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筑波大学 大学院

導入事例 Case Study
筑波大学大学院ビジネス科学研究科准教授 中村 亮介 氏

財務会計の基礎知識から高度な分析まで
リアルなデータで学べる実践ツール

筑波大学 大学院

ビジネス科学研究科准教授 中村 亮介 氏

導入しているサービス
  • 日経バリューサーチ (教育機関向け)

 筑波大学大学院ビジネス科学研究科は日本初の社会人のための夜間大学院として1989年に設立され、最前線で働くビジネスパーソン、リーダーに向けて、専門的かつ高度な教育を行っている。中村亮介准教授は会計学の講義に日本経済新聞社が提供する「日経バリューサーチ」を採用、個々の企業や業界などについて実際のデータを元に、財務や会計などビジネスの実践に役立つ知識やノウハウ、スキルの習得をサポートしている。中村准教授に講義での活用法、受講するビジネスパーソンたちの反応を聞いた。

―――先生が指導している専攻科目(経営システム科学専攻)の概要を教えてください。

 修士課程で教えているのは「会計基礎」「財務会計」「会計情報分析」の3分野です。「会計基礎」では簿記と財務会計の基礎を学びます。簿記は財務会計の基本であり、財務諸表に書かれている数字の意味を深く理解するためにもなくてはならない知識です。本学の学生は必ずしも財務会計の専門家とは限らず、他の専門分野の学生も多く在籍しており、そこが特徴でもありますが、簿記を基礎から学ぶことができるようにしています。

 「財務会計」では今、注目されている最新の会計基準を学習します。会計基準は時代によって変化します。たとえば、IFRS(国際財務報告基準)に基づいて会計処理をした場合、財務諸表にどうインパクトを与えるかといったことを学びます。会計処理方法の違いによって、財務諸表上の利益さえ変わってきますので、最新の会計基準を押さえておくことは必須と言えるでしょう。

 「会計情報分析」では企業価値をどのように算出し、評価するのかを学びます。授業の後半ではグループワークを行います。そして、財務会計の視点で企業価値を高めるにはどうすればよいか、というプレゼンテーションを行い、それに基づいて議論します。

―――「日経バリューサーチ」はどのように活用しているのですか?

 3つの講義すべてで使っています。

 まず、「会計基礎」では期末にレポートの課題を出します。「収益性」「安全性」をテーマに、ある企業が投資対象として、あるいは融資対象として適正かどうかを分析・検証します。その際、財務諸表からさまざまな指標を導き出し、多角的に分析します。たとえば、収益性であればROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)、安全性であれば自己資本比率などです。

 これらの指標は本来、財務諸表の数字を一つひとつ拾って計算しますが、その作業には膨大な時間を必要とします。仕事のある社会人ではなかなかそのための時間がとれません。「日経バリューサーチ」はさまざまな指標があらかじめ用意されていますし、その指標の計算式も簡単に抽出できるようになっています。実はここが大切なところで、財務諸表上の数字にどのような意味があるのかという本質は計算式の過程を理解しないと見極められないのです。
ビジネス科学研究科准教授 中村 亮介 氏
 たとえば、ROEを高めるにはどうすればいいか、といった検討をします。ROEの一般的な計算式は「純利益÷自己資本」ですから、単純に純利益が上がれば、ROEの数値も高くなります。一方、ROEは現場の視点で表した計算式「売上高利益率×総資産回転率×財務レバレッジ」でも求めることができ、さらにこの3つの要素を細かく分解していくと「ROEツリー」ができます。そこでは、ツリー上にある要素を抽出することで、「販売費を下げる」「在庫回転率を上げる」といった分析を細かく行うことができます。「日経バリューサーチ」ではこのROEツリーも見ることもできるので、分析を手早く行うことが可能となります。

 「財務会計」の授業では「会計基礎」とは別のコンテンツを利用しています。「日経バリューサーチ」は日本経済新聞の記事を読むことができるので、財務会計に関する記事をピックアップして学生に読ませています。たとえば、勘定科目の「貸倒引当金」をテーマにした記事がありました。銀行の融資実態と照らし合わせて、貸倒引当金の減少は企業にとってよいことなのかを問うた記事です。財務諸表の数字と企業実体を見極めるうえで、一つの参考になります。
 読んだ学生からは新聞の見方が変わったという声も聞かれました。

