導入事例|富士フイルム|情報を戦略に活かすポイント

 写真フィルムで培った技術を基盤に、デジカメや化粧品に加え、人々の健康に関わる「メディカルシステム・ライフサイエンス分野」やスマホ・PCの液晶ディスプレイを支える「高機能性材料分野」などに事業分野を拡大中の「富士フイルム」。それらの最先端技術研究や製品開発を主導・統括するR&D統括本部でR&D戦略を支援する情報戦略が担当の中山氏に、日経グループ提供の新聞・雑誌情報をどのように取り込み戦略に活かしているかをお聞きした。

情報を戦略に変える活用プロセスとは?

情報を戦略に変える活用プロセス
 戦略の情報源は、特許、学術文献、新聞・雑誌記事などの様々な情報。

①それらの情報を収集・整理→
②情報を多面的に解釈・評価→
③創造性を加えてビジネスの切り口で考案→
④社会・技術・その他の環境要因等と照らし合わせて仮説・検証→
⑤自分のビジネスがこの方向でうまくいくという将来予測に根拠を持たせる→
⑥戦略としてアクションに移す(提案をする)

というプロセスで戦略実行に至る。


情報収集・整理を効率化するには?

 戦略を立てる上で欠かせない情報収集・整理だが、個々の社員が時間を割いていては非効率である。
しかも、スキルとノウハウを要する作業でもあるので、このプロセスを効率的に行うために自動化し、個・チームが研究・開発プロセスに注力できるように、中山氏が中心となって開発したのがFujifilm情報ポータル「TodaysClipper」だ。すべての社員が情報収集スキルや意識にかかわらず、新聞・雑誌を通じて業務に関わる技術トレンド情報・競合情報などの周辺情報にオンラインでアクセスできる環境を整備した。

 「TodaysClipper」は、日経テレコンKnowledgePassportと日経BPビズボードを使って構築した社内情報ポータルで、主な機能は以下の通り。
社内情報ポータル

  • 富士フイルムや競合に関連する新聞記事・雑誌記事情報を事業ドメインごとに
    整理して提供
  • 自社が注目する記事の共有
  • 社内で関心の高い記事をランキング表示
  • 選択したカテゴリーの情報を
    毎日メール配信
  • 社員に必ず読んでほしい記事を
    "注目記事"として選択・配信

 
「昔は情報を集めて整理するときは記事を切り取ってスクラップブックに溜めていましたが、『TodaysClipper』の場合は、電子的なスクラップブックが自動で毎日できあがるイメージです。それにスクラップでは人の手作業に頼らざるを得ない記事の検索・取り出しも瞬時にできます。」(中山氏)

情報がインテリジェンスに変わるポイント

情報がインテリジェンスに変わるポイント
 「情報を戦略に変える活用プロセス」の次のステップである②情報を多面的に解釈・評価する部分も、徹底してIT技術を活用している。

テキストマイニング技術を使い、研究テーマに沿った記事情報を切り出して著作権をクリアした形でDBに蓄積、それをプロジェクトメンバーが事業・技術・競合等の視点で評価し、DBに評価情報、考察をインプット。

必要に応じて専門の調査担当者が特許等の別の情報を使って追加調査を行い、定期的な会議の場で協議するというスキームだ。単なる一次情報がインテリジェンスへ転化していくポイントと言える。

ひらめき与える俯瞰マップ

俯瞰マップ
 さらに、中山氏のチームでは戦略の切り口を見つけるための分析手法、可視化する各種ツールを活用しているが、そのひとつとして、
Tony Buzan氏が提唱した「MindMap」(英国ThinkBuzan社の商標)の思考・発想法に則って、技術・事業分野ごとに記事を時系列にまとめている。

 2011年1月 ○○、2月××、2012年4月 △△、◇◇といった形で、新聞や雑誌の記事を特定観点で整理していくと、他社の戦略の転換点や注目されている技術の動向、まだ未開の技術分野などが見えてくる。

実際のデータをここでお見せできないのが残念だが、情報をこのように俯瞰することで何かしらの気づきを与えてくれる興味深い手法だ。「百聞は一見にしかず。」是非ご自身で一度お試し頂きたい。

全社の情報力を上げる秘訣

 しかも、富士フイルムの情報活用・共有は、意識の高いR&D統括本部に留まらない。「TodaysClipper」は、「(富士フイルムのイントラネットの中で)一番利用されているコンテンツのひとつ」(中山氏)だそうだ。月間数万アクセスと、ちょっとした企業ホームページよりアクセス数が多いことからもその活用度合が窺える。

 全社的な情報活用が定着した秘訣は、「非常に大事な仕組みなので、入り口をイントラサイトのトップページ右上の一番目立つところ、皆が毎日使う勤怠システムの下に設置してもらったことと、プッシュ型で必要な情報をメール配信する仕組みを作ったこと、それからモバイルで移動中に社外でも見たいという要望に対応して、いつでもどこでも新聞記事が読めるようにしたこと」(中山氏)。

 今後は、iPhoneやiPadで見やすく表示したり、トレンドにすばやく対応できるように検索式の改良スピードを上げるなどしてさらに進化させていく予定だそうだ。


取材後記:情報を漏れなく・・・

 取材前に日経テレコンを使って取材先の情報を確認しているのだが、今回の取材中にとある富士フイルムの記事を見逃していたことが発覚。
 「小さい記事でしたからね。でも『TodaysClipper』で読んでいれば漏らさないですよ。営業会社でも必要ですね。」と中山氏から鋭いつっこみを頂いた。

 日経テレコンで「必要な情報は自分で十分取ってこられる」と自負していたが(もちろん完璧に検索すれば十分取ってこられるのだが)、システムが得意なところはシステムに任せた方が間違いないと感じながら先進研究所(開成)を後にした。

(取材日:2013年11月7日)

企業プロフィール

企業名富士フイルム株式会社
事業内容イメージングソリューション(カラーフィルム、デジタルカメラ、光学デバイス等)、インフォメーションソリューション(メディカルシステム機材、ライフサイエンス製品、フラットパネルディスプレイ材料等)の開発、製造、販売、サービス
代表者中嶋 成博
本社所在地東京都港区赤坂9-7-3
資本金403億63百万円(2013年3月31日現在)
従業員数連結33,851名・単体7,094名(2013年3月31日現在)
Webサイトhttp://fujifilm.jp/
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