世界最大規模のR&D投資を進める米国政府、その規模は年間15兆円(日本の10倍)ともいわれ、その5割を占めるのが米国防総省(ペンタゴン)です。その対象は兵器開発にとどまらず、未来を展望した基礎研究にも大胆に注ぎ込まれています。
ペンタゴンが求めるのは「ゲームチェンジングテクノロジー」。従来の枠組みやルールをがらりと変える技術をどの国よりもいちはやくとらえることこそ、国益にかなうという信念が存在します。
本レポートはその実態を詳細に分析、民間への転用の可能性を探りつつ、これまでの常識を破り、ビジネスや暮らしを大転換させるテクノロジーの存在を浮き彫りにします。
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ゲームチェンジングテクノロジーとは、ビジネスから生活まで、社会を一変させる革新的な技術を指す。そうしたテクノロジーを生み出すカギは大胆な発想に基づく研究に投資できる仕組みをいかに用意するかである。一つのやり方が安全保障に絡めて国が資金を出すこと。米国の国防総省は技術優位の確保を最優先事項とし、イノベーティブな研究に資金を投じている。革新的なテクノロジーを実現できれば、軍事において優位を確保し、さらに民間で活用、自国産業を活性化できる。
米国国防総省がかねてより研究に力を入れているテーマが「オートノミー(自律)」である。空中・宇宙から海上・地上まであらゆる領域で、人手に頼らず、自律的に動く機器と支援ソフトウエアの研究開発に取り組んでいる。DARPAは2018年8月、人間のパートナーに成り得る次世代の(AI人工知能)テクノロジーを研究する新プログラムを始めた。人の常識を理解し、様々な状況に応じて動作でき、その動作を説明できるAIの実現を目指すという。
現代は「ハイブリッド戦」の時代と言われる。正規軍が戦場で戦うだけではなく、見えない軍が市街地、そしてサイバー空間でも戦うようになった。当然、サイバー戦や暗号にかかわるテクノロジーに軍は投資している。また、公開情報を集め、国際社会の動きを予測する研究も進んでいる。
サイバー戦・電子戦の時代になっても、兵士の重要性は変わらない。最終段階になると必ず、陸軍が動き、兵士が乗り込む。さらに強い兵士を養成するため、人間を超人化するテクノロジーへの研究開発は活発である。脳や肉体を直接強化するだけではなく、疾病対策も含んでいる。また、生物をサイボーグにする研究も行われている。
世界の軍事研究で大きなテーマになっているのがGPS(Global Positioning Systems)の代替テクノロジーである。妨害電波などでGPSが使えない状況、水中や地下などそもそもGPSが機能しない状況で、位置を知り、移動し、攻撃するためのテクノロジーが検討されている。地下における活動支援は民間にとっても極めて重要である。軍事用途で開発されたテクノロジーがGPSと同じように民間で使われていく。
半導体は依然として安全保障の上で重要なテクノロジーである。米軍は半導体に代わる量子デバイスや、光電子デバイスにも目を配りつつ、半導体分野でのブレークスルー型研究にも投資している。また、レーザー光線銃、自由電子レーザー、高エネルギーレーザー地域防衛システム、EMALS(Electromagnetic Aircraft Launch System)にも引き続き投資している。
本レポートはゲームを変える可能性がある基礎テクノロジーを主に取り上げているが、最終的にそれらが組み合わさったプラットフォームの研究開発動向についてこの章で展望する。たとえば「極超音速」で移動するプラットフォームを実現するために、エンジン、耐熱材など構成要素も含めて研究されている。
ブレークスルー型研究を進め、ゲームを変えるテクノロジーを生み出すには、大胆な研究シナリオをまとめ、当初の研究開発費を提供、それを基に研究開発の生態系をつくり出す必要がある。世界各国の軍事分野の研究開発戦略と体制を見極め、民間の研究開発への示唆を得る。たとえばDARPAは大学、大手企業、ベンチャー企業の研究者を集めたコミュニティーをつくって研究の方向を議論し、そこからプログラムマネジャーが研究の方向を決め、研究シナリオを書いていく。また、DARPAはチャレンジと銘打った数々のコンテストを開催している。自動運転、小型衛星の迅速打ち上げ、ロボット、GPSが使えない地下におけるロボット行動、AIを使った電子戦、といった領域でチャレンジプログラムを実施している。
※目次は変更になる場合があります。
価格(税別) | 書籍 30万円 | 書籍とオンラインサービスのセット 45万円 |
監修・著者 | 生天目 章(防衛大学校名誉教授)、井上 孝司(テクニカルライター) | |
著者 | 村田 和美(日立製作所顧問)、高橋 克彦(K.企画代表) | |
発売日 | 2018年12月28日 | |
書籍の内容 | レポート:A4判、約220ページ |
提供:日経BP/日経BP総研 未来ラボ