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導入事例

導入事例 Case Study
POSデータ解析コンペティション2018報告会写真

学生がリアルなマーケティングリポート作成
コンビニ生データの分析を体験、成果競う

青山学院大学

経営学部マーケティング学科教授 芳賀 康浩 氏
経営学部マーケティング学科准教授 横山 暁 氏

導入しているサービス
  • 日経POS情報・SCAN CVSレシートデータ(教育機関向け)

 商品開発やマーケティング、プロモーションなど幅広いビジネス現場で、データとそのアナリティクス(分析)による活用の重要性が高まる中、大学や高校などで統計学的な知識やノウハウ、スキルを学ぶ機会を増やそうとする動きが活発化している。青山学院大学は企業との連携によるデータ統計分析の実践的な学習を推進、2017年にはデータ分析の資料として「日経POS情報 SCAN レシートデータ」を導入、2018年春、データを活用し経営学部の2つのゼミナール(ゼミ)が合同でグループワークを実施した。学生は7つのチームに分かれ、コンビニエンスストアの生のデータをもとにマーケティングに役立つ分析リポートの作成に取り組み、4月3日、その成果を競う「POSデータ解析コンペティション2018報告会」を開催した。学生たちの奮闘ぶりと成長、質の高いリポートの一部を教授や学生の声とともに紹介する。

 グループワークを行ったのは経営学部マーケティング学科教授の芳賀康浩氏と准教授の横山暁氏がそれぞれ主催するゼミ。あわせて25人の学生が参加、コンペティションでは、審査員として、POS情報を提供している日本経済新聞社デジタル事業BtoBユニットの担当者が協力した。

初めて触れる膨大なデータ、Excelがフリーズした!

 コンビニエンスストアにおける特定商品(今回は炭酸飲料)を含むレシートデータから見えてくる顧客の消費行動を分析し、新たなマーケティング提案につなげるというテーマが学生に与えられた。学生たちは春休みの2カ月間を利用してさまざまなアプローチから分析を行った。POSデータは2年分。報告会に出席した経営学科3年生の鳥羽輝さんは「Excelがフリーズしてしまうくらい膨大なデータだったけれど、そこにさまざまなフィルターをかけて、仮説を立てて検証し、一つの解を発見していくというプロセスが面白かった」と話す。

「このままで企業に提案できる」(審査員)リポートも

 学生たちの発表の中には「このまま企業に提案できる」と審査員に言わせるほどのレベルの高いものもあった。
 たとえば、炭酸飲料の期間限定商品の販売がそのメーカーの炭酸飲料全体の売り上げにどのくらい貢献しているかを調査・分析したチームは、期間限定商品を販売するコンビニエンスストアの立地や購買顧客の年齢層などを、大手メーカー数社に対して同じ条件で分析した。リポートのタイトルには「期間限定商品のヒットの法則」と記述、どの立地の、どの年齢層に対し、期間限定商品などのプロモーションを行うと効果的かという結果を導き出した。
 チームの経営学部マーケティング学科3年生の清水園夏さんは「データは主観が入らないありのままのものなので、自分の期待通りの結果がでないこともあったが、逆に、意外な発見があった」と振り返る。たとえば、炭酸飲料全体の売れ行きで見たら8月が一番売れているが、あるメーカーの特定商品に絞って集計してみると、2月が一番売れているというデータが出るなど、自分たちの先入観とは違う結果が出ることも。そうした「意外な発見」も踏まえた上で、リポートの中で「駅前、オフィス街への期間限定商品の展開増」を具体的に提案した。

発表の様子

微妙な差異を発見、深掘りの必要性実感

 また、炭酸飲料と特定保健用食品(トクホ)の炭酸飲料の2つのタイプの炭酸飲料を比較し、その購買層と併買品の動向を細かく調査・分析したチームもあった。リポートでは結果的にあまり違いが出なかったとしていたが、その比較データもまったく同じものではなく、たとえば、昼間のある時間帯にトクホの飲料が多く購買されているという微妙な差異をきっちりと指摘していた。この点について、報告終了後の講評の中で審査員からは「データはまったく同じということはない。微妙な差異に大きなヒントが隠されていることが多々あるので、その差異をもっと深掘りして、データを追究してほしい」というアドバイスがあった。

「いつの間にか、Excelでクロス集計」、ITスキルに自信!?

 今回のグループワークをきっかけに、実際のビジネス現場で役に立ちそうなスキルを身につけることができたと感じた学生も多かったようだ。「膨大なデータをまえに“Excel漬け”の日々を送っていた」というのは経営学科3年生の今井君章さんと金子奈央さん。「今まではExcelに触れたことすらなかったけれど、とにかくデータを調べて、調べて、調べまくって検証するという課題を与えられたおかげで、いつの間にか、ピボットテーブルを使ってクロス集計するなんてことを当たり前にできた」(今井さん)。

 報告会の最後には、審査員がビジネスの現場で実際にデータを活用してマーケティングに役立てて、成長している地方の老舗の造り酒屋の事例などを紹介。審査員は「データそのものには価値がない。そこから何か特徴を見つけ出し、自分なりの解釈・仮説を持って集計し、データを磨き上げていくということがこれからの過程として大切」と話していた。

