オックスフォード・アナリティカ政治経済分析レポート

『Oxford Analytica Daily Brief』(オックスフォード・アナリティカ・デイリー・ブリーフ、OADB)概要 ▼

OADBは、1975年に設立された英国の国際規模のコンサルティング・調査会社Oxford Analytica(オックスフォード・アナリティカ)社が毎日、世界の意思決定者に向けて発信するインターネットによる国際政治・経済分析レポートです。

分析対象はグローバルな構造問題や地域問題、さらには特定の国に関する政治・経済情勢まで多岐にわたります。しかも、メディアが報道する事実内容だけにとどまらず、英オックスフォード大学の教授をはじめ世界各国に学者・研究者ら約1,400人にも及ぶアナリストが、深い見識と卓越した手法を駆使することで、高度な分析と予測を行っています。そこには、創業者であるデイビッド・ヤング会長がかつて米国のキッシンジャー安全保障担当補佐官の下で活用していたノウハウが生かされており、まさに「インテリジェンス情報分析」と呼ぶにふさわしい高いクオリティーが維持されています。

日経メディアマーケティングは、1日平均20本から30本程度更新されるOADBレポートの中から三宅豊氏が厳選し日本語に翻訳したものを、日本語訳サンプルとして毎月1回、2-4本をめどに掲載します。

日々多発する国際的な様々な事象の行方、さらには周辺国・地域、自国・企業への影響をどうみるべきか―。こうしたグローバルな視点で中・長期的なリスク管理などの政治・経営判断を下す際の有効な情報源として、OADBレポートは官民問わず世界で幅広く利用されています。本サービスの一部を日本語訳で実際にお読み頂き、是非、サービス導入のきっかけとしてご活用ください。

三宅 豊氏:Oxford Analyticaアドバイザー。東京都立大学(現・首都大学東京)法学部卒業。1962年、通商産業省(現・経済産業省)に入省。1994年、貿易局貿易保険課海外情報企画室初代室長。貿易保険事業のカントリーリスク・マネジメント体制作りに従事。1997年に退官。その後、貿易保険機構理事兼カントリーリスク研究所長、通産省「鉱業審議会」専門委員、日本貿易保険の初代監事を務めた。また、イギリスの王立国際問題研究所(RIIA)中東部の客員研究員として情勢分析の訓練を受けた。

〔この報告は2017年11月14日午後3時(グリニッチ標準時)にオックスフォード・アナリティカ社本部と世界各地のOADB購読者を結んで行われた国際電話によるディスカッション内容を要約したものである。
 ディスカッションは3人の中国専門家がそれぞれ10分程度のプレゼンテーションを行い、その後、世界各地のOADB購読者からの質疑応答が行われた。中国に関する国際電話会談は2回目であり、前回は2014年12月10日に行われた。
 この3年の間のOADB購読者の中国に関する認識の変化は大きく、第1回目の討議では中国はどういう存在か、彼らのアイデンティティは何か、西側と何が異なるのか、何を望んでいるのか、というような問題意識が中心であった。
その後、2015年にマイケル・ピルズベリーが"Hundred-Year Marathon"(邦訳タイトルは「China 2049 秘密裏に遂行される世界覇権100年戦略」、日経BP社、2015年9月発刊)を出版し、西側諸国の中国専門家の「中国は経済発展すれば必ず民主主義的価値観を共有できるようになる」との共通認識が実は我々の「思い込み」で、中国はまったく異なる将来像を描いていることを明らかにしてくれた。第2回目ではピルズベリーの著書の英文タイトルが今や着実に実現に向かって進んでいる状況が認識の前提に在るなかで行われている:訳注〕

1.はじめに

 2017年10月の第19期中国共産党全国代表大会(中国共産党大会;5年ごとに開催)の演説で、習近平中国共産党総書記は「中国の新時代」の到来を正式に宣言し、中国が人類の利益のために国際問題に対して従来以上に積極的な役割を担うつもりであると述べた。
 同大会で、過去数十年間で最も強力な指導者である習近平党総書記は中国の政治全体をさらに強力に把握したことを示した。党中央委政治局員を彼の同志や協力者でいっぱいに入れ替えながら、後継者を育てようという兆候をみせなかったことは少なくとも、2027年までの3期目も彼が中国政治の最高指導者としてとどまる意志を示している。
 習近平党総書記の名前が中国共産党規約に書き込まれた結果、中国共産党に忠誠を誓うことは習近平党総書記に忠誠を誓うことと同じことであると考えられ、それは彼自身の代表的な政策、その中で最も抜きん出ている「一帯一路」構想が代表するスローガン群に対しても忠誠を誓うことと同じである。

2.習近平の中国について、我々が確認すべきことはなにか?

