NIKKEI Media Marketing

コロナに克つ!情報指南術

ヒト・モノ・カネがないなら知恵を絞れ! コロナ禍とメディア多様化時代を生き抜く「テレ東の作り方」

テレビ東京 WBSチーフプロデューサー 大久保 直和様

(動画再生時間 0:08:31)

聞き手 日経メディアマーケティング会長
  大村泰

取材日 2020年10月28日

コロナ禍に関する報道を他局に先駆けいち早く全面展開

--- 今年に入って最大のニュースは新型コロナウイルスだと思います。コロナ禍で世界経済も大変な状況に陥っています。この問題を『WBS(ワールドビジネスサテライト)』ではどのように報道してきましたか。
 

コロナに思う
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 『WBS』では、すでに年明けから中国の情報も入手していち早くコロナの問題に目を付けていましたので、1月14日にはこれをトップニュースで取り上げました。
 私はかつての北京支局の経験や、SARS(重症急性呼吸器症候群)の問題を報道した経験から、中国の情報体質というのも理解していました。そして番組にレギュラー出演している日本経済新聞編集委員の滝田洋一さんとも、「これ(コロナ問題)は来そうだね」ということで一致し、そこから一気にこのニュースの報道を大展開。番組の前半30分くらいを使ってコロナ問題を取り上げるという構成を半年くらい続けました。経済の大問題に発展するという見通しを持って、世界の状況から身の回りの感染情報に至るまで、報道し続けたのです。

 折しも3月には、ニューヨーク株式市場の大暴落などが起きましたが、その時から報道する内容にキャッチフレーズといいますか、新聞でいう「ワッペン」をつけていきました。最初は「コロナショック どうなる世界経済」という謳い文句を前面に掲げ、4月の緊急事態宣言の前後からは、関連するコーナーなどもいろいろ立ち上げました。
 その一つが「コロナに思う」です。これは経済人に限らず、各界で活躍されている著名人の方々に、この前代未聞の状況をどう過ごし、どう克服していこうとしているのかということについて毎日メッセージをいただく企画です。緊急事態宣言が始まる直前の4月頭の第1回目は、ノーベル賞を受賞した本庶佑(ほんじょ・たすく)教授にご登場いただき、「直ちに緊急事態宣言を発令すべきだ」という力強いメッセージをいただきました。
 以後、このリレーメッセージを7月くらいまで続けましたが、「X JAPAN」のYOSHIKIさんや漫画家のヤマザキマリさんなど幅広いジャンルの方々にご登場いただきました。番組後半の3~4分くらいのコーナーでしたが、「勇気づけられた」などの感想も多数寄せられて、かなりの反響がありました。

 一方で、番組の王道として、やはり「経済がどうなるか」というテーマも常に追ってきました。6月に都道府県をまたぐ移動自粛要請が全面解除されたことをうけ、そこからはワッペンを変えて、「コロナクライシス 経済回復への道」というテーマを打ち出しました。まだ「復活」と言うには早いのではないかということで、「回復」というテーマで、コロナ対策と経済活動をどうやって両立させていくかという点を重点的に取り上げました。
 さらに10月28日からは、第3段目のワッペンとして、「NEXT STAGE 経済再起動」というテーマを打ち出しています。新型コロナウイルスとの付き合い方がある程度見えてきたところで、今後はより重点的に経済活動が行われていくのではないかという予測を立て、大企業を含め企業側にも取材網をもっと広げ動き出しているところです。
WBS  テレビ東京『WBS(ワールドビジネスサテライト)』(月~金 夜11時~11時58分)

 1988年にスタートした日本で最も長く続く経済ニュース番組。
 「自分につながる経済ニュース」をモットーに、視聴者の仕事や生活につながる経済情報を採り上げる。
 初代キャスターは現東京都知事の小池百合子氏。



湾岸戦争時に放送したアニメは視聴率20% 「違うことをやる」がDNA

--- ところで大久保さんは、経済ニュース番組だけではなく、『ガイアの夜明け』『カンブリア宮殿』『未来世紀ジパング』などの番組制作にも携わって来られました。それらの番組づくりの舞台裏を、「テレ東のつくり方」という本にもまとめられて、話題になっています。少し失礼な言い方かもしれませんが、予算も人員も比較的限られているなかで、ヒット番組を生み出す秘訣などをお聞かせいただけますか。
 

テレ東のつくり方
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  私がテレビ東京に入社したのは、バブルの末期でした。当時いちばん象徴的だった出来事は、1991年の湾岸戦争です。そのときテレビ東京では、アニメの『楽しいムーミン一家』を放送していたということが伝説的な話題になりました。私が入社する直前の1月でしたが、そのことをスポーツ新聞などで取り上げられている記事を読んだりして、「ああ、テレビ東京というのは、そういう局なんだな」と思いました。ただ、会社に入って知って驚いたのですが、そのときの『楽しいムーミン一家』は、視聴率20%ぐらい取っていたそうです。