データ分析スキルを持った人材を育てたい―――芳賀康浩氏

―――今回のグループワークの「狙い」はどこにあったのでしょうか。

 いま、ビジネスの世界ではデータを分析し、その結果に基づいて経営の意思決定をするということが、当たり前に行われています。データサイエンティストという職業が注目されていることからも、そうした現状は明らかです。
 ビジネス社会に人材を輩出する大学もビジネス社会で必要とされるデータ分析のスキルを持った学生を育てていかなければなりません。これは文系・理系を問わず、です。特に、経営学部だけでなく、社会科学系の学部は統計学的な学習の重要性が非常に高まっています。
 学生たちの中には「自分は文系なので、データなんて関係ない」と思っている人がまだ多い。その認識をより現実に即したものに変えていくという目的もあり、4年ほど前からゼミに入る前の3年生を対象に実際のデータを用いたデータ分析のグループワークを行っています。

芳賀康浩氏

―――企業と連携してこうした取り組みを始めたのはなぜですか?

 マーケティングに対するイメージは、大学1年生くらいでは「データを集めておいしいお菓子を作る」とか、そういうレベルだと思うのです。そのため、3年生からゼミに入ってマーケティングを専門的に勉強する前に、ビジネスの現場ではデータがこういうふうに活用されているという体験をさせる必要があると考えました。
 これまで大手企業のデータ分析ツールなども使っていましたが、折しも、昨年からデータ解析を専門にしている統計学の横山准教授が着任、Excelの使い方や学生の指導にも長けていることもあり、今年はより実践的な「日経POS情報 SCAN レシートデータ」を採用し、実習を企画しました。

―――発表会をやってみて、良かった点、悪かった点は?

 自分とは関係ない、できないと思っていたExcelを曲がりなりにも使えるようになったこと。それによって、文系特有のデータアレルギーやExcelアレルギーみたいなものはなくなったのではないかと思います。
 「課題」は2つ。1つはデータの表現や解釈の仕方です。審査員の講評にもありましたが、データそのものには価値がありません。そこから何か特徴を見つけ出すために、自分なりの仮説を立てて集計・検証し、分析したものを磨き上げて行かなければなりません。これは今後のゼミの中でそういう意識付けを学生たちにしていきたいと思います。もう1つは開催規模と継続性です。今回は2つのゼミで実施しましたが、できればマーケティング学科の学生全員にこのような実習を定期的に体験させたいと考えています。しかし、そのための仕組みや施設・設備などの拡充が課題であると考えています。

―――将来に向け、こうした取り組みを学生にはどのような形で役立ててほしいと思いますか?

 データサイエンティストになる必要はなくても、今後のビジネス社会ではどんな立場においてもデータを分析する能力は必要になってくると思います。ゼミの中でデータ分析の能力を磨いていけば、将来、必ず役に立つと思いますので、学生にも前向きに取り組んでもらいたいと思います。

身近なわかりやすさがメリット、商品や属性選択も簡単―――横山暁氏

―――「日経POS情報 SCAN レシートデータ」を導入した理由は何なのでしょうか。

横山暁氏

 以前教鞭をとっていた大学で活用していたこともありますが、青山学院大学がデータ分析によるマーケティングに力を入れたいということだったので、データ購入を働きかけました。
 メリットは、実際のコンビニエンスストアのデータなので、学生にも身近でわかりやすいという点が挙げられます。データ量も豊富で、さまざまな商品カテゴリーの中から特定の商品を選ぶことができ、店舗の立地や購買者の年齢層、性別などの集計も簡単にできます。今回は、炭酸飲料の購買が含まれるレシートデータ2年分を学生に渡しましたが、それだけでもExcelがフリーズしてしまうくらい膨大なデータで、もちろん学生はそんなデータ量を扱ったことがありません。膨大なデータに触れるという意味でも、学生のいい経験になったと思います。

―――効果はいかがでしたか?

 やはり大規模なデータを扱うことにより、Excelを使いこなすスキルはかなり向上したのではないかと思います。また、ゼミの中で一教員の前で発表する環境と、ビジネスの現場で活躍する企業の方々の前で発表するという環境は取り組みの真剣度合いがまったく変わってきますね。

―――今後も日経POS情報は活用していく予定ですか?

 そうですね。日経POS情報はデータが豊富にあるという意味では、学生たちに興味を持ってもらえるカテゴリーを選びやすいのがいいですね。

本日は、貴重な時間を頂戴いたしまして、ありがとうございました

(日経MM情報活用塾メールマガジン5月号 2018年5月21日 更新)

プロフィール

大学名 青山学院大学
創立 1949年
所在地 東京都渋谷区渋谷4-4-25(青山キャンパス)
学生数 17,906人(2018年5月現在)
学部 文学部、教育人間科学部、経済学部、法学部、経営学部、国際政治経済学部、総合文化政策学部、理工学部、社会情報学部、地球社会共生学部
Webサイト https://www.aoyama.ac.jp/