 我々が習近平党総書記の目指す「新しい中国」について理解しておくべき点は次の3点である。

  • ①  習近平党総書記のリーダーシップは独裁者のリーダーシップではない。彼が党大会に提出した過去5年間の政治活動報告において、新しい課題とともに、中国が今後、目指すべき「新しい方向」を示唆するいくつもの視点が提案されている。習近平の権力の大きさについては、中国政治の最高意思決定が「集団指導体制」を取っていることを記憶しておく必要がある。最高指導者会議であり最も重要な決定を行う共産党中央政治局常務委員会を構成するいわゆる「チャイナセブン」メンバーは厳密な任命基準を経て選ばれている。就任時に年齢が67歳を越えてはならず、全員が閣僚級のポストを経験している。常務委員会はおべっかを使うだけの者の集まりではない。ただし、序列では「チャイナセブン」のすぐ下に当たる25人の政治局委員には多くの習近平支持者がいる。
  • ②  1989年以後では初めて、今回の新しい常務委員会メンバーに「次期党総書記後任」に指名された者が含まれていないが、この変化が将来潜在的な波乱要因となりうる。しかし何人かの常務委員は2022年の次期改選時に留任する資格を持っているため、政治の継続性は最低限、保証されている。
  • ③  習近平党総書記自身の価値体系(思想、イデオロギー)が「党規約の行動指針」に書き込まれた重要性に関していえば、2000年代初期に江沢民党総書記が中国共産党員に労働者と官僚に加えて「経済人」に党員資格を与えて、この3者が「党を代表する」という考え方を導入した時のように、今回、新しいイデオロギーが党規約の中に一体化したことは指導者間の重大な政治的対立が解決したことを示している。しかし、「習近平思想」の導入が同じような経過をたどったかどうかは明らかではない。なぜなら、解決すべき課題が何であるか、「習近平思想」では明らかになっていないからである。

 習近平党総書記は原理・原則を定める法王のような存在にはなっていない。これまでの国内政策はそのまま継続されている。習近平とともに中国を統治しているグループは中国がどのように発展すべきか、それぞれが独自の見解を持っている。

 今回の中国共産党の規約修正は我々西側から推測できる、中国におけるいくつかの実態を明らかにし、そのうちもっとも重要なポイントはいわゆる「主要な矛盾」(Principal contradiction)の再定義である。以前、毛沢東時代は労働者階級と資本家階級の間の矛盾だった。習近平党総書記時代は「発展の不均衡」と「人民のよりよき生活を求める要求」との間の矛盾である。ここでは新たに地域間の配分問題や人民間の不平等に焦点が当てられている。

 外交政策の分野では自信にあふれ(confident)、声高な(strident)外交を目にするだろう。
 経済分野に関しては財政制度と厚生・社会保険制度の2分野の改革が重点課題だろう。

3.「新しい中国」は世界にとってどんな意味を持つか?

 我々は自信にあふれ、自己主張の強い(assertive)中国を見ることになるだろう。我々が中国共産党大会で見たものは「鄧小平の時代が完全に終わった」という、習近平党総書記からの明確な宣言だった。鄧小平時代の内政における「改革・開放」の時期が終わり、外交面では中国がもはや「韜光養晦(とうこうようかい;爪を隠し、才能を覆い隠し、時を待つ:訳注)」である時代ではなくなっているとの認識である。

 しかし、この自信にあふれた中国を、東シナ海・南シナ海問題に対して今後一層自己主張を強めていく中国と同一とみることは間違いだろう。第2次習近平政権はソフト路線ではないだろうが、この地域での拡大に焦点を合わせることはないだろう。南シナ海情勢はフィリピンのドゥテルテ大統領の登場によって安定してきている。この状況が続くか否かはともかくとして、中国はこの地域で問題を起こすことを回避しようとしたがっている。

