最終回 ネット時代に必要とされる情報の選択眼 

上野 佳恵 Yoshie Ueno

津田塾大学卒業後、株式会社日本能率協会総合研究所マーケティング・データ・バンクにて顧客向け情報提供サービスに携わる。のち、マッキンゼー・アンド・カンパニーにてリサーチ業務の傍ら情報センターの整備、トレーニングなどを手掛ける。 2004年にリサーチ関連サービス、コンサルティングを手掛ける有限会社インフォナビを設立。 著書に『情報調査力のプロフェッショナル』(ダイヤモンド社)。


前回のコラム第2回 ネット時代に必要とされる情報の選択眼

 "なんとなく検索"をやめ、検索をする前に目的を明らかにし、情報の身元を確認しながら進めることによって、情報収集の効率はあがる。しかし、情報は集めただけで終わりではない。目的に応じて、報告書だったり、企画書だったり、提案書だったり―と、何らかの形の資料にすることが必要とされる。本連載の最終回は、この情報のまとめ方、効率よく効果的な資料を作成することについて考えていこう。

フレームワークを使えば、まとめまでスイスイ

 インターネットの検索をしただけでもすぐにたくさんの情報が手に入り、SNSやニュースアプリなどから刻々と降ってくる情報もある。さらに、企業の中を見渡してみれば様々な種類のデータが存在する。このように、身近にある情報が爆発的に増え、しかも簡単に入手できるようになると、有り余るほどの情報をどうやってまとめるか、ということが問題になってくる。実際、私のところにも最近は「情報をうまくまとめられない...」という相談が増えている。しかし、問題は「まとめ方」にではなく、その前の情報の集め方や集めた情報の量や質にある場合が圧倒的に多いように感じられる。

 たとえば、A社についての最近の動向をまとめようと、会社名で新聞記事検索をしたとする。この1、2年の記事数が100件ぐらいあったとすると、みなさんはそれをどのように見ていくだろうか。キーワードを追加してもう少し絞り込む?見出しから役に立ちそうだなと思う記事を選ぶ?もしかして、とりあえず全部本文を表示・打ち出しをして後でじっくり読んでまとめよう―――などということをやってはいないだろうか。

 前回、必要な情報を漏れなくダブりなく集めるためにフレームワークを活用するとよい、という話をしたが、フレームワークに沿って情報収集を行っていれば、基本的に集める情報はそれぞれの枠の中に収まることとなる。もちろん、ひとつの枠だけに収まり切れない情報も出てくるだろうし、途中で「こういう情報もあったほうが良さそうだな」「これも役に立ちそうだな」と枠から外れた情報を入手しておくこともあるだろう。しかし、フレームワークを意識していれば、大幅に道を外れることはないはずだし、あれもこれもと大量の情報を集めてしまうこともないはずだ。

 入手できる情報の絶対量が限られていたころは、「集めるだけ集めて」→「それを読み込み」→「まとめる」―――という手順でもよかったかもしれない。しかし、これだけ情報が溢れていると、あれもこれもと目移りしてしまってキリがない。たくさんの情報があった方がなんとなく安心なような気がしてしまうかもしれないが、それを読み込むのには集めるのと同じ、いや、はるかに多くの時間が必要とされる。情報を効率的にまとめたいと思ったら、余分な情報を集め過ぎないことが肝心だ。そのためにも、情報を集める前に、目的をきちんと意識してそのためにどんな情報が必要かを明らかにし、フレームワークに沿って漏れなくダブりなく情報を集めていく、ということが重要となる。効率よく資料をまとめられるかどうかは、実は資料に必要な情報の入手の部分が握っている。

過ぎたるは猶及ばざるが如し

 余分な情報を集め過ぎないようにと言っても、それでもやはり手元には多くの資料が集まってくる。それらをすべて盛り込んだ資料を作ると、非常にわかりづらいものができあがってしまう。「資料が見づらい」、「わかりづらい」という原因の多くは、情報量の多さにある。記録として残しておくというような場合であれば、網羅性を重視した数十ページにも及ぶような資料であってもよいかもしれないが、1時間の企画会議のための資料が20ページも30ページもあっては、資料を説明するだけで終わってしまいディスカッションの時間がなくなってしまう。あまりページを増やさないようにと思うと、1ページあたりの情報量が増えて、ごちゃごちゃと何が書いてあるかわからない、何が言いたいのかわからないページが並ぶことになってしまう。

 集めた情報はすべて使いたくなる。時間をかけたり、苦労して集めたりした情報だったらなおさらだし、そうでなくても、肝心の情報が抜けているなどと指摘されたくはないので、念のために―という心理が働く。しかし、それは資料を作る側の都合にすぎない。数十ページに及ぶ資料を渡された人はそれを読む時間はあるのか、チャートが4つも5つも並んだページを見せられたらそこから何を読み取ればよいと思うか―資料の受け取り手、読み手の立場にたってみると、過ぎたるは猶及ばざるが如し、でさえある。

 そもそも、ビジネス資料というのは相手に何かを伝えるため、わかってもらうために作るものである。事業や業績の報告、新規事業や新製品の企画、顧客向けの営業用資料、などなど―――それぞれの立場、仕事によって、日ごろ作成する資料のタイプは様々だろうが、それを伝える相手がある、ということは共通している。業務上の資料だから当たり前だろう―と言われてしまいそうだが、目の前の情報をまとめなくてはと一生懸命になると、意外とこの視点が欠けてしまう。そうなると、相手が必要としている内容に沿ったわかりやすい資料、ではなく、自分の想いが詰まった資料、になってしまうのだ。わかりやすい資料を作るためには、相手のことを考え、自分が伝えたいことではなく、相手にとって必要十分な情報を厳選することが欠かせないのである。

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