第2回 ネット時代に必要とされる情報の選択眼 

上野 佳恵 Yoshie Ueno

津田塾大学卒業後、株式会社日本能率協会総合研究所マーケティング・データ・バンクにて顧客向け情報提供サービスに携わる。のち、マッキンゼー・アンド・カンパニーにてリサーチ業務の傍ら情報センターの整備、トレーニングなどを手掛ける。 2004年にリサーチ関連サービス、コンサルティングを手掛ける有限会社インフォナビを設立。 著書に『情報調査力のプロフェッショナル』(ダイヤモンド社)。


前回のコラム第1回 ネット時代に必要とされる情報の選択眼

 前回、フェイクニュースなどに踊らされないために、ビジネスパーソンに必要とされるのは情報を見極める眼であるということを述べた。その選択眼を磨くための3つのポイント、(1)情報の身元を意識し確認する(2)ダブルチェック・トリプルチェックの習慣(3)想像力を働かせる―――はいわば、日々の心がけである。何事も一足飛びに専門家にはなれないように、地道に積み重ねているうちに、身についていくものだ。この心がけをないがしろにしてはいけないのだが、一方でビジネスパーソンには効率も求められる。働き方改革が言われ、資料作成などにかけることのできる時間はどんどん減らされている。

 今回は、効率よく最短の時間で、資料などの作成の際に必要な情報を得るためのポイントを考えてみたい。

"まずは検索"が生む「非」効率

 何かを調べようと思ったときに、たいていの人はほぼ無意識にネットにアクセスするのではなかろうか。キーワード検索をすればたいていのことはわかるし、SNSでつながった友人からも貴重な情報を得られることは多い。しかし、この"無意識に"というのが最大の落とし穴だ。

 知りたいこと、わからないことがある、から検索をするのであるが、本当に調べるべきことはきちんと意識されているだろうか。たとえば、前回紹介した京都市の人口データ。必要なデータ=京都市の人口、というのは明確であるが、何のためにその人口データが必要なのか、どんな目的のためにそのデータが必要なのかを意識していないと、本来、住民基本台帳人口を見た方がよいのに、国勢調査による人口を使ってしまうことにもなりかねない、というのは説明をした通りだ。

 これが「来週訪問するA社について調べておいて」と上司に言われた場合だったらどうだろう。まずはネットでA社のホームページを開いてみたり、社名でキーワード検索をしたり、というケースが多いのではないかと思う。しかし、この"まずはなんとなく検索"から始めてしまうことによって、実は資料作成全体の効率が悪くなっている。

いったい、何のために調べるの?

 「A社について調べておいて」と言われた時に、まず行うべきはA社のホームページを開くことではない。何のためにA社について調べようとしているのか、を考えることである。「上司に言われたから」ではビジネスパーソンとして失格というのは言うまでもなく、来週A社を訪問する目的は何かという点から、A社について何がわかれば良いのかを考える。

 最近のA社との関係を考えてみれば、「最近A社からの引き合いがないので、あいさつを兼ねて様子をうかがいに行く」、「A社とは最近新しく取引が始まったところで、今後も良好な関係を築いていくため」などなど、訪問の目的はある程度想像がつくはずだ。それに応じて、「最近引き合いがない」のであれば、A社の最近のビジネス展開状況やうちの会社との取引をどう考えているのかを探りたいのだから、新聞・雑誌の記事などからA社の動向、ビジネス展開状況を中心に見ておくべきだろう。

 一方、A社が新たな取引先であれば、売上や業績などの基本情報も必要だし、関係を強化していくために相手の懐に入りこむのに役立つような情報、たとえばA社の社風や社長のパーソナリティなども役に立つかもしれない。

 もちろん、自分でA社訪問の目的を考えることも重要であるが、その想定が上司の本来の目的と一致していないと元も子もない。上司が忙しそうだから、などと気を遣ったつもりでこのすり合わせを行わないと、せっかく調べてまとめた資料もそのために使った時間も無駄になる。逆に、皆さんが部下に調べごとを依頼する立場だとしたら、ただ「調べておけ」というだけでは、自分が必要とする内容とは違う情報が出され、やり直しという無駄が生じかねない、ということを考えておくべきだ。

 言わなくてもわかるだろう、が常に通用するとは限らない。

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