 新しい自信に満ちた外交の最重要項目は「一帯一路」構想であり、中国共産党の規約に書き込まれている。「一帯一路」構想が中国代表する外交政策であり、どんなにコストがかかっても失敗が許されない政策となっている。それより長くとはいわないまでもこれから5年間は「一帯一路」構想が中国外交政策の最も重要な「原動力」となるだろう。

 台湾との関係は緊張が高まり、より厳しい状況になるだろうが、中国共産党の人民解放軍は台湾に侵攻する立場にはない。人民解放軍は構造改革中であり、中国以外の地域に展開できるようになるには、まだ何年も時間を必要とするだろう。

 香港では北京政府からの圧力が高まり、若い世代の活動家が香港の自治や民主化の進展を北京政府に求める抗議行動を起こす余地はより狭まることになるだろう。

 中国の北朝鮮政策を理解するためには、伝統的な国益観に基づく計算にとらわれることなく、中国共産党の利益の観点からみていく必要がある。中国共産党は北朝鮮問題を米国に利益があるようなかたちの解決を求めるのではなく、北朝鮮が国家破綻の瀬戸際まで追い詰められる状態を避けつつ、単に北朝鮮を封じ込めようとしているに過ぎない。

 中国と日本の関係は難しく、慎重にマネージする必要があるだろう。中国政府は安倍首相を信頼しておらず、安倍首相の本心を疑問視している。安倍首相はトランプ大統領との強い個人的な関係を固めている一方、中国に対して期待できる限り友好的な対応をとり続けてきている。レトリックの応酬はあるにしても安倍首相は中国側に気まずい思いをさせるような行動を取らないようにするだろう。中国は、日本が北朝鮮との間で核・ミサイルによる緊張が高まることによって核防衛能力を得ることに、過度の心配はしていない。

4.第2次習近平政権下でどんな経済発展が期待されるか?

 今回の中国共産党大会で、習近平党総書記が自分自身のレガシー(政治的遺産)を「中国を繁栄させたリーダー」として定義されることを願っていることが明らかになった。このことは、習近平の名前を毛沢東と鄧小平を含む中国の偉大なる指導者のなかに不動の地位を築くことになるだろう。中国政府が定めた政策目標の実現はタフな仕事である。中国は国民の平均収入を2020年までに2010年の2倍に引き上げることを目指しており、これまでのところ、目標に向かって順調に進んでいる。しかし、次の段階の目標はさらに挑戦的である。つまり、2035年まで繁栄(成長)を続け、2050年までに、多くの実行中の政府機関の改革を「市場経済支援機関」に完全に適合させることを目標に掲げている(2049年は、2017年党大会で明らかになった習近平の「2つの100年計画」の後者で「中国建国100周年」であり、同時に2040年までに、「米海軍と対等な海軍を建設」するという劉華清構想が伝えられていることを念頭に置く必要がある:訳注)。中国では退任後も実質的な権力を行使できるにもかかわらず、こうした長期的な目標を立てたこと自体、習近平党総書記が2期10年で退任する意図がないことを示唆している。つまり鄧小平が公式ポストから引退した1990年代でも最高指導者として死ぬまで君臨し続けたように。

 経済改革は現在、進行中である。金融機関の改革は一部で成功を収めているが、「中国共産党」が民間企業において「大きな役割」を果たしていることによって、国家の民間部門への侵入(incursion)が依然として続いている(本レポート2018年1月号の後段「中国:中国共産党が在中国外国企業の経営方針介入強化へ」を参照:訳注)。
 それにもかかわらず、意味のある改革も行われている。その一つは近々、外資系金融機関が中国の地場銀行について支配的な株式数まで取得できるようになることであろう。この政策は、低下している金融セクターの構造改革のスピードを上げようとする試みであり、これにより「中国の潜在成長力」を引き上げ、さらに進んだ金融の「効率化」を導入することで「金融危機」を回避するために、絶対に必要な措置である。
 中国では「リスクと資本の配分」が依然としてゆがめられている。これは国営銀行が支配している「金融制度の改革」のスピードが鈍いことによるところが大きい。効率性や生産性、イノベーションを改善することで金融制度を改革するためには、企業により多くの資金調達の選択肢を与えることができる「金融制度改革」にすることが必要になるだろう。

5. 中国経済に国家統制主義は残るのか?パラレル経済は存在するか?

