹介から始まり、名刺交換などで連絡先を教え合う光景があちこちで繰り広げられた。ワインの勢いも手伝ってか、日中、国際問題で真剣に語っていたゲストスピーカーらもネクタイをはずし、陽気に歌い、千鳥足でふらふら。私もグラスに次々とワインが注がれ、翌日後悔することになった。

「オックスフォード・アナリティカ政治経済分析レポート」の魅力

 会員制サービス「オックスフォード・アナリティカ政治経済分析レポート」は日々、利用者に代わってアナリストらが世界各地の最新の政治・経済のニュースを取捨選択し、最も重要なニュースを分析つきで情報提供するサービス。今後、事件・事故がどう展開するか、周辺国への影響はどうかをまとめた分析は、世界の有力企業や政府の中・長期的なリスク管理や経営判断などに幅広く利用されている。

 一方、「カンファレンス」は、同サービスの会員であれば参加でき、日ごろのレポートの作成者らと膝を交えた形で情報を収集したり、分析過程を体験したりするとともに、世界中の専門家や経営者らとネットワークを構築できる絶好の機会。二つを上手に活用することで情報・分析の価値が高まるといっていいのかもしれない。

 日本の企業も真の意味でグローバル企業に変身することが急がれる中、「オックスフォード・アナリティカ政治経済分析レポート」を是非、一度、試されてみることをお勧めしたい。世界の英知が視野を格段に広げることは間違いないと思う。
(日経MM情報活用塾メールマガジン2月号 2016年2月8日 更新)