―――グループワークでもうまく利用されていると聞きました。

 「会計情報分析」の授業では企業価値、つまり企業の値段を財務諸表などから計算します。そして、どの数字が改善されればより企業価値を高めることができるかを、グループワークで議論し、結果をプレゼンテーションしてもらいます。

 その際、「日経バリューサーチ」の「株価・バリュエーション」のコンテンツを活用します。ここには企業価値を算定する項目がすべて閲覧できます。各項目の数値はすべて書き換えることができるので、シミュレーションも可能です。

 たとえば、売上高を上げれば、当然、企業価値の数値も上がります。“売上高成長率が1%上昇したら企業価値はどれだけ変わるか”、といったことも簡単にシミュレーションできるのです。手計算だと1つの項目を変えた場合、すべての計算をし直さなければなりませんから、その計算だけで授業が終わってしまいます。その点、限られた時間の中で分析を行う際に、「日経バリューサーチ」が大いに役立ちます。

 加えて、本校ではさまざまな職種の学生がいるため、学生の会計の知識レベルがまちまちです。それでも学生全員が同じレベルで議論ができるのは、「日経バリューサーチ」のおかげだと思っています。ROEツリーなど、ビジュアルなデータ表示に加え、シミュレーションが簡単にできるので、誰でも理解がしやすいからです。会計専門の人も他の職種の人も一緒になって、限られた時間で効率よく学ぶことができるのです。

―――このほか、活用できそうなコンテンツや機能はありますか?

 まだすべてのコンテンツや機能は使いこなしていません。

 たとえば、コンテンツの一つに「資金調達シミュレーション」がありますが、今度、これを授業で活用しようと思います。今、社債や株式に何%のプレミアムを付けて発行すると、その企業の財務状況がどう変わるかが分かるものです。身につけてほしいのは、単に会計の仕訳ができればよいということではなく、この取引をすれば財務諸表がどう変わるかを感覚的に捉えられるようになるということです。資金調達シミュレーションを使えば、どこがどう変わったかはすぐに画面で確認できます。

 また、学生を対象に、利用方法に関する講習会を開いてくれるのも助かっています。教育ツールとしても、使い勝手の良いツールだと言えますね。

学生が感じている使い勝手とメリット

学生A

 私の仕事は会計とは直接関係ないのですが、「日経バリューサーチ」のシミュレーションを活用することで、会計財務の経験がなくても先生から教えてもらったことが体で覚えていけるような感覚がありました。さまざまなデータがエクセルデータで取り出せるので、加工が自由にできるのが便利です。データからグラフもすぐに作成できますので、それをレポートに添付して提出しました。さまざまな指標はランキング化もされていて、業界別の売上高ランキングなど同業他社の比較も容易にできます。操作も直感的にできました。

学生B

 私は経理部門に所属していますが、いろいろな職種、業界の人と財務会計について意見を交わすのはとても新鮮です。グループワークでは「日経バリューサーチ」により、他分野の人との会計についての難解な専門知識の壁は取り払われます。そのうえで、私にはない発想でアイデアを出してきます。長く同じことをやっていると、どうしても固定概念ができてしまっており、自由な発想ができないということを実感させられます。
 私は普段の仕事でも授業でやったように他社の財務諸表を分析しています。ただ、ツールが何もなく、有価証券報告書から一つひとつ数字を拾って計算していますので、膨大な時間を要します。「日経バリューサーチ」があれば、かなり時間の節約ができます。会社の後輩に対しても「日経バリューサーチ」があれば、先生に教えてもらったように効率よく財務会計に関することついて教えられるのではないかと実感しました。グループワークでのプレゼンテーションにも便利ですし、会社で導入すべきツールの一つと考えます。
(中央)ビジネス科学研究科准教授 中村 亮介 氏

本日は、貴重な時間をいただきまして、ありがとうございました

(日経MM情報活用塾メールマガジン6月号 2018年6月11日 更新)

プロフィール

大学名 国立大学法人 筑波大学
大学院研究科 ビジネス科学研究科
設置 1989年
所在地 東京都文京区大塚3丁目29-1
学生数 501人(2017年5月1日現在)