 中国は「国家として重要な産業」を保護しているフランスの例を研究している。中国の多くの戦略的国営産業は完全民営化されることはないだろう。(なぜならば)中国の経済成長のために必要な「効率性」と、国営企業全体を刺激して業績を良くするために戦略的国営企業に「競争原理」を導入して中国の経済成長を図る「方法(アプローチ)」の間には、緊張関係がある。1990年代にはいくつかの産業セクターで、競争原理を導入し、成功した事例はあるが、まだ、中国には30万社の国営企業が残っている。株式の保有形態がこうした国営企業を変えるとしても、ハイテク産業のような分野で中国を進歩させるのに十分であるかどうか、はっきりしないのである。

6.「上海閥」はいまだ権力を持っているか?

 人事の動きを説明するための「派閥モデル」については注意が必要である。そもそも派閥とはなんであろうか?彼らは政党ではない。派閥はメンバーの忠誠心、責任感そして世界観が重なり合って成り立つ。多くのメンバーは1つ以上の派閥に属している。習近平党総書記も以前、上海市党委書記の地位にあったので、形式上は上海閥の一員と考えられる。上海市党委書記の地位にあった者のほとんど全員は党中央政治局常務委員に就任してきている。
 党政治局常務委員会の新委員は中国についての見方がそれぞれ異なっている。たとえば、汪洋常務委員はメンバーの中でより「自由市場主義」に寛容で、広東省党委書記を務めていた時代、経済改革を進めた経緯がある。一方、王滬寧常務委員は政治学者で中国共産党指導理論のトップ・ブレーン(江沢民、胡錦涛、習近平と3代にわたって仕えており、江沢民の「三つの代表」重要思想、と胡錦涛の科学的発展観の肉付けを行い、習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想を作成した:訳注)であり、より国家統制主義者で権威主義者に近い。

7.EUとの関係、対NATO政策は?

 中国とEU(欧州連合)との関係は英国が脱退しても基本的には変化はない。英国にとっては中国との新しい貿易関係交渉はタフなものになるだろう。中国にとって、英国は他のEU諸国への入り口としての役割を果たしてきただけに、中国と英国との経済関係はある程度、調整があるだろう。
 中国はNATO(北大西洋条約機構)とは直接の関係は持っていない。欧州におけるロシアの復活はNATOの注意を引くかもしれない。NATO側にそれ以上の関心はありそうにない。

8.対北朝鮮制裁をどこまで強化するのか?

 中国は米国および国際社会との関係を確保するために多くのことを行っている。中国政府は2017年11月初めにトランプ大統領が中国を国賓として訪問したその日に北朝鮮を訪問した自国民を処罰した。中国が北朝鮮問題を深刻に受け止めていることを示し、トランプ大統領を安心させるためだ。トランプ大統領のアジア訪問中は、中国は北朝鮮に圧力をかけてミサイル発射テストやそのほかの挑発行為をやめさせていたと推察される。
 習近平党総書記が10月の第19中国共産党大会のすぐ後に、トランプ大統領の訪中を受入れることに自信を持っていたということは、彼が北朝鮮政府のエスカレーションに当惑しなかったことは確かだったことを示唆している。中国はたとえ米政府が主張するより少ないとしても、世上、知られている以上に、北朝鮮に対する圧力手段を持っている。

9.北朝鮮政策に対する世論は割れていないか?

 2010年には中国世論に分裂がみられたので米国の要求に対して即座に返事ができなかった。中国はこれまでより北朝鮮に対する圧力を強めている。2017年6月、中国国営石油公社(CNPC)は北朝鮮向け石油輸出を停止した。ただ、中国は昨年までと比べて影響力が弱まったようにみえる。2006年には核実験を実施した北朝鮮に対して謝罪を強いた経緯がある。

10.「中所得国の罠」を回避できるか?それはいつか?

 これまで「中所得国の罠(わな)」を回避した国は数少ない。(わなを免れて)繁栄してきた国は電力や蒸気エンジンなど汎用技術(GPT=General-purpose technologies)の登場によって、経済成長を推進してきた。デジタルテクノロジーが汎用技術として同じように経済成長の推進力として機能するかどうかがはっきりしない現在でも、中国はその生産性を引き上げようとしている。
 重要産業部門の巨大な国営企業組織が中国経済にゆがみをもたらしている。世界総人口の5分の1に当たる中国の総人口13億5000万人があまねく裕福になることは困難である。中国は巨大な経済力を持つ国となり、豊かな都市中産階級を生み出すだろうが、農村部を含めたすべての市民を繁栄させるという政治的な目標は重大な課題である。
 高付加価値サービスにチャンスがあるだろう。外資系金融機関に対し国内金融機関の経営権を与える「金融市場の開放」は中国が金融機関のサービス部門の開発のために外国企業からより高いノウハウ、スキルをどのように学び取ろうとしているか、一つのサンプルである。1980年代、1990年代の製造業で管理しながら外資導入をしてきた例と同じである。中国は製造業で順調に価値を高めてきており、いま、サービス産業でも同じ経路を辿ろうとしている。
 ひとつの産業分野が外資に開放されるとき、中国人が外資の「開業」過程をコントロールするので現地企業へノウハウの移転が生じる。中国の合弁会社は、よくあることだが、たとえ現地企業の幹部(マネジャー)のなかに経験者がいなくても、現地企業から50%の幹部を雇用することを外国資本に要求するのが典型的な例だ。

 中国は製造業の価値をめざましい速さで高めてきた。いまや、ドイツのような最高水準の製造業と競合するばかりになっている。

11.金融サービス部門の改革後、資本取引の自由化が実現するか?

 中国人民銀行は人民元の完全交換性実現に向け10年計画を進めている。いったん、人民元の激しい売買に耐える強固な金融システムを確立させた後は、資本取引を自由化するだろう。中国はそのために適切な基本的な条件をそろえている。それを進めずに後退させているものは金融セクターにある(イ)不良債権問題の存在(ロ)シャドー・バンキングの成長(ハ)規制体系・組織の弱さ(ニ)企業統治能力の弱さ――――の4つの弱点である。
 中国人民元に対する需要が大きく、取引量も拡大している。しかし、中国政府機関は人民元を日本円のようになること(流動性は高いが価値が変動する流通通貨となること)を望んでいるのではなく、米国ドルのように(基軸通貨として)貯蔵価値のあるものにしたいと考えている。

12.改革なしに財政的制約をどう克服するのか?

 中央政府と地方政府の間で財政的な取り決めが変化しつつある。財政支出と財政収入の間にミスマッチがある。中国は財政について、中央集権が強まったり、逆に地方分権が進んだりする時代を経てきている。社会保障制度の発展の多くは地方政府によるものである。地方政府が発行する債券の市場は整備が進み、地方自治体は中央政府の関与なしに資金調達ができ、財政金融面で自由を与えられ、シャドー・バンキングへの依存からも脱却している。
 中国は今後10年以内に、高齢化の進展に伴い社会保険や年金の支出が増加することによって、「財政危機」が発生する可能性がある。中国の政府支出はGDPの21%で、国際比較では少ない。このことは中国が現在の経済成長率を前提にしながら、それに耐えうるように財政制度を強化しなければならなくなることを意味している。中国の総人口は2年間、減少し続けており、これは日本を除くと、どの国よりも悪い。中国の所得水準は日本に比べてまだ、足元にも及ばないので、この財政制度の強化という問題の解決はいまでは緊急を要するようになっている。

13.2期目の習近平党総書記が成し遂げるべきことはなにか?