 それを知って、他局が一律で同じことをやっている時に違うことをやるのがテレビ東京の生き方だったんだ、ということがわかりました。ただし、そうは言っても私が所属したのは報道局でしたので、湾岸戦争はぜひ報道すべきだ、という側には立っていました。
 しかし、他のテレビ局や新聞社と比べて、ヒトもカネもまったく足りません。そこで先輩たちから言われ続けてきたのは、「ヒト・モノ・カネがないなら知恵を絞れ」ということです。たとえばNHKや日経新聞がこういう取り上げ方をするんだったら、うちはこっちから攻めて行くかとか。そういう変化球みたいなことは常に考えましたね。ですから当時はけっこう他局や視聴者からもバカにされていたかもしれません。

 ところが、最近ではそのように他と違うことをやっている姿勢が評価され、テレビ東京が注目されてきているようなのです。先日もなぜか中国のメディア関係者から、「他と違うユニークなテレビ局(=テレ東)」という内容で取材を受けました。やっていることは昔と大して変わってないのですが、やはり時代が変わったというか、多様化してきたからなのかな、という気はしています。「他と違うことをやる」というモットーが、おそらく私だけでなく他のスタッフにも浸透している。
 かっこよく言えば、それはDNAということなんだと思います。

地上波だけではないテレビ局の生き方を追求 「テレビ東京ビジネスオンデマンド」

--- 最近ではニュース番組を見るシーンも変わってきて、出勤途中にスマホでオンデマンドの配信を見る人も増えてきたと思います。その点、「テレビ東京ビジネスオンデマンド(BOD)」はニュース番組だけでなく、特集番組なども即時に配信しているかと思いますが、今後のインターネット配信の取り組みについてお聞かせください。
 

  テレビ東京グループは基本的に地上波と衛星波というステージで番組をご提供してきましたが、最近はスマホやパソコンに配信される番組を見る人が大変増えています。そこを切り拓いていくことが今、最大の課題と言っていいでしょう。
 
テレビ東京BOD
テレビ東京ビジネスオンデマンドについてはこちら
 報道番組を配信する「テレビ東京BOD」は、比較的早く7年前に立ち上げられました。これは1カ月ワンコイン(500円・税別)で『WBS』『ガイアの夜明け』『カンブリア宮殿』などのパッケージ番組が見放題のサービスで、会員数も10万人近くに上っています。さらに去年からは、ユーチューブ無料配信の「テレ東NEWS」(チャンネル登録数72万)を立ち上げ、「テレビ東京BOD」と両輪で配信サービスを行っています。
 いずれは、日本経済新聞社とのコラボレーションなども視野に入れながら、さまざまなサービスを提供したいと考えています。そこには当然、「地上波だけではないテレビ局の生き方」があると思いますし、番組づくり、コンテンツづくり自体には長年携わってきたという自負もありますので、たとえメディアが多様化してもそこでなんとかがんばっていけると思っています。



初の配信イベント「テレ東ビジネスフェス」、人気キャスターが舞台裏を披露

 11月27日から3日間、テレビ東京報道局として初めて「テレ東ビジネスフェス」という配信イベントをやります。『WBS』『モーサテ(Newsモーニングサテライト)』『ガイアの夜明け』『カンブリア宮殿』『特命!池上ベンチャーズ』などの番組スタッフや出演者が一堂に会してイベントを行う予定です。
 たとえば『WBS』では今メインを担当している大江麻理子と、須黒清華、解説キャスターの滝田洋一さんと山川龍雄さん。この4人のレギュラー出演者がまず登壇して、米大統領選の影響、世界最先端の技術、注目のベンチャー起業家、2021年の株式相場、菅政権のゆくえなど、オンエアではなかなか言えないことまで突っ込んで喋りましょうという話をしています。特に大江は、今「トップの決断」というコーナーを担当しています。これは、コロナ禍における経営上の決断などを名だたる企業のトップにインタビューしているコーナーです。そこで大企業のトップからどうやって話を聞き出すのかという「聞く力」について、インタビューの舞台裏も含めて彼女の口から話していけたらなどと考えています。興味深いテーマがたくさんありますので、ぜひ多くの人にご参加いただきたいと思います。
 
※2020年10月28日インタビュー当時の内容をもとに構成しています。
テレビ東京
大久保直和(おおくぼ・なおかず)氏。1991年テレビ東京入社。92年より報道局勤務。政治部で加藤紘一氏(当時自民党政調会長)等の番記者を務め、97年北京支局長。以後、『ガイアの夜明け』ディレクター、同チーフプロデューサー(CP)、『未来世紀ジパング』CP、『カンブリア宮殿』CP、『池上彰の現代史を歩く』CP、『WBS(ワールドビジネスサテライト)』CP等を担当。著書に「テレ東のつくり方」(日本経済新聞出版)がある。

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