  • ① 彼はこれまでの中国における政治手法を変える。
  • ② 中国は穏やかに繁栄する社会となるだろう。生活水準は改善され、極貧層は解消される。
  • ③ 習近平党総書記政権は破綻することなく、その地位を保っているだろう。

(2017年11月14日付の国際電話会議)
原文:China's New Era外部サイトへアクセスします

  • 本日本語訳は、OxfordAnalytica社の承諾の下、翻訳されたものです。
    本日本語訳はあくまでも便宜的なものとして利用し、適宜、英文の原文を参照していただくようお願いします。当社は、原文にできるだけ忠実に翻訳するよう努めていますが、その完全性、正確性を保証するものではありません。また、本日本語訳に記載されている情報より生じる損失または損害に対して、当社及び翻訳者は一切の責任を負わないものとします。
  • 無断複製転載を禁じます。

ページ先頭へ

1/状況

 駐中国ドイツ大使は中国共産党が中国国内のドイツ企業に対する侵入(encroachment)を強めていると警告しているが、現在のところ、撤退を考えているドイツ企業は少ない。
 在中国ドイツ商工会議所は2017年11月17日、「2017-18年中国企業景況感調査」を発表した。(※1)その記者会見において、マイケル・クラウス駐中国ドイツ大使はいくつかの中国に進出しているドイツ企業が、自社内に形成されている「中国共産党(企業内)委員会」(Communist Party committees)が当該「ドイツ企業の意識決定」に従来より大きな影響力を直接与えることを受入れるべきとの圧力に直面していることを明らかにし、このために、中国からの撤退の検討を迫られるドイツ企業がでてくる可能性があることを指摘した。(※2)ドイツの対中国直接投資額は2016年の欧州連合(EU)全体の半分以上を占めている。同調査に回答したドイツ企業のうち約39%が中国市場で以前ほど歓迎されなくなっていると感じ、「より歓迎されている」と回答した企業は6%となり、前回2016年調査の11%から低下した。しかし、回答企業の87%は今のところ、撤退する予定はないと回答している。

2/結論

 中国政府当局は、外国企業が中国政府のどのような要求にも頭を下げてまででも中国市場へのアクセスが欲しいと決めつけているようにみえる。多くの場合、中国側の認識は正しい。しかし、中国は外国企業の先進的な技術とノウハウが必要なため、外国企業に大量に撤退されては困るし、もし、外国企業が自国政府を説得して企業の代理として同政府に報復を仕掛けさせるようなことになると、中国はなお、傷つきやすく脆弱である。中国政府当局は以前、外国企業の反対にあって政策を撤回したり、また、実施したりすることもあるが、習近平政権は「社会全体に対する中国共産党の支配」をさらに強化しようとする動きを和らげることはないだろう(この結果、EUは中国に対して世界貿易機関(WTO)が「市場経済地位の承認」を与えることに反対しているし、中国も承認を得られなくても国内市場における中国共産党の支配によるコントロールのメリットを感じている模様:訳注)。

(本ウェブサイト掲載の、2017年9月号「中国:新しい「国家情報法」が中国のスパイ活動に法的根拠」(同年8月21日付OADB)において、外資系企業は社内に中国共産党の「細胞」を受入れなければならないという「国家情報法(2017年6月28日施行)」の外資系企業に対する悪影響について報告したが、上記のドイツ大使発言(注2:サウスチャイナモーニングポスト紙 2017年11月17日付)によれば中国共産党の組織(organizations)が外資系企業の取締役会出席を求めているので、重要な経営上の決定が中国側に筒抜けとなる危険性を示唆している。
また同大使は、10月の党大会において「党規律委員会の官僚」は2016年末現在で、「在中国外資系企業の70%」に中国共産党の「細胞」を確立し、マネジメントレベルに歓迎されていると述べたと語っている。上記の中国企業景況感調査においてドイツ商工会議所のヘルマン会長も「社内の党細胞(cell)」の存在は受け入れるが、「党組織委員(party members)」の取締役会への出席には反対すると述べている。
 また、同調査ではサイバーセキュリティ法に基づくインターネットへのアクセス障害とインターネットのスピードの遅さが企業活動に大きな障害になっていると述べられている。この問題は2017年12月7日付の日経電子版の記事「中国、非情のネット遮断 日本企業を覆う監視網」でも、日本企業の事業展開に大きな障害となっている旨が報告されている。その他、本ウェブサイト掲載の2017年10月号「中国:中国の国境を越えたネット規制が変化を遂げようとしている」、同年11月号の「中国:トランプ政権下で高まる、ハイテク技術に関連する米中間の緊張」及び2017年8月24日付の「中国:国営企業改革は、中国共産党による中国経済の直接コントロールを強める(原文:China's SOE reforms tighten Party control of economy外部サイトへアクセスします)」(未翻訳)も合わせて参照されたい:訳注)





(※1)"Improved Business Expectations Despite Difficult Investment Climate and Continued Business Challenges (November 16th, 2017)"
http://china.ahk.de/news/single-view/artikel/press-release-improved-business-expectations-despite-difficult-investment-climate-and-continued-business-challenges-business-confidence-survey-2017/?cHash=038e863bde66201f4e5f3ba99c2ca824
(※2)"German firms warn Chinese Communist Party's drive to gain more control over business operations may drive them away (November 17th, 2017) "
http://www.scmp.com/print/news/china/diplomacy-defence/article/2120423/german-firms-warn-chinese-communist-partys-drive-gain

(2017年11月17日付のOADB短信)
原文:Party will tighten hold on foreign firms in China外部サイトへアクセスします

  • 本日本語訳は、OxfordAnalytica社の承諾の下、翻訳されたものです。
    本日本語訳はあくまでも便宜的なものとして利用し、適宜、英文の原文を参照していただくようお願いします。当社は、原文にできるだけ忠実に翻訳するよう努めていますが、その完全性、正確性を保証するものではありません。また、本日本語訳に記載されている情報より生じる損失または損害に対して、当社及び翻訳者は一切の責任を負わないものとします。
  • 無断複製転載を禁じます。

ページ先頭へ

1/状況

 一連のスキャンダルと論争がオーストラリアを「中国の影響」から守ろうとする手段に駆り立てている。
 2017年12月6日、中国の駐オーストラリア大使館はオーストラリアの「国家安全保障法案」に対して、両国の信頼関係を傷付けると非難し、オーストラリア政府高官の発言を「無責任」と非難し、地元のメディアについて「反中国感情」をたきつけたと非難した。国家安全保障法案は「経済情報のスパイ行為および政治に対する外国からの干渉」を防ぐことを目的としている。ターンブル首相は12月5日、オーストラリアにおける「中国の影響」について、不穏な許されざる動きがあると発言した。2017年の一連の論争は中国の影響がオーストラリアの政治制度や安全保障、経済的競争力、そして表現の自由に対する「中国の影響の潜在的な脅威」について、公開の場における議論が巻き起こっているものである。オーストラリア政府は11月に外交政策白書を発表、そこでは米国との関係強化が優先順位1位と書かれているが、一方で中国とより広範囲の和解がなお、望ましいという意見も有力な見方として議論されている。

2/結論

 この議論は、中国との経済的な関係を守るために良好な関係を維持したいという立場と、一方でオーストラリアの国家主権を守り長年にわたる米国との安全保障上の同盟関係を維持したいという立場を、どのようにバランスを取っていくかというものであり、見通せるような将来には解決しないだろう。政治的な振り子は対中国「懐疑派」と「友好派」の間で振れ続けることになる。しかし、両国間には「相容れない政治的な価値観の相違」があり、オーストラリアが中国と真に同じ車(truly bandwagoning with China)に乗ることはないだろう。価値観や親和性の共有に基づく信頼関係ではなく、経済的な利害や新しい現実に対する不承不承の容認に基づいて、どんな和解が生まれるにしても、それは警戒されるだろう(will be cautious)。

(2017年12月6日付のOADB短信)
原文:New policies will not settle Australia's China debate外部サイトへアクセスします

  • 本日本語訳は、OxfordAnalytica社の承諾の下、翻訳されたものです。
    本日本語訳はあくまでも便宜的なものとして利用し、適宜、英文の原文を参照していただくようお願いします。当社は、原文にできるだけ忠実に翻訳するよう努めていますが、その完全性、正確性を保証するものではありません。また、本日本語訳に記載されている情報より生じる損失または損害に対して、当社及び翻訳者は一切の責任を負わないものとします。
  • 無断複製転載を禁じます。

ページ先頭へ

特徴 日本語訳サンプル一覧 日本語訳サンプル2018年1月号
導入をご検討のお客様は、お気軽にお問合せください このサービスに関するお問合せ
導入事例
大学・教育機関の導入事例
募集中のセミナー
日経テレコン
採用情報
ページ